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零跑の技術でOpelが走る – 中国EV技術の「黒子化」が加速

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中国EV: 零跑の技術でOpelが走る – 中国EV技術の「黒子化」が加速

中国のEVメーカーが、自社ブランドではなく欧州の老舗ブランドの「中身」を担う——そんな構図が現実になりつつある。Stellantisが傘下のOpel(オペル)ブランド向け電動SUVの開発で、中国・零跑汽車(Leapmotor)と最終段階の交渉に入っていることが明らかになった。

OpelのSUVを零跑のプラットフォームで

CnEVPostがReutersの報道として伝えたところによると、新型モデルは零跑のコンパクトSUV「B10」とプラットフォームを共有する。生産拠点はスペイン・サラゴサにあるStellantisの工場で、2028年の量産開始を目指す。年間生産目標は5万台だ。

社内コードネームは「O3U」。交渉は2025年末に始まり、早ければ今月中にも正式合意に至る可能性があるという。零跑がEEA(電子電装)を含むコア技術と主要部品を供給し、Opelがエクステリアデザインを担当する。R&Dの大部分は中国で行われる見通しだ。

つまり、消費者が手にするのは「Opel」のエンブレムが付いたSUVだが、その心臓部は中国製ということになる。

Stellantisの狙い——開発コストと時間の圧縮

Stellantisがこの提携で得る最大のメリットは、EVの開発期間とコストの大幅な削減だ。ゼロからプラットフォームを開発すれば数年と数十億ユーロが必要になるが、零跑の既存技術を活用すれば、そのどちらも劇的に短縮できる。

Stellantisは2023年10月に15億ユーロ(約1,750億円)を投じて零跑の約20%の株式を取得し、最大の外部株主となった。以来、零跑はStellantisの販売網を活用して数十カ国の海外市場に進出している。今回のOpelモデルは、この資本提携が「販売協力」から「共同開発」へと深化したことを意味する。

話はOpelだけにとどまらない。Reutersによれば、同じサラゴサ工場でAlfa Romeoのモデルを零跑のアーキテクチャで開発する予備的な協議も始まっている。さらにAセグメントの小型車についても別ラインでの生産が議論されているという。Stellantisは零跑の技術をグループ横断で活用する青写真を描いているようだ。

北米にも波及——カナダ工場での生産構想

欧州での協業深化と並行して、Stellantisはカナダのオンタリオ州ブランプトンにある休止中の工場で零跑のEVを生産する初期段階のビジネスプランも検討している。Bloombergが4月2日に報じたこの構想が実現すれば、中国資本によるカナダ自動車産業への初の大型戦略投資となる。

カナダは中国製EVに100%の関税を課していたが、今年1月に年間最大4万9,000台を対象とする免除枠を設定。最恵国待遇の6.1%の税率が適用される道を開いた。この政策変更が、Stellantis-零跑連合の北米展開を後押しする可能性がある。

「黒子」としての中国EV技術

零跑は中国の新興EVメーカーの中でも急成長を遂げている。2025年の納車台数は約60万台に達し、売上高は150億元(約2,200億円)を記録。通年ベースで初の黒字化も達成した。2026年は100万台の納車と4つの新型モデル投入を目標に掲げる。

ここで注目したいのは、零跑の技術が「零跑」というブランド名を消費者に見せることなく、OpelやAlfa Romeoとして欧州の道路を走る可能性があるという点だ。スマートフォン業界でいえば、Qualcommのチップがさまざまなブランドの端末に搭載されている構図に近い。中国のEV技術が「黒子」としてグローバルな自動車産業に組み込まれていく——これは、関税や政治的摩擦でブランドとしての進出が難しい市場に対する、もう一つの浸透経路になりうる。

日本市場に目を向ければ、Stellantis傘下にはアバルトやジープといった輸入ブランドがある。欧州で零跑ベースの車両が成功すれば、同様のスキームが他の地域・ブランドに展開される可能性は十分にある。消費者が意識しないところで、中国のEV技術が身近な存在になっていく時代はすでに始まっている。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

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