充電インフラ

BASF上海工場が難燃TPU生産資格を取得 – EV充電部品の現地調達が加速

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充電インフラ: BASF上海工場が難燃TPU生産資格を取得 – EV充電部品の現地調達が加速

BASFがアジア太平洋向け難燃素材の供給体制を強化

ドイツの総合化学メーカーBASFは、中国・上海にある熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)工場で、同社ブランド「Elastollan(エラストラン)」の難燃(FR)グレードの生産資格を取得したと発表した。EV用充電ケーブルやコネクター部品など、高い安全性が求められる用途への供給が本格化する。

TPUは柔軟性と耐摩耗性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックの一種。EV充電(関連: BYDのフラッシュチャージ技術)ケーブルの被覆材やロボットアームの関節カバーなど、繰り返し屈曲しながらも燃えにくさが求められる部品に採用が広がっている。

Elastollanブランドの技術的特徴とFR規格

BASFのElastollanは、ポリエーテル系とポリエステル系の2タイプを展開するTPUブランドで、硬度や弾性率を幅広くカスタマイズできる点が強みだ。自動車、医療機器、スポーツ用品など多岐にわたる分野で採用実績がある。今回生産資格を取得したFRグレードは、このElastollanに難燃剤を配合し、UL94規格のV-0相当の燃焼試験をクリアする仕様となっている。

UL94はアメリカの安全認証機関ULが定めるプラスチック材料の燃焼性試験規格で、V-0は最も厳しい等級の一つだ。垂直に保持した試験片に炎を10秒間当て、消炎時間が10秒以内であることなどが求められる。EV充電ケーブルは通電時に発熱するうえ、屋外で使用されるケースも多いため、こうした厳格な難燃基準への適合が事実上の必須条件になりつつある。

ハロゲンフリーに続きFRグレードも現地生産へ

BASFは2023年、環境負荷の低いハロゲンフリー難燃(FHF)グレードのアジア太平洋地域での現地生産を開始していた。今回のFRグレード追加により、より厳しい燃焼試験基準をクリアする製品もアジア圏内で調達できるようになる。

従来、FRグレードのTPUは欧州からの輸入に頼るケースが多かった。上海工場での現地生産が始まれば、中国のEVメーカーや充電機器メーカーにとってはリードタイムの短縮とコスト低減の両面でメリットが大きい。BYDやNIOといった中国EV大手が急速に生産台数を伸ばすなか、部品素材のサプライチェーン現地化は業界全体の課題だった。輸送コストだけでなく、欧州工場の生産枠確保に数カ月を要するケースもあり、現地調達への切り替えは量産計画の柔軟性を高める意味でも大きい。

EV普及で高まる難燃素材の需要

EV充電インフラの拡大に伴い、充電ケーブルや充電スタンド筐体に使われる素材にも厳格な難燃基準が適用されるようになっている。中国は公共充電スタンドの設置数で世界首位を走っており、関連部材の需要は右肩上がりだ。

充電中の発熱や短絡リスクに備えた素材選定は、ユーザーの安全に直結する。急速充電器の出力が150kW、さらには350kW級へと引き上げられるなかで、ケーブル被覆材への熱的・機械的要求はこれまで以上に厳しくなっている。こうした背景から、単に「燃えにくい」だけでなく、柔軟性や耐候性を維持しつつ難燃性を確保できるTPU系素材への注目が高まっている。

日本市場への波及効果

日本国内でもこの動きは無関係ではない。経済産業省は2030年までに公共充電器を30万口に拡充する目標を掲げており、補助金制度の拡充を通じて設置ペースの加速を図っている。BYD日本法人は全国100拠点以上のディーラー網構築を目指しており、販売台数の増加に伴って充電インフラ側の部材需要も連動して膨らむ構図だ。

国内の充電器メーカーにとって、アジア圏で高品質な難燃TPUが安定調達できる体制が整うことは、部材コストの低減に直結する。これまで難燃TPUの調達先は欧州メーカーの本国工場が中心で、為替変動や海上輸送の遅延リスクを抱えていた。上海からの調達ルートが加われば、リードタイムは数週間単位で短縮できる可能性がある。

一方、国内素材メーカーの三井化学やクラレもTPU関連製品を展開しており、BASFの現地生産拡大は競合圧力として作用する面もある。地味なニュースではあるが、EVの「足回り」を支える素材産業のサプライチェーン再編として押さえておきたい動きだ。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

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