CATL電池交換が3000拠点へ – BYD超急速充電との路線争いが本格化
99秒でバッテリーを丸ごと入れ替えるか、5分で数百km分を充電するか——中国EV市場で、エネルギー補給の「正解」をめぐる競争が加速している。
CATLが広州で交換ネットワーク拡大、タクシーから攻める
車載電池世界最大手のCATL(寧徳時代)は4月9日、広州公共交通グループと戦略的協力枠組み協定を締結したと発表した。広州市内でタクシー向けバッテリー交換ネットワークを共同で構築する計画だ。両社はCATL本社のある福建省寧徳市で調印を行い、電池供給・メンテナンス、リサイクル、交換ステーション運営で協業を進める。
両社の協力関係は今回が初めてではない。すでに6カ所の交換ステーションを共同建設した実績がある。2025年以降、CATLは広州公共交通グループの電動路線バス1,500台に駆動システムを提供しており、そのうち424台は水素燃料電池バスだ。今回の合意ではさらに電動船舶、V2G(Vehicle-to-Grid)、低高度経済(ドローン物流等)といった新領域への展開も視野に入れている。
「2030年に充電・交換・自宅充電が各3分の1」——CATLの強気シナリオ
CATLの曽毓群(Robin Zeng)CEOは、2030年までにEVオーナーのエネルギー補給手段がバッテリー交換・自宅充電・公共充電でそれぞれ3分の1ずつになるとの見通しを公言してきた。同社は2025年12月に江西省南昌で乗用車向け交換ステーション1,000カ所目を達成。2026年は累計3,000カ所超を目指す。長期的には3万カ所という野心的な数字を掲げる。
商用車分野でも攻勢は続く。CATL傘下の騏驥エナジーはSTO Express(申通快逓)とのトラック電動化提携を足がかりに、2026年中に累計900カ所の商用車向け交換ステーション建設を計画している。
Aion RT Superが示す「交換式」の具体像
CATLの交換技術が実際の量産車でどう機能するか。その回答の一つが、GAC Aion(広汽埃安)が4月8日に発売したAion RT Superだ。CATLの「チョコレートスワップ」電池を搭載し、バッテリー交換にかかる時間はわずか99秒。車両本体の電池レンタル購入価格は88,800元(約12,900ドル)、月額サブスクリプション料は399元(約58ドル)に設定された。
スペックを見ると、54kWhのCATL製電池で航続505km、30%→80%の急速充電は26分。モーター出力150kW(201馬力)、0-100km/h加速7.5秒と、日常使いのセダンとしては十分な性能を備える。車体サイズは全長4,865mm×全幅1,875mm×全高1,520mmで、Dセグメントに近い大きさだ。
注目すべき価格構造は、電池を「所有しない」ことで車両価格を大幅に下げている点。電池の保証はCATLが直接担い、車両側の三電システム(電池除く)はメーカーが初回オーナーに限り永久保証する(年間走行3万km以内)。
交換式 vs 超急速充電——2つの路線を比較する
一方、BYDは交換式とは異なるアプローチを取る。同社が推進するのは800Vアーキテクチャによる超急速充電だ。第2世代ブレードバッテリーと組み合わせた最新モデルでは、5分間の充電で200km以上の航続距離を追加できるとされる。充電器側のインフラ整備は必要だが、車両側に交換機構を組み込む必要がなく、設計の自由度が高い。
| 項目 | CATL交換式 | BYD超急速充電 |
|---|---|---|
| 補給時間 | 約99秒(交換) | 約5分で200km分 |
| インフラコスト | 交換ステーション建設が必要 | 高出力充電器の設置が必要 |
| 車両設計 | 標準化された電池パック必須 | 電池形状の制約が少ない |
| ビジネスモデル | BaaS(月額制リース)で車両価格低減 | 車両一括購入が主流 |
| 展開規模(2026年目標) | 3,000カ所超(乗用車) | 充電ネットワーク拡大中 |
CATLの交換式は、NIOが先行した方式を電池メーカー主導で水平展開する戦略だ。NIOは自社車両専用の交換ステーションを2,700カ所以上運用しているが、CATLは複数の自動車メーカーに「チョコレートスワップ」規格の電池を供給し、メーカーを跨いだ交換網を構築しようとしている。タクシーや商用車など、稼働率が高く停車時間を最小化したい用途から攻めるのは合理的だ。
BYDの超急速充電路線は、電池パックの標準化が不要な分、車種ごとの最適化がしやすい。ただし「5分で満タン」にはまだ届かず、ガソリン車並みの利便性という点ではCATLの99秒交換に分がある。
日本の充電インフラ議論への視点
日本ではCHAdeMO規格の急速充電器が約1万基設置されているが、出力50kW以下が大半で、800V級の超高出力充電には対応していない。バッテリー交換式に至っては、国内で本格導入を検討する動きはほぼ見られない。中国で2つの路線が実地で大規模検証される2026年のデータは、日本の次世代充電インフラを議論するうえで重要な参考材料になる。
CATLは2026年中に140都市以上で3,000カ所超の交換ステーション展開を計画し、将来的にはフランチャイズパートナーへの開放も予定している。交換式がタクシーや商用車で実績を積めば、乗用車への波及は時間の問題かもしれない。超急速充電の進化とどちらが主流になるのか、答えが出るのはもう少し先だ。