バッテリー技術

CATLバッテリー交換が NIO超えへ – GAC Aion RT Super投入の狙い

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バッテリー技術: CATLバッテリー交換が NIO超えへ – GAC Aion RT Super投入の狙い

車体価格8万8,800元(約13,000ドル)——電池を「持たない」選択肢が、中国EV市場で急速に現実味を帯びてきた。GAC Aion(広汽埃安)が新型セダン「RT Super」を発売し、CATLのバッテリー交換プラットフォーム「CATL Choco-SEB」に本格参入した。これまでNIOの専売特許とみなされてきた交換式EVが、サードパーティ方式で他メーカーへ広がり始めている。

RT Superの概要 – 電池レンタル前提の価格設計

RT Superは全長4,865mm×全幅1,875mm×全高1,520mmのミッドサイズセダンで、ホイールベースは2,775mm。駆動系はシングルモーター(最高出力150kW)で、0-100km/h加速は7.5秒。CATL製54kWhバッテリーを搭載し、航続距離は505kmとされる。

最大の特徴は価格体系にある。8万8,800元のエントリー価格はバッテリーレンタル(月額制)を前提としたもので、NIOのように「電池込みの一括購入モデル」は用意されていない。車体と電池の所有権を完全に分離することで、初期購入のハードルを下げる戦略だ。

99秒交換とCATL Chocoネットワーク

バッテリー交換はCATLのChocoスワップステーションで行い、所要時間はわずか99秒。交換だけでなく急速充電にも対応しており、30%→80%まで26分で充電できる。

以下にRT SuperとNIO車両の主要スペックを比較する。

項目 GAC Aion RT Super(CATL方式) NIO(自社BaaS方式)
バッテリー交換時間 99秒 約3分
ステーション数(2026年4月時点) 拡大中(年内3,000カ所目標) 2,700カ所以上
ネットワーク方式 オープン(複数OEM共用) クローズド(自社車両専用)
電池込み購入オプション なし(完全車電分離) あり(BaaS or 一括購入を選択可)
インフラ投資の負担 CATL+フランチャイズ NIO自社負担

車内にはADiGO 6.0スマートコックピットを搭載し、HuaweiのHiCar 4.0によるスマートフォン連携機能も統合。購入者向けには生涯保証と生涯データ通信無料の特典も付く。

CATLの標準化戦略 – 3,000→30,000ステーションの野望

RT Super単体より重要なのは、CATLが仕掛ける「バッテリー交換のプラットフォーム化」だ。NIOは自社車両専用のクローズドなスワップネットワークを展開しているが、CATLのChoco-SEBは複数の自動車メーカーに開放するオープン方式を採る。

中国のバッテリー交換市場にはすでにAulton(奥動新能源)が約4,000カ所のステーションを運営しており、2020年代前半から政府の「車電分離」推進政策の恩恵を受けてきた。ただしAultonはタクシー・商用車向けが中心で、乗用車市場での存在感は限定的だった。世界シェア約37%を握る電池最大手CATLがこのタイミングで参入した背景には、2024年後半から加速した車電分離の制度整備と、乗用車セグメントでのオープン規格が実用段階に入ったことがある。

CATLは2026年末までにChocoスワップステーションを3,000カ所以上に拡大する計画で、長期的には全国3万カ所の設置を目標に掲げる。フランチャイズモデルも導入し、商業パートナーへの開放を進める。GAC Aionに続き、BAICのArcfoxもCATLの交換ソリューションを採用したモデルを近く投入すると報じられている。

「車体+電池分離」モデルの経済合理性

NIOが先行したBaaS(Battery as a Service)モデルは、ユーザーにとって初期費用の低減、バッテリー劣化リスクの回避、将来の大容量電池へのアップグレードといったメリットがある。一方で、NIO方式はステーション建設・運営コストを自社で負担する必要があり、収益化までの道のりが長い。

CATLのアプローチはこの構造的な弱点を突く。共通規格のステーションを複数OEMが相乗りすれば、1ステーションあたりの稼働率は上がり、自動車メーカー側もインフラ投資を自前で抱えずに済む。

RT Superが電池込み購入オプションを一切設けなかった点は象徴的だ。完全な車電分離を前提とすることで、車体の型式認証や保険設計もシンプルになる。日本では急速充電器の整備が進む一方でバッテリー交換方式の議論はほぼ手つかずだが、BYDをはじめ中国メーカーの日本進出が加速するなか、CATLのオープン規格が将来的に日本市場へ波及する可能性はゼロではない。充電待ち時間が課題とされる日本のEVインフラにとって、99秒で完了するスワップ方式は一つの解になり得る。

CATLのオープンプラットフォームが軌道に乗れば、バッテリー交換は特定メーカーの差別化要素ではなく、EVのインフラそのものになる。NIOが切り拓いた市場を、CATLが業界標準として塗り替えようとしている。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

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