BYD Song Ultra EV発売 – 5分充電で320万円から
予想を大幅に下回る価格でデビュー
BYDが中国市場で新型電動SUV「Song Ultra EV」を正式発売した。3月26日のローンチ価格は15万1,900元(約320万円)から。事前に予想されていた22万元(約465万円)を大きく下回り、プレセール価格の15万5,000元すらも割り込んだ。攻めの価格設定だ。
ラインナップは4グレード構成で、最上位でも17万9,900元(約380万円)。3月6日の予約開始からわずか20日間で2万1,586台の予約が集まっており、同価格帯のXpeng G6が月間約8,000台ペースであることを考えると、出足の勢いは際立っている。
「5分で70%」を実現するフラッシュチャージ
Song Ultra EVの最大の武器は充電(関連: 中国の充電インフラ競争)速度。BYD(関連: BYDの業績と10万人削減)独自の「フラッシュチャージ」技術により、10%から70%までたった5分。97%まで充電しても9分で完了する。極寒の-30℃環境でも12分という数字を叩き出す。
搭載するのは次世代の「ブレードバッテリー2.0」。電池容量は68.4kWhと82.7kWhの2種類で、CLTC基準の航続距離はそれぞれ605kmと710km。購入者の約70%が10万元を追加して710km仕様を選んでいるという。充電の速さが航続距離への不安を打ち消し、大容量バッテリーを選びやすくしているようだ。
このフラッシュチャージを支えるのが、最大500kW対応の急速充電ステーション網だ。BYDは2025年末までに中国国内で4,000基以上の専用充電スタンドを設置しており、Song Ultra EVの発売に合わせて主要高速道路沿いへの増設を加速させている。自社で車両と充電インフラの両方を押さえる戦略は、テスラのスーパーチャージャー網と同じ発想といえる。
走りの質にも手を抜かない
パワートレインはリア搭載のシングルモーターで最高出力362馬力(270kW)。ボディサイズは全長4,850mm×全幅1,910mm×全高1,670mm、ホイールベース2,840mm。PHEVモデルのSong L DM-iよりひと回り大きい。
足回りにはBYDの知能サスペンション「DiSus-C」を採用。リアルタイムで減衰力を調整し、路面の凹凸を吸収する。実際のオーナーからは「期待以上の乗り心地」という声が上がっている。
LiDAR搭載のADASパッケージも用意
上位3グレードにはオプションで「God’s Eye B」ADASパッケージを設定。ルーフマウントのLiDARと27個のセンサーを組み合わせ、高速道路・市街地での高度な運転支援機能や自動駐車に対応する。購入者の45%がこのオプションを選択した。
車内は15.6インチのセンターディスプレイと10.25インチのメータークラスターに加え、26インチのヘッドアップディスプレイを搭載。表示系はミニマルだが情報量は十分で、God’s Eye Bの作動状況もリアルタイムで確認できる。
日本市場への示唆
BYDは日本でATTO 3、DOLPHIN、SEALを展開中。2025年にはSEALION 7とRACCOを投入し、現在は6車種体制で販売網の拡充を進めている。Song Ultra EVの日本導入は現時点で未発表だが、この価格帯と充電性能が上陸すれば市場のルールが変わりかねない。
日本で販売中のATTO 3が440万円〜、DOLPHINが363万円〜。仮にSong Ultra EVが日本に来れば、CEV補助金(最大85万円)適用後の実質価格は300万円を切る計算も成り立つ。400万円前後のSUVセグメントで既存のEVはもちろん、ガソリン車やハイブリッド車とも真正面からぶつかる。ただし、日本の急速充電規格はCHAdeMOが主流であり、BYDの500kWフラッシュチャージをそのまま活かせるかは別の問題として残る。
中国では競合としてXpeng G6、Leapmotor C11、テスラ Model Yなどが挙がる。BYD自社内でもSealion 06 EVとの比較が多いという。Song Ultra EVの戦略的な低価格が、中国EV市場の価格競争をどこまで押し下げるのか。その答えは、今後数カ月の販売データが示すことになる。