BYD Denza、5分充電・航続800kmの旗艦EVで欧州市場に参入
航続800km、5分で10%から70%まで充電——BYDの高級サブブランド「Denza(騰勢)」が、いよいよ欧州市場に本格参入する。2026年4月8日、パリのオペラ座で発表されるDenza Z9 GTは、BYDが培ってきた技術力を凝縮した旗艦EVだ。
Denza Z9 GT——「世界最長航続EV」を掲げて欧州へ
Denza Z9 GTは全長5,195mm、ホイールベース3,125mmのシューティングブレーク型EVで、ポルシェ・パナメーラやタイカンに匹敵するサイズ感を持つ。BYDはこのモデルを「世界最長の純電動航続距離を持つ車両」と位置づけている。
中国のCLTC基準では最大1,036km、欧州のWLTP基準でもRWDモデルで約800km(497マイル)の航続距離を実現した。これを支えるのが、容量122kWhの第2世代Blade Batteryだ。BYDが得意とするLFP(リン酸鉄リチウム)ベースの刀片型セルを進化させたもので、安全性と長寿命を維持しながらエネルギー密度を引き上げた。
パワートレインは後輪駆動の単モーター仕様(370kW/496馬力)と、3モーター仕様の2種類。3モーター版は合計960PS超を発揮し、0-100km/h加速は3秒未満。性能面でもテスラ Model SやメルセデスEQSと真正面から競合する。
「5分充電」を実現するFlash Charging技術
Z9 GT最大の訴求ポイントは、BYD独自のFlash Charging技術だ。最大1,500kWの充電出力に対応し、10%から70%までわずか5分、10%から97%まで9分で充電できる。マイナス30℃の極寒環境でも20%から97%まで12分と、低温劣化を大幅に抑えた。
BYDはこの性能を「Ready in 5, Full in 9, Cold Add 3(5分で準備、9分で満充電、寒冷地は+3分)」というキャッチフレーズで展開する。すでに中国国内には数千基のFlash Charging ステーションを設置済みで、2026年中に欧州でもインフラ展開を開始する計画だ。BYD執行副社長のステラ・リー氏は「欧州を皮切りにグローバル展開を進める」と明言している。
Z9 GTと競合EVのスペック比較
| 項目 | Denza Z9 GT | テスラ Model S | メルセデス EQS |
|---|---|---|---|
| 航続距離(WLTP) | 約800km | 約634km | 約770km |
| 10→70%充電時間 | 約5分(Flash Charging) | 約15分(V3 SC) | 約20分(200kW DC) |
| 最高出力(上位仕様) | 960PS超(3モーター) | 1,020PS(Plaid) | 658PS(AMG) |
| 0-100km/h | 3秒未満 | 2.1秒 | 3.4秒 |
| 中国参考価格 | 約590万円〜 | 約1,100万円〜 | 約1,400万円〜 |
※価格は1元≒22円、1ドル≒150円での概算。各国仕様・為替により変動する
Denza N9にもFlash Charging拡大——高級SUV市場を狙い撃ち
Flash Charging技術の展開はZ9 GTだけにとどまらない。CnEVPostの報道によると、DenzaはフラッグシップSUV「N9」のFlash Charging対応版も中国で予約販売を開始した。予約価格は45万〜50万元(約990万〜1,100万円相当)で、通常版N9の38.98万〜44.98万元から大幅に引き上げられている。ただし、中国市場では正式発売時に予約価格より下がるのが通例だ。
N9 Flash Charging版は第2世代Blade Batteryを標準搭載し、PHEV(プラグインハイブリッド)ながらCLTC基準のEV航続距離が420kmに達する。通常版N9の230kmから大幅な向上だ。全長5,258mm、全幅2,030mmの大型SUVボディに、2.0Tプラグインハイブリッド専用エンジンと3基の電動モーターを組み合わせ、合計最大出力680kW、0-100km/h加速3.9秒を実現する。
BYDの先進運転支援システム「God’s Eye 5.0」や、独立後輪2モーターステアリングによる「コンパス・ターン」「15度カニ走行モード」など、技術的な装備も充実させた。
ブランド戦略と日本市場への波及
プロモーションにも力を入れている。BYDはダニエル・クレイグ——ジェームズ・ボンド俳優——をDenza Z9 GTのアンバサダーに起用した。パリのオペラ座での発表会に加え、車内にはドルビーアトモス対応のイマーシブオーディオを搭載し、「オペラハウス・エンターテインメント体験」を謳う。Z9 GTの中国価格は26.98万元(約590万円相当)からと、テスラ Model Sの半額近い水準だ。欧州価格は未発表だが、この価格差がそのまま反映されれば相当なインパクトとなる。
BYDの量販モデルはすでに日本市場でATTO 3やDOLPHINなどを展開し、2025年の販売台数は約6,000台に達する見込みだ。国内のBYD正規ディーラーは2025年末時点で約100店舗まで拡大しており、販売網の基盤は整いつつある。一方、Denzaブランドの日本上陸については現時点で公式発表はない。仮に日本展開となった場合、Flash Chargingが求める1,500kW級の充電出力は、国内主流のCHAdeMO規格(最大400kW級が整備中)では対応できず、充電規格の問題が大きなハードルとなる。BYDが欧州で独自の充電網をどこまで構築できるかが、日本を含む他市場への展開スケジュールを左右する。