中国NEV販売3月は78.4万台 – 前年比21%減の背景を読む
78.4万台、前年比マイナス21%——中国乗用車市場情報連席会(乗聯会、CPCA)が発表した2026年3月の新エネルギー車(NEV)小売販売台数は、数字だけ見れば急ブレーキに映る。ただし、この数字をそのまま「中国EV市場の失速」と読むのは早計だ。
前年3月の「異常値」が生んだ落差
2025年3月の中国NEV小売台数は約99万台に達していた。この水準自体が通常のトレンドから大きく上振れた数字だった。背景にあるのは、2024年末に実施された購入補助金の段階的縮小だ。駆け込み需要が2024年第4四半期に集中した反動で、2025年初頭は一時的に販売が落ち込むとの予測もあったが、実際にはメーカー各社が独自の値引きキャンペーンで需要をつなぎ止め、2025年第1四半期は高水準を維持した。
つまり、2026年3月の「21%減」は、比較対象となる前年同月が異例の高水準だったことによるベースエフェクト(基数効果)の影響が大きい。78.4万台という絶対数は、2024年3月の約60万台と比べれば約30%増であり、成長軌道自体は崩れていない。NEV浸透率も2024年3月の約40%から2026年3月には推計50%前後まで上昇しており、市場の構造転換は着実に進んでいる。
補助金縮小と海外攻勢の加速
中国政府は2026年に入り、NEV購入補助金の対象をさらに絞り込んでいる。都市部での普及が一巡したBEV(純電動車)向けの直接補助は縮小傾向にあり、代わりに農村部でのNEV普及(「新エネルギー車下郷」政策)や商用車の電動化に予算を振り向ける方針が鮮明になった。消費者の価格感度は上がり、購入の意思決定に時間がかかるようになっている。BYDやGeely(吉利)といった大手は自社の値引き原資で対応できるが、中小メーカーには厳しい環境だ。
その分、海外市場での販売拡大に各社は力を注ぐ。BYDは2025年の海外販売が前年比60%超の伸びを記録し、2026年もタイ、ブラジル、ハンガリーなどでの現地生産を本格稼働させている。Leapmotor(零跑汽車)はStellantisとの提携を通じて欧州での販売網を広げ、Chery(奇瑞汽車)やGAC(広汽集団)もメキシコや東南アジアでの拠点整備を進める。国内での価格競争で利幅が圧迫される中、海外市場は相対的に高い収益性を確保できる。経営判断として合理的な流れだ。
BYD、国内鈍化でも日本投入ペースは維持
日本のBEV販売は2025年に約12万台と、新車市場全体の3.5%程度にとどまる。この小さなパイの中で、BYDはATTO 3に続きDOLPHIN、SEALを投入し、2025年にはRACCOも加わった。SEALION 7の導入も控える。
国内の月販78万台が「正常化」であって「崩壊」ではないからこそ、BYDは日本への投入ペースを落とす理由がない。むしろ国内の伸び鈍化は、日本を含むアジア太平洋市場の優先度を押し上げる。NIOやXpengは現時点で日本未進出だが、欧州展開で得た右ハンドル車の開発ノウハウは、将来の参入への布石になり得る。ただ、日本の消費者が中国EVに対して抱く心理的ハードルは依然高く、台数の急拡大よりもじわじわ浸透する展開が現実的だろう。
「減速」ではなく「成熟」のフェーズへ
中国のNEV市場は年間1,000万台規模に達した。月次の振れ幅が数十万台単位になること自体、市場が成熟段階に入った裏付けでもある。国内の成長ペースが鈍化する局面で、中国メーカーの海外展開はさらに勢いを増す。2026年後半にかけて、欧州の関税動向やASEAN各国の投資誘致策と絡み合いながら、中国EVの海外販売比率は一段と上昇する見通しだ。