バッテリー技術

CATL、紫金鉱業の創業者を顧問に招聘 – 鉱山資源の内製化を加速

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バッテリー技術: CATL、紫金鉱業の創業者を顧問に招聘 – 鉱山資源の内製化を加速

世界最大のEVバッテリーメーカーが、鉱山業界の重鎮を迎え入れた。中国CATLが紫金鉱業(Zijin Mining)の創業者・陳景河(チェン・ジンホー)氏を鉱山事業のシニアアドバイザーに起用したことが、CnEVPostの報道で明らかになった。

「鉱山王」陳景河氏の起用とその狙い

陳景河氏は地質学者出身の経営者で、69歳。30年以上にわたり紫金鉱業を率い、中国の小規模な金鉱山を時価総額1,200億ドル(約18兆円)超の世界有数の総合鉱山企業へと成長させた人物だ。紫金鉱業は現在、金・銅・リチウム・ニッケルなど幅広い鉱種を手がけ、コンゴ民主共和国のカモア・カクラ銅鉱山やアルゼンチンの3Qリチウムプロジェクトなど、世界各地に大規模な鉱山資産を保有している。2025年1月1日付で紫金鉱業の会長職を正式に退任した陳氏は、「創業者主導の経営から、近代的な企業統治システムへ移行すべきだ」と退任の理由を語った。2月には香港上場の万国黄金集団(Wanguo Gold Group)のチーフアドバイザーにも就任しており、引退後も鉱業界での影響力を維持している。

CATLがこのタイミングで鉱山の専門家を招く理由は明確だ。バッテリー製造に不可欠なリチウム、ニッケル、コバルト、リン——これら上流資源の安定確保が、バッテリーメーカーの競争力を左右する局面に入っている。陳氏がもつ鉱山開発・運営のノウハウとグローバルな鉱山ネットワークは、CATLの資源戦略に直接的な価値をもたらす。

業界全体で加速する資源囲い込み競争

CATLはここ数年、サプライチェーンの垂直統合を急ピッチで進めてきた。江西省宜春市では大規模なリチウム鉱山の開発権を取得し、国内調達基盤を強化。海外ではボリビア政府とリチウム資源の開発契約を結び、インドネシアではニッケル製錬事業に出資するなど、資源国との関係構築を加速させている。

ただし、上流資源の囲い込みに動いているのはCATLだけではない。BYDもアフリカのリチウム鉱区で権益確保を進めており、チリでは塩湖からのリチウム抽出プロジェクトに参画している。韓国LGエナジーソリューションはオーストラリアの鉱山会社と長期供給契約を締結し、サムスンSDIもカナダのリチウム開発企業への出資を通じて調達ルートの多角化を図る。バッテリーメーカー各社が「セルの性能競争」から「原料の確保競争」へと戦線を拡大している構図だ。

この文脈で見ると、陳氏の起用はCATLの既存プロジェクトを加速させるだけでなく、紫金鉱業が築いた鉱山ネットワークを通じた新規案件の開拓にも道を開く。競合が資源確保に走るなかで、鉱山業界に最も太いパイプを持つ人物を味方につけたことは、CATLの先行者優位をさらに強固にする一手といえる。

資源内製化がバッテリー価格構造を変える

韓国の調査会社SNEリサーチが4月7日に発表した最新データによると、CATLの2025年1〜2月のグローバルEVバッテリー市場シェアは42.1%で圧倒的な首位に立つ。この規模のメーカーが上流資源の支配力を強めれば、業界全体の価格構造に影響が及ぶ。リチウムやニッケルの調達を内製化できれば、原材料コストの変動を吸収し、安定した価格でバッテリーを供給できるためだ。日本の自動車メーカーでもCATL製バッテリーを採用するケースが増えており、CATLの調達コスト構造は日本で販売されるEVの価格にも間接的に影響する。

これに対し、日本は国としての資源確保戦略で対抗する構えだ。住友金属鉱山はフィリピンやインドネシアでニッケル精錬事業を長年手がけ、バッテリー向け高純度ニッケルの安定供給体制を築いている。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)はオーストラリアやアルゼンチンのリチウム資源開発を資金・技術の両面で支援し、経済産業省は2024年に策定した重要鉱物確保戦略に基づき、同盟国との資源パートナーシップを推進中だ。CATLが単独企業として垂直統合を進めるのに対し、日本は官民連携で調達網を分散させるアプローチをとっている。

CATLは2026年後半にもアフリカでの新たなリチウム鉱山プロジェクトの稼働を予定しているとされる。CATLの調達コスト低減が実現すれば、BYDのSEALION 7やDOLPHINなど日本市場向けモデルの価格設定にも波及しうる。資源を押さえた者がバッテリーの価格決定力を握る——その構図が鮮明になるなかで、日本の官民連携型の資源戦略がどこまで対抗軸になれるか、2027年がひとつの分水嶺になる。

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BLADE NOTE編集部
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