BYD

BYD Great Tang – 航続950kmを支える技術と唐シリーズからの飛躍

6分で読める
BYD: BYD Great Tang – 航続950kmを支える技術と唐シリーズからの飛躍

航続距離950km、メガワット充電対応、後輪操舵——BYDのフラッグシップSUV「Great Tang(大唐)」が、5月に中国で正式発売される。従来の唐(Tang)シリーズから全長で約400mm、ホイールベースで約350mm拡大。もはや別モデルと呼べるほどの進化を遂げた1台だ。その中身を、技術面を軸に見ていく。

第2世代Blade Batteryと130kWh超の大容量

Great Tangの航続950km(CLTC)を実現しているのは、第2世代のBlade Batteryだ。BYDが独自開発したLFP(リン酸鉄リチウム)セルを刀片状に配置するCTP構造は初代から継承しつつ、容量は130.15kWhまで拡大された。現行ATTO 3の58.56kWhと比較すると2倍以上の搭載量になる。

LFPはNMC(三元系)と比べてエネルギー密度で劣るとされてきたが、BYDはセルの大型化とパック効率の改善で弱点を補っている。加えて、第2世代ではメガワット級の急速充電にも対応した。800Vアーキテクチャの採用により、高出力充電器を使えば充電時間を大幅に短縮できる。フルサイズSUVで950kmという数字は、BEVクロスオーバー最長クラスに入る。

DiSus-Aエアサスと後輪操舵——巨体を操る足回り

全長5,302mm、ホイールベース3,130mmという巨体を取り回すために、Great TangにはBYD独自のDiSus-Aサスペンションが奢られた。デュアルチャンバー式エアスプリングを採用し、車高や減衰力を走行状況に応じて制御する。

後輪操舵も搭載された。最小回転半径は5.2m。これはMINI Hatch(5.4m)より小さい。全長5.3mの7人乗りSUVが、コンパクトカー並みの小回りで都市部を走れるというのは、実用面で大きなアドバンテージになる。唐シリーズでは初の採用だ。

BEV・DM-i・DM-pの3系統4仕様

Great Tangはパワートレインを3系統・計4仕様で用意する。BEVは後輪駆動と四輪駆動の2仕様、PHEVは燃費重視のDM-iと走行性能重視のDM-pだ。

パワートレイン BEV(後輪駆動) BEV(四輪駆動) DM-i DM-p
最高出力 300kW(402hp) 585kW(784hp) ICE 115kW + モーター200kW ICE 115kW + モーター×2 計400kW
航続距離(CLTC) 950km 850km 342km(EV走行) 未公表
0-100km/h 未公表 3.9秒 未公表 未公表
バッテリー容量 130.15kWh 66.48kWh

四輪駆動BEV仕様は585kW(784hp)、0-100km/h加速3.9秒。2トン超のフルサイズSUVとしては圧倒的な動力性能だ。

装備・価格と競合のポジショニング

Great Tangは2025年上海モーターショーで公開された「Dynasty-D」コンセプトの量産版にあたる。BYDの「王朝(Dynasty)」ネットワークで販売されるフラッグシップだ。車内には3枚のセンターコンソールスクリーン、2列目の折りたたみテーブル、天井モニター、車載冷蔵庫、27スピーカーのオーディオシステムを装備。4席にゼログラビティ機能を備える。BYD Dynasty販売部門のゼネラルマネージャー・陸天氏は自身のWeiboアカウントでの投稿で、4月にプレセール開始、5月に正式発売と明かしている。

価格は未発表だが、当初は40万元(約580万円)以上の市場セグメントを狙うと報じられていた。一方で、同じBYDグループのDenza N8LやDenza N9との食い合いを避けるため、30万元(約436万円)以下になるとの観測もある。BYDは2025年に仰望U8(109.8万元)でウルトラハイエンド市場に参入し、その下にDenzaブランドを展開してきた。Great Tangは王朝ネットワークの最上位モデルとして、Denzaとのすみ分けが課題になる。直接のライバルと目されるGeely Galaxy M9は18.38万〜24.88万元で、2025年1〜2月に中国で1万1,635台を販売。3列シートのフルサイズBEV SUVという市場は中国で急速に立ち上がりつつあり、Great Tangの価格設定が競争の方向を左右する。

第2世代Blade Batteryは日本向けモデルに載るか

BYDは現在、日本でATTO 3・DOLPHIN・SEAL・SEALION 7の4車種を展開している。いずれもCセグメント〜Dセグメントの価格帯で、フルサイズSUVは含まれていない。Great Tangのような大型モデルが日本に導入されるかは不透明だ。右ハンドル仕様の有無も現時点では明らかになっていない。

ただし、仮に30万元台で発売されれば日本円で約436万〜580万円。トヨタ・アルファード(540万円〜)やレクサスLM(2,000万円〜)が支配する日本の大型ミニバン・SUV市場に対し、27スピーカーや車載冷蔵庫といった装備を標準搭載しながらこの価格帯に収まるなら、コストパフォーマンスでは際立つ。もっとも、LFPバッテリーは低温環境で容量が低下しやすい特性がある。北海道や東北など寒冷地での実用航続距離がCLTC値からどの程度落ちるかは、日本市場での評価を左右するポイントになる。

Great Tangそのものの日本投入よりも現実的なのは、ここに搭載された第2世代Blade BatteryやDiSus-Aサスペンションの技術移転だ。BYD Auto Japanは2025年末までに日本で100店舗体制を目指しており、2026年以降に予想されるATTO 3やSEALION 7のモデルチェンジで第2世代Blade Batteryが採用される可能性は十分にある。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

BYD・中国EVの最新ニュースを日本語で配信。海外の1次ソースをもとに、日本の読者に向けた独自記事を毎日更新しています。