BYD、MSCI ESG格付け「AA」取得 – 法人フリートへの影響を読む
MSCI ESG格付け「AA」——。この評価が、日本の法人車両市場におけるBYDの立ち位置を変える可能性がある。
BYDは2026年3月25日、2025年版サステナビリティ報告書を公開した。報告書の中で同社は、新たなESGフレームワーク「DREAMS」の導入、MSCI ESG格付け「AA」の取得、S&P ESGスコア60への上昇を発表している。数字だけ見れば「また企業のESGアピールか」と思うかもしれない。だが、法人フリートやリース会社の調達担当者にとって、この格付けは実務上の意味を持つ。
MSCI「AA」が法人調達に与えるインパクト
近年、日本の大手企業はサプライチェーン全体のESGスコアを管理対象に含める傾向を強めている。社用車・営業車両の調達も例外ではない。リース会社が車両メーカーを選定する際、ESG格付けは与信審査やポートフォリオ構成の判断材料になりつつある。
MSCI ESG格付けは「AAA」から「CCC」までの7段階で評価される。「AA」は上から2番目のランクだ。参考までに、トヨタ自動車のMSCI ESG格付けは「A」、テスラは「BBB」とされており、BYDの「AA」は自動車セクターの中でも上位に位置する。この評価により、法人向けリースの入札条件をクリアしやすくなる場面は増える。実際、ESG調達基準を導入している日本企業では、取引先のMSCI格付けを参照するケースが報告されている。
「DREAMS」フレームワークと脱炭素の数値
BYDが導入した「DREAMS」は、Decarbonization(脱炭素)、Revolution(変革)、Equity(公平性)、Alliance(協働)、Moral Integrity(誠実)、Shared Value(価値共有)の6つの柱で構成される。
脱炭素では具体的な数値が出ている。2025年のNEV販売台数は460万台に達し、年間約4,660万トンのCO₂排出削減に貢献した。約7億7,660万本の植樹に相当する計算だという。2045年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目標に掲げる。
製造面では72.9億kWhのクリーン電力を活用し、3つの産業パークが中国の国家級「ゼロカーボン工業団地」に選出された。蓄電システムの累計出荷量は135GWhを超えた。こうした環境対応の実績が、MSCI「AA」評価の裏付けとなっている。R&D投資額は634億人民元(約1兆3,000億円相当)、累計特許出願数は71,094件。過去3年間で19車種以上が各国NCAPs最高評価の5つ星を獲得しており、日本市場で販売中のATTO 3やDOLPHIN、SEALに搭載されるBlade Batteryやe-Platform 3.0の安全実績は、フリート導入時のリスク評価でもプラスに働く。
リース会社が注目する「残価」とESGの関係
法人リースにおいて車両選定のカギを握るのは残価設定だ。
ESG格付けが高いメーカーの車両は、中古市場でも「環境対応車」としてのブランド価値を維持しやすい——そうした見方がリース業界内で広がっている。BYDのMSCI「AA」取得は、残価予測にポジティブな材料を提供する。日系メーカーの多くがMSCI格付けで「A」以下にとどまる中、BYDの「AA」は差別化要因になり得る。
加えて、BYD Auto Japanは2026年時点で国内約100店舗の販売網を構築済みだ。法人契約に必要なアフターサービス体制が整ってきたことも、フリート採用のハードルを下げている。2025年の国内販売台数は約6,000台を見込み、RACCOの投入で営業車両としての選択肢も広がった。
もちろん、ESG格付けだけで法人がBYDを選ぶわけではない。TCO(総保有コスト)、充電インフラの整備状況、ドライバーの受容性など、判断要素は多岐にわたる。ただ、調達プロセスの「足切りライン」をクリアできるかどうかという点で、MSCI「AA」は確実に効いてくる。
BYDの2025年版サステナビリティ報告書の全文は英語版が正式言語として公開されている。
出典
- BYD、2025年版サステナビリティ報告書を公開(PR TIMES)
- MSCI ESG Ratings(MSCI公式)