EV市場

ドイツBEV登録が前年同月比66%増——補助金なき市場で中国勢はどう動いたか

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EV市場: ドイツBEV登録が前年同月比66%増——補助金なき市場で中国勢はどう動いたか

66.2%——36氪が報じたドイツ連邦自動車庁(KBA)の統計によれば、2026年3月の純電動車(BEV)新規登録台数は前年同月比でこの伸びを記録した。欧州最大の自動車市場で何が起きているのか。数字の背景を整理する。

「補助金ショック」後の回復とEU規制の押し上げ効果

ドイツは2023年12月にEV購入補助金(Umweltbonus)を突如打ち切った。最大6,750ユーロの補助が一夜にして消え、2024年のBEV登録台数は前年比で大幅に落ち込んだ。2024年通年のBEV比率は約12%にとどまり、ノルウェーやオランダといった先行国との差が改めて浮き彫りになった。

2025年に入ると市場は底打ちの兆しを見せ始めたが、回復は緩やかだった。今回の66.2%増には前年の「低い基準値」が効いている。絶対台数で見れば、補助金があった2023年同月の水準にようやく近づいた程度だ。伸び率の派手さだけで市場の過熱を読み取るのは早計だろう。

政府補助金は消えたが、代わりに効いているのがEUの新CO2排出規制だ。2025年から段階的に強化された乗用車CO2排出基準により、メーカーは販売車両の平均排出量を大幅に引き下げなければ巨額の罰金を科される。結果として、フォルクスワーゲンはID.3やID.4のリース料を引き下げ、BMWもiX1の法人向けプランを拡充した。消費者にとっては、メーカー原資のディスカウントが実質的な購入支援になっている。

日本でも2026年度のCEV補助金は継続されているが、上限額は段階的に縮小傾向にある。ドイツの事例は、補助金が終了しても規制とメーカー施策の組み合わせで市場が維持されうることを示しており、日本のEV普及を考える上でも参考になる構図だ。

中国メーカーの浸透——BYD・MG・Smartの現在地

この回復局面で中国系ブランドが着実にシェアを広げている。36氪の報道はドイツ市場全体の伸び率を伝えるものだが、個別ブランドの動向を業界各社の公表データから補足すると、以下のような構図が浮かぶ。

ブランド 主力BEVモデル ドイツでの価格帯(税込目安) 備考
BYD ATTO 3 / Seal / ドルフィン 約3.0万〜4.5万ユーロ ハンガリー工場建設中、EU追加関税(最大35.3%)回避を見据える
MG(上汽傘下) MG4 約3.0万ユーロ前後 コンパクトBEVでID.3と直接競合
Smart(Geely・メルセデス合弁) #1 / #3 約3.5万〜4.2万ユーロ メルセデスの販売網を活用

BYDのドルフィン、ATTO 3、Sealはいずれも日本市場でも販売されているモデルだ。ドイツと日本で同一車種を展開しているということは、ドイツでの販売実績や顧客の反応が、日本向けの価格設定や次期投入モデルの選定に直結する可能性がある。実際、BYDが欧州市場向けに進めているハンガリー工場での現地生産が軌道に乗れば、EU関税のコスト圧を回避できるぶん、アジア輸出向けの生産能力にも余裕が生まれる。日本を含むアジア市場への供給戦略に波及する展開は十分に考えられる。

中国系ブランド全体のドイツBEV市場シェアは、各種業界レポートによれば2024年の約8%から拡大基調にあるとされる。ただし2026年3月時点の正確なシェアはKBAの詳細統計の公表を待つ必要がある。

ドイツ勢の対抗策と次の節目

ドイツ市場は依然として地場メーカーが大きなシェアを握っている。フォルクスワーゲングループ、BMW、メルセデスの3社でBEV登録の過半を占める構造は変わっていない。フォルクスワーゲンは2026年後半にID.2all(仮称)の投入を予定しており、2万5,000ユーロ以下のエントリーBEVで中国勢の価格帯に正面からぶつける計画だ。

3月の66.2%増はあくまで回復過程の一断面にすぎない。ドイツ政府は2026年度予算でEVインフラ整備に約9億ユーロを計上しており、充電網の拡充が需要をさらに後押しする可能性はある。一方で、米国の関税政策をめぐる不透明感が欧州自動車産業全体に影響を及ぼしている点も見逃せない。

次の節目は4月のKBA月次統計の発表と、6月に予定されるEUのCO2規制中間見直し協議だ。BYDのハンガリー工場の進捗とあわせ、補助金なきドイツEV市場の実力が今後数カ月で見えてくる。

出典

BLADE NOTE編集部
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