EV市場

テスラが日本60店舗体制へ – BYDとの輸入EV販売網競争の現在地

5分で読める
EV市場: テスラが日本60店舗体制へ – BYDとの輸入EV販売網競争の現在地

36氪の報道によると、テスラは日本国内の店舗数を60拠点まで拡大する方針だ。現在約20店舗の同社にとって3倍規模の増強となる。一方、BYDは2026年時点で約100店舗体制を整えつつある。店舗数、価格帯、充電環境——三つの軸で両社の販売戦略を比べてみる。

販売拠点数で先行するBYD、急追するテスラ

BYD Auto Japanは2022年7月の設立以来、ディーラー網の構築を急ピッチで進めてきた。既存の自動車販売会社との提携を軸に全国へ展開し、当初目標の100店舗に到達する見込みだ。地方都市にも拠点を置き、試乗機会の確保を重視している。

テスラはこれまで直営モデルにこだわり、都市部のショッピングモール内やロードサイドに店舗を集中させてきた。60店舗への拡大が実現すれば、これまで手薄だった地方エリアへのリーチが広がる。ただし、直営を維持するのか、代理店方式を取り入れるのかで展開スピードは大きく変わるだろう。

率直に言えば、直営で60店舗を短期間に立ち上げるのはかなり重い。不動産の確保、スタッフの採用と教育、各拠点の収益管理——テスラがこれまで日本で20店舗にとどまっていたのは、直営モデルの拡張コストが理由の一つだったはずだ。一部で代理店方式の導入が噂されるのも無理はない。

価格帯・ラインナップと充電環境の違い

両社の日本向けラインナップを並べると、カバーする価格帯の差が鮮明になる。

項目 BYD テスラ
最安モデル RACCO(300万円台前半) Model 3(約540万円〜)
主力価格帯 363万〜638万円 540万〜1,000万円超
車種数(日本) 5車種 4車種(Model 3/Y/S/X)
ボディタイプ コンパクト・セダン・SUV セダン・SUV
販売店舗数 約100店舗 約20→60店舗へ拡大予定

BYDの強みは300万円台から買えるエントリーモデルの存在だ。2025年秋に投入されたRACCOは補助金を適用すれば200万円台後半で手が届く計算になり、軽EVからのステップアップ層を狙える位置にいる。DOLPHINも363万円からと、輸入BEVとしては破格の設定だ。

テスラはModel Yが日本での販売の柱で、2024年には輸入BEVの登録台数トップを維持した。ブランド力と充電ネットワークの充実が武器だが、500万円を切るモデルがないぶん、価格で選ぶ層には訴求しにくい。

充電環境にも差がある。テスラは独自のスーパーチャージャーネットワークを国内で拡大中で、最大250kWの高出力充電が可能な拠点を増やしている。テスラオーナーにとっては他社にない利便性だ。

BYDはCHAdeMO規格の公共充電インフラに依存する。国内の急速充電器は約1万基あるが、出力50kW程度が主流で、150kW超の高出力器はまだ少ない。一方で、BYDのBlade Batteryに採用されているLFP(リン酸鉄リチウム)セルは充放電サイクルの耐久性が高く、自宅での普通充電を中心に運用するユーザーとの相性がよい。

2026年、輸入BEV市場の力学

日本のBEV市場は2025年に約12万台規模に達する見通しで、そのうち輸入BEVはテスラ、BYD、Hyundaiが上位を占める。テスラが店舗網を一気に3倍へ引き上げる背景には、BYDの急成長がある。

JAIAの統計データを基にした各種報道によれば、BYDの日本での新車登録台数は2023年の約2,000台から2024年に約3,500台へ伸び、2025年は約6,000台に達したとみられる。RACCOの投入で300万円台の選択肢を手にし、テスラとは異なる客層を開拓できる立場にある。テスラは台数よりも単価の高さで収益を確保しつつ、スーパーチャージャーで既存オーナーを囲い込む構えだ。

ただ、BYDにも課題はある。100店舗の大半は既存ディーラーとの併売契約で、BYD専売ではない。店舗スタッフがBYD車の特性をどこまで理解し、適切に説明できているか。SNS上では「ディーラーでBYDの試乗を頼んだが、スタッフの知識が不十分だった」という声も散見される。店舗数だけでは測れない販売力の質が、今後の伸びを左右する。

CEV補助金はBEVで最大85万円。300万円台のRACCOと500万円台のModel Yでは、補助金適用後の実質負担額の差がさらに開く。この価格差を「ブランド料」と見るか「割高」と感じるかは消費者次第だが、補助金制度が現行水準を維持する限り、BYDの価格優位は揺るぎにくい。

テスラの60店舗計画の完了時期は明らかにされていない。BYDは2026年中に100店舗体制を固め、次の段階としてアフターサービス網の充実に軸足を移す。両社とも「売った後」の体験をどう設計するかが、リピーターとクチコミを生む鍵になる。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

BYD・中国EVの最新ニュースを日本語で配信。海外の1次ソースをもとに、日本の読者に向けた独自記事を毎日更新しています。