バンクレンタカーがEVカーシェア「eemo」を承継 小田原発の再エネ×EV連携モデルは続くか
REXEV(関連: BYD Song Ultra EV)の直営事業をバンクレンタカーが引き継ぎ
D&Dホールディングス傘下のバンクレンタカーが、REXEVのEVカーシェアリングサービス「eemo(イーモ)」の直営事業を承継した。対象は神奈川県小田原市を中心とした県西部・西湘エリアの拠点だ。
eemoは単なるカーシェアではない。地域で発電した再生可能エネルギーをEVに充電し、移動手段として使いながらエネルギーの地産地消を実現するモデルだ。災害時には停電地域へEVを派遣し、非常用電源として活用する仕組みも備える。
バンクレンタカーはD&Dホールディングスのグループ企業として全国に拠点網を持ち、車両調達から整備・運用まで一貫した管理体制を構築してきた。この既存インフラを活かせる点が、今回の承継の背景にある。
「走る蓄電池」としてのEV活用が加速
EVを移動手段としてだけでなく、蓄電池として地域のエネルギーインフラに組み込む。eemoが先駆的に取り組んできたこの発想は、V2G(Vehicle to Grid)と呼ばれる技術に基づいている。
V2Gの仕組みはシンプルだ。太陽光や風力で発電した電力をEVのバッテリーに蓄え、電力需要のピーク時にはEVから系統へ電力を戻す。EVが「動く蓄電池」として電力網の調整弁になる。2025年度には経済産業省がV2G実証事業の予算を拡充しており、東京電力管内や関西電力管内でも複数の実証プロジェクトが動いている。
小田原エリアは、地元の再エネ電力事業者や太陽光発電事業者との連携が進んでおり、再エネの地産地消モデルとしては国内でも先行する地域だ。eemoはこの地域のエネルギー循環の一部として機能してきた。バンクレンタカーがサービス単体ではなく、この枠組みごと引き継いだ点は見逃せない。
レンタカー事業者がEVシェアを運営する意味
カーシェアとレンタカーは競合するようで、実は車両稼働率の最大化という点で補完関係にある。
短時間利用はカーシェア、長時間はレンタカーと使い分けることで、1台あたりの収益効率を上げられる。平日日中の稼働が低くなりがちなカーシェア車両を、週末や観光シーズンにはレンタカーとして回すといった柔軟な運用も考えられる。
EV特有の充電管理や蓄電池としての運用は、従来のレンタカー事業にはなかった領域だ。しかしeemoで培われた充電スケジュール管理やV2G対応のオペレーションをそのまま活用できるため、ゼロから立ち上げるより初期コストを大幅に抑えられる。事業承継という形をとった実務上の判断は理にかなっている。
日本のEVカーシェア市場の現在地
日本国内のEVカーシェアは、まだ黎明期にある。大手ではタイムズカーが一部拠点にEVを導入しているものの、全体に占める割合はごくわずかだ。オリックスカーシェアもEV車両の配備を始めているが、ガソリン車が主力という構図は変わっていない。
一方で、個人間カーシェアのAnycaではテスラやBYDなどEVオーナーの登録が増えており、「EVに乗ってみたい」という体験需要の受け皿になりつつある。マイクロモビリティのLUUPは電動キックボード中心だが、小型EVへの展開を視野に入れた動きも見せている。
EVカーシェアの普及を阻んできた要因のひとつは車両コストだが、BYD ATTO 3やDOLPHINといった400万円前後のモデルが国内市場に定着しつつあることで、事業者にとっての導入検討のハードルは下がってきている。ただし、カーシェア事業への本格的な大量導入事例はまだ限られており、充電インフラの整備状況と合わせて今後の動向を見る必要がある。
eemoのように地域密着型で再エネ連携まで踏み込んだサービスは国内では希少だ。バンクレンタカーの運営体制のもとで小田原モデルを他地域に横展開するには、受け入れ先の自治体や地域電力事業者との連携構築が不可欠になる。再現できる条件が揃う地域をどう見極め、どの順序で拡大するか。その戦略次第で、eemoが一地域の実験で終わるか、EVカーシェアの新しい形として定着するかが決まる。