BYD、2026年第1四半期のNEV販売70万台突破 – 年間目標へ順調な滑り出し
70万463台——BYDが2026年1〜3月期の新エネルギー車(NEV)販売台数を公表した。四半期ベースで70万台を超えたのは同社として初めてとみられ、年間販売のペースとしても過去最高水準にある。2025年Q1の実績は約52万台だったため、前年同期比で約35%の増加となる。
四半期70万台の内訳と前年比
月別にみると、2026年1月は春節の影響もあり約20万台前後、2月が約22万台、3月が約28万台と、月を追うごとに販売が加速した。3月単月の28万台は、BYDの月間販売としても最高水準に近い数字だ。
2025年通期でBYDのNEV販売は約425万台だった。今回のQ1実績を4倍すると年間約280万台ペースだが、BYDの販売は例年下半期に偏る。2025年も上半期と下半期の比率はおよそ4:6だった。同じ比率を当てはめると、2026年通期では500万台前後に届く計算になる。
BYDは2026年の海外販売目標を150万台に設定しており、国内と海外を同時に拡大する構えだ。Q1の70万台のうち海外分の内訳は未公表だが、2025年通期の海外販売が約40万台だったことを踏まえると、Q1だけで15万〜18万台規模に達している可能性がある。東南アジアではタイ工場が2024年から稼働し、ブラジルではバイーア州の工場建設が進む。欧州ではハンガリー工場の建設が2025年に始まり、現地生産によるコスト削減と関税回避を狙う。
競合各社のQ1実績との比較
中国NEV市場で2番手グループに位置する吉利汽車(Geely)は、傘下のZeekrやGalaxyブランドを含めたNEV販売がQ1で約18万台だった。テスラの中国販売はQ1で約13万〜15万台と推計され、2025年同期の約17万台から減少している。Model Yのモデルチェンジ効果が一巡し、BYDの低価格モデルに顧客を奪われている構図だ。
NIOはQ1で約5万台、XpengはMONA M03の好調もあり約7万台を販売した。いずれも成長基調にあるが、BYDの70万台とは1桁違う。この差を生んでいるのはラインナップの幅だ。BYDはエントリーモデルの海鷗(Seagull、約7万元〜)からファミリー向けの宋PLUS(約15万元〜)、高級セダンの漢(Han、約25万元〜)まで、価格帯を幅広くカバーしている。低価格帯で台数を稼ぎつつ、中〜高価格帯で利益率を確保するモデルミックスが強みとなっている。
Blade Batteryの量産効果とコスト構造
BYDの販売拡大を支える要因として、自社開発のBlade Battery(リン酸鉄リチウムイオン電池)の量産効果を無視できない。BYDは車載電池の世界シェアでCATLに次ぐ2位につけており、電池の内製化によって原材料価格の変動リスクを抑えている。2025年後半からはリン酸鉄リチウムの原材料コストが下落傾向にあり、BYDの粗利率改善に寄与した。
さらに、BYDは半導体(IGBT)も自社グループで生産しており、サプライチェーンの垂直統合度が高い。販売台数が増えるほど部品あたりのコストが下がり、それが価格競争力の維持につながるサイクルが回っている。
日本では月間数百台、量産コスト減の恩恵はいつ届くか
日本市場では、BYDはATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALIONの4車種を展開中で、2026年中にコンパクトカーのRACCOを追加投入する計画だ。BYD Auto Japanのディーラー数は2025年末時点で全国約60拠点まで拡大したが、トヨタの約5,000拠点と比べると圧倒的に少ない。
日本でのBYD販売台数は月間300〜500台程度で推移しており、中国本土の勢いとは大きな開きがある。グローバルでの70万台/四半期という規模は量産コストの低減に直結するが、日本向け車両は右ハンドル仕様の専用ラインで生産されるため、コスト低減の恩恵が価格に反映されるまでにはタイムラグがある。RACCOが200万円台後半で投入されれば、日本の軽自動車・コンパクトカー層への訴求力が一段上がる可能性はある。
直近の課題は販売網よりも認知度だ。BYD Auto Japanは2026年に入ってからテレビCMの放映を開始したが、「BYDとは何か」を知らない消費者がまだ多い。中国での圧倒的な販売実績が日本市場での信頼に変わるまでには、相応の時間を要する。