バッテリー技術

CATL、物流大手と提携 – 商用EV向け電池交換900拠点へ拡大計画

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バッテリー技術: CATL、物流大手と提携 – 商用EV向け電池交換900拠点へ拡大計画

中国の電池最大手CATLが、物流大手の申通快逓(STO Express)と戦略提携を締結した。物流トラックの電動化推進と、充電・電池交換(関連: 充電インフラ競争)インフラの整備を共同で進める。CnEVPostによると、CATLの本拠地・福建省寧徳市で調印式が行われた。

燃料コスト削減が最大の動機

幹線物流における燃料費の高騰は、宅配業界が長年抱える構造的な課題だ。STO Expressは中国の宅配大手で、1日あたり数千万件規模の荷物を処理する。今回の提携では、グリーン物流、車両の電動化、充電・電池交換ネットワークの構築、バッテリー(関連: バッテリー追跡プラットフォーム)のライフサイクル管理を柱としている。

CATLは自動車メーカーと協力し、幹線物流トラックのバッテリー容量・配置・総重量を最適化するカスタム開発を進めている。同社の発表によれば、上海〜寧波間の約400kmルートでは、電動大型トラックのエネルギーコストが従来の燃料車より1kmあたり0.8元(約17円)安い。燃料車の減価償却分を差し引いても、1kmあたり0.3〜0.5元のコスト削減が見込めるという。

電池交換ステーション「騏驥能源」を900拠点へ

航続距離への不安を解消し、エネルギー補給の効率を上げるため、CATLは充電・電池交換インフラの整備を加速させている。商用車向け電池交換ブランド「騏驥能源(Qiji Energy)」として、中国国内にすでに300カ所以上のステーションを展開済みだ。2026年末までに累計900拠点以上への拡大を計画している。3倍規模の増設だ。

騏驥能源の電池交換は、CATLが「チョコレートスワップ(巧克力換電)」と呼ぶ規格化されたブロック式バッテリーを採用している。車種やメーカーを問わず共通のバッテリーブロックを使えるよう設計されており、商用車の場合、交換作業は数分で完了する。従来の急速充電では1時間以上かかる大型トラックのバッテリーを、ドライバーの休憩時間内に交換できる。物流事業者にとって、車両の稼働時間を削らずに電動化できるかどうかは導入判断の分かれ目であり、この点が電池交換方式の訴求力になっている。

騏驥能源のステーション配置は、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、珠江デルタという中国の三大経済圏に集中している。STO Expressの新エネルギー大型トラックが走る主要ルートとも重なる。

なぜ物流会社と直接組むのか

今回の提携で注目したいのは、CATLが自動車メーカーを介さず物流会社と直接手を結んだ点だ。これまでCATLの主要顧客はテスラやBYDといった自動車OEMであり、電池メーカーとしてサプライチェーンの上流に位置していた。しかし電池交換サービスは、バッテリーの所有・管理・リサイクルまでを一貫して担うビジネスだ。OEMに電池を納入して終わりではなく、エンドユーザーの運用現場に入り込む必要がある。

物流会社との直接提携は、CATLがサプライヤーからエネルギーサービス事業者へと軸足を移しつつあることを端的に示している。バッテリーを売り切るのではなく、交換・充電・劣化管理を含む「エネルギーの継続利用」を商品にする転換だ。

商用車電池交換市場の競合

中国の商用車向け電池交換市場では、奥動新能源(Aulton)が先行プレーヤーとして知られる。Aultonは乗用車・商用車の両方で電池交換サービスを展開し、報道によると2025年末時点で約800カ所の拠点を運営しているとされる。CATLは世界最大の電池メーカーとしてのスケールメリットを持ち、バッテリーの製造から交換ステーションの運営、ライフサイクル管理まで垂直統合できる。電池の調達コストそのものを自社で制御できる点は、電池交換事業の収益性に直結する強みだ。

NIOが乗用車分野で先行した電池交換モデルとの違いも明確だ。NIOの電池交換はNIO車専用のクローズド規格だが、CATLのチョコレートスワップは複数メーカーの車両に対応するオープン規格を志向している。物流業界のように異なるメーカーのトラックが混在する現場では、特定メーカー縛りの仕組みは使いにくい。

CATLの動きはトラックだけにとどまらない。同社は4月2日、江西省宜春市の交通部門とも戦略提携を結び、160台以上の農村・郷鎮バスの電動化推進を発表した。CnEVPostの報道によると、宜春市では2016年7月からCATL製バッテリーを搭載した純電動都市間バスを導入しており、燃料コストを60%以上削減した実績があるという。

コスト削減効果の比較

用途 比較対象 削減幅 備考
幹線物流トラック ディーゼル車との1kmあたりコスト差 0.8元(約17円)削減 上海〜寧波間(約400km)での試算
幹線物流トラック 燃料車の減価償却を考慮した純削減 0.3〜0.5元/km CATL発表値
都市間バス(宜春市) 従来燃料バスとの燃料コスト比 60%以上削減 2016年7月導入以降の実績値(CnEVPost報道)

日本でも2024年問題以降、物流業界のコスト構造見直しが急務となっている。ただし、日本の高速道路SAやPAは敷地面積に限りがあり、大型トラック用の電池交換設備を併設するスペースの確保が難しい。道路運送車両法では車両のバッテリーを交換式にする場合の型式認証の扱いが明確でなく、制度面の整備も課題として残る。国内ではENEOSやいすゞが商用車向け電池交換の実証実験を進めており、日本型のモデル構築はこれからだ。

CATLが中国国内300拠点超で蓄積している運用データ――ステーション1カ所あたりの交換回数、バッテリー劣化率、稼働率など――は、同社が海外展開の可否を判断するうえでの材料になる。900拠点体制が実現すれば、そのデータ量はさらに厚みを増す。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

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