NIO ES9、4月9日に予約価格発表 – 全長5.3m超の電動フラッグシップSUVが示すNIOの次の一手
全長5,365mm——中国の純電動SUVとして最大サイズを誇るNIO ES9の全貌が、いよいよ明らかになる。NIOは4月9日に技術発表イベントを開催し、同モデルの予約価格と技術的な詳細を公開する予定だ。フルサイズ電動SUVという成長セグメントに本格参入するこの一台は、NIOの製品戦略においてどのような位置づけになるのか。
ティザー映像と公開されたスペック
NIOは4月1日、ES9の公式ティザー映像と複数の画像を公開した。映像ではライト周りのデザインやインテリアの一部が確認でき、NIOはES9を「スマート電動エグゼクティブ・フラッグシップSUV」のパイオニアと位置づけている。その後、中国のSNS「Weibo」で追加の公式画像も公開された。
NIOのユーザーオペレーション責任者・楊波(ヤン・ボー)氏は、ES9が中国で販売される純電動SUVとして最大のボディサイズになると明言。予約価格の情報も4月9日のイベントで発表するとした。
1月の規制当局への届出によると、ES9のボディサイズは全長5,365mm×全幅2,029mm×全高1,870mm、ホイールベースは3,250mm。すでに大型電動SUVとして知られる第3世代ES8(全長5,099mm×全幅1,962mm×全高1,720mm、ホイールベース3,070mm)を全長で約270mm、ホイールベースで180mm上回る。4月9日のイベントは北京時間19時に開始され、4月24日開幕の北京モーターショーでの一般公開に先立つ形となる。正式な発売は5月末、デリバリーは6月1日に開始される見込みだ。
自社開発チップとBaaS——NIOのエコシステム戦略
ES9にはNIOの最新世代の研究開発成果が投入される。自社開発の自動運転チップ「Shenji NX 9031」を2基搭載し、シャシーシステム「SkyRide」を採用する見通しだ。バッテリーは102kWhパックで、航続距離は最大620kmに達するという。第3世代ES8の75kWh/100kWhパック(航続距離最大465km/580km)から容量・航続距離ともに引き上げられた格好だ。
3月に公開された冬季テスト映像も話題を呼んだ。時速150kmでのタイヤバースト試験をクリアする様子に加え、小型EVのfirefly(ファイアフライ)との比較で狭い道路を走行するシーンが収録されていた。大型SUVでありながら、コンパクトカー並みの最小回転半径と機動性を備えることを示す内容だ。
ES9の投入はNIO独自のバッテリー交換サービス「BaaS(Battery as a Service)」の価値も押し上げる。BaaSはバッテリーを購入せずに月額サブスクリプションで利用できる仕組みで、車両本体価格を抑えられる。中国国内では2,600基以上の交換ステーションが稼働しており、約3分でバッテリーを交換できる。NIOの現行フラッグシップセダンET9(76万8,000元〜)ではBaaS利用時に車両価格が約12万〜15万元下がるとされており、ES9でも同等の割引が適用されれば、仮に本体価格60万元のグレードなら実質45万〜48万元まで下がる計算だ。
競合環境・価格の見通しとES9の役割
フルサイズ電動SUV市場は競争が激化している。ES9と主要競合モデルのサイズ・価格帯は以下のとおりだ。
| モデル | 全長 | 価格帯(中国市場) |
|---|---|---|
| NIO ES9 | 5,365mm | 4月9日発表予定 |
| Li Auto L9 | 5,218mm | 約45万〜47万元 |
| Xpeng X9 | 5,293mm | 約36万〜42万元 |
| BMW iX xDrive50 | 4,953mm | 約75万元〜 |
| メルセデス EQS SUV | 5,125mm | 約90万元〜 |
ES9は全長で中国勢・海外勢のいずれも上回る最大級のサイズとなる。現在のNIO最上位モデルET9が76万8,000元であることを踏まえると、ES9の価格帯は50万〜70万元台に収まるとの観測がある。BaaS適用で実質40万元台前半に収まるなら、Li Auto L9やXpeng X9と直接競合する価格帯に入り、サイズと自動運転チップで差別化を図れる構図になる。
フルサイズSUVはファミリー層や法人のショーファー需要を取り込める車種で、客単価の高さから収益改善への貢献も大きい。NIOは2025年通期で約22万台を販売し前年比約38%成長したが、純損失は依然として年間200億元規模とされる。ただし四半期ベースでは赤字幅が縮小傾向にあり、車両粗利率も改善している。ES9のような高単価モデルの販売比率が上がれば、黒字化への道筋がより明確になる。加えて、大容量バッテリーを搭載するES9ユーザーが増えることでBaaS交換ステーション1基あたりの利用頻度が上がり、BaaS事業単体の収支改善にもつながる。
海外展開では、NIOはノルウェー・ドイツ・オランダ・スウェーデン・デンマークの欧州5カ国で販売中だ。欧州での累計販売台数は2025年末時点で約3万台とみられ、中国プレミアムBEVブランドとしては一定の足場を築いている。ただし販売台数ではBYDやテスラとの差は依然として大きく、ES9のようなフラッグシップモデルでブランド認知をさらに引き上げたい狙いがある。
日本の読者にとって身近な比較対象で見ると、日本国内で購入できる純電動フルサイズSUVは現状BMW iX(約1,100万円〜)やメルセデス・ベンツ EQS SUV(約1,500万円〜)に限られ、いずれも1,000万円超だ。トヨタ・ランドクルーザー(約730万円〜)やレクサスLX(約1,250万円〜)は根強い人気があるが内燃機関モデルであり、電動フルサイズSUVの選択肢は極めて少ない。NIOは2026年4月時点で日本未参入だが、仮にES9が日本円換算で700万〜1,000万円程度の価格帯で上陸すれば、このセグメントに風穴を開ける可能性がある。
4月9日イベントの注目ポイント
自社開発チップ「Shenji NX 9031」のフラッグシップモデルへの搭載は、NIOが半導体の内製化を本格的に製品に反映し始めたことを意味する。4月9日のイベントで最大の焦点となるのは予約価格だ。BaaS非適用で55万元以下なら中国勢との価格差はほぼなくなり、70万元を超えるならET9との棲み分けが問われる。BaaS適用後の実質価格、102kWhバッテリーでの実走行距離、そして「Shenji NX 9031」による自動運転機能のレベル——この3点が、ES9の市場でのポジションを決定づける。