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仰望U9 Xtreme – BYDの頂上戦略の射程NEW

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仰望U9 Xtreme – BYDの頂上戦略の射程

2,000万元(約4.2億円、1元≒21円換算)——。BYDの最上位サブブランド「仰望(ヤンワン)」の電動スーパーカー「U9 Xtreme」が、北京モーターショーで落札された価格だ。BYD品宣総経理の李雲飛氏が明かしたもので、同イベントで売れた車両の中で最高額となった。

低価格BEVのイメージが強いBYDが、なぜここまでのレンジに踏み込むのか。狙いははっきりしている。量と利益、そしてブランドの天井を同時に引き上げるための装置が仰望だ。

2,000万元という値札の意味

発表によれば、U9 Xtremeは生産台数30台の限定モデル(仰望側のアナウンスベース)。1,200Vプラットフォームに4基のモーターを積み、出力は2,977馬力(2,220kW)に達する。2025年9月には最高速度496.22km/hで量産車最速の称号を獲得し、その後ニュルブルクリンク北コースを6分59秒157で走破し、量産EV最速記録も更新した。

標準モデルの仰望U9は180万元(約3,800万円)から。Xtremeはその10倍以上の値札となる。30台限定という規模で「量産車」を名乗ることに議論の余地はあるが、BYDが扱った車両としては過去最高額だ。

仰望が担う天井引き上げと中国ハイエンドEV市場

BYDのブランドポートフォリオは整理されている。Dynasty・Oceanがメインストリーム、Denzaがプレミアム、Fang Cheng Baoがオフロード特化、そして仰望が頂点に座る。中国本土ではSeagullが6.98万元(約147万円)から始まり、仰望U9 Xtremeとの価格差は実に280倍を超える。仰望本体のSUV「U8」は2023年の発売以降、累計約1万台規模の販売を積み上げており、月販数百台ペースで動く中国製1,000万元級ハイエンドBEVとしては異例の存在感を示している。セダン「U9」は2024年から130〜180万元レンジでデリバリーが始まっている。

このレンジ拡張は単なる富裕層向けビジネスではない。仰望は四輪独立駆動「易四方」や車体姿勢制御「DiSus-X」——車両を踊らせ、跳躍させ、3輪走行を可能にする一連の制御技術——のショーケースであり、これらは量販車に順次降りてきている。Denza Z9GTには三電機制御の派生「易三方」が搭載され、漢の2024年改良型にはDiSus-Cが採用されるなど、ハイエンドの研究開発成果が量販レンジに還流する流れができつつある。

2,000万元という価格帯は、フェラーリSF90 XXやポルシェ918 Spyder後継が想定するレンジと重なる。中国国内のハイエンドBEVプレイヤーを整理すると以下のとおりだ。

ブランド/モデル 価格帯(公表ベース) 生産規模 現況
仰望 U9 Xtreme 2,000万元(約4.2億円) 限定30台 2026年北京で実販
仰望 U9(標準) 130〜180万元(約2,700〜3,800万円) 少量量産 2024年〜デリバリー
Nio EP9 120万ドル前後 限定6台 2016年発表の先行例
Xpeng ULTRA系 300万元台想定 未公表 計画・予告段階
HiPhi(Human Horizons) 80〜100万元 少量 2024年経営危機が表面化

仰望は量販ブランドBYDの後ろ盾と垂直統合体制によって、独立系ハイエンドEVと比べて持続性で優位に立つ。中国製でも1,000万元超で売れるという証明は、欧州プレミアムの牙城が技術力で脅かされ得るシグナルとして読まれ始めている。

BYD Auto Japanのラインナップと富裕層BEV市場

BYDの日本ラインナップはATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7、そして2025年秋に投入されたRACCOの5車種で、価格帯は300万円台から758万円まで。プレミアム領域には踏み込んでいない。仰望やDenzaの日本導入も現時点で公式には語られていない。

日本のBEV新車登録は年間6万〜9万台規模で、そのうち1,000万円超の輸入プレミアムBEVは年間数千台にとどまる。市場が小さい以上、仰望の日本導入が短期で動く可能性は低い。BYD Auto Japanは現在、量販モデルの販売網拡張に集中しており、正規ディーラー網の拡大が当面の優先課題だ。

仰望由来の技術が日本導入車にどこまで降りているかを見ると、現状は限定的だ。SEALやSEALION 7は8-in-1電動パワートレインやセル・ツー・ボディ(CTB)構造といった量販向けの世代別技術が中心で、易四方やDiSus-Xといった仰望固有の制御は搭載されていない。漢の本国モデルにDiSus-Cが採用された一方、日本仕様のSEALは標準的なフロント・ストラット/リア・マルチリンクで、姿勢制御の電子化は欧州プレミアム勢の中位グレード相当にとどまる。本国で仰望が技術ラボとして機能していても、日本で買える車にその恩恵が表れるのは1〜2世代先になる構図だ。

当面の物差しはより地味な数字になる。2027年までに首都圏・関西圏のディーラー拠点を現在比で倍増できるか、SEALION 7が月販500台ラインを定着させられるか、3年保証の運用で輸入車ユーザーの期待値を満たせるか——本国の頂点戦略を語る前に、量販レンジでこの3点を通過することが、ATTO 3やSEALを「安かろう」の枠から押し出すための前提条件となる。仰望ブランドの日本導入は、早くてもRACCO世代の販売網が成熟する2028年以降の検討課題と見るべきだろう。

出典

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BLADE NOTE編集部
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