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VWが中国合弁の販売網を初統合 – ID. UNYX 08が映す外資EVの生存戦略

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中国EV: VWが中国合弁の販売網を初統合 – ID. UNYX 08が映す外資EVの生存戦略

フォルクスワーゲン(VW)が中国市場で長年維持してきた合弁事業間の「壁」を崩し始めた。VWアンホイ(安徽)の電気自動車を、一汽フォルクスワーゲンの販売店で取り扱う戦略提携が正式に動き出している。

合弁の垣根を越えた「店中店」モデルとその背景

VWアンホイと一汽フォルクスワーゲンは、ディーラーネットワーク協力に関する戦略的覚書に署名した。一汽VWの販売店内に専用チームを設置し、VWアンホイのEVモデルを展示・販売する「店中店(ストア・イン・ストア)」方式を採用する。

まず、VWアンホイの販売拠点が手薄な約30都市で展開を開始。現在VWアンホイの販売拠点は約140カ所で、年末までに200カ所への拡大を目指している。一方、一汽VWは約1,000店舗の成熟したネットワークを持っており、この既存資産を活用して地方都市での露出不足を補う狙いだ。

中国におけるVWの合弁事業——一汽VWとSAIC VW——は長年、ブランド運営から在庫管理、販売インセンティブに至るまで完全に独立した体制を敷いてきた。VWアンホイは2017年にVWと安徽江淮汽車集団(JAC)が設立した、VWとして中国初の新エネルギー車(NEV)専業合弁だが、販売網の薄さが慢性的なボトルネックになっていた。複数の戦略的EV製品を集中投入するにあたり、チャネル不足を一気に解消する必要に迫られたことが、合弁の壁を越える決断の直接的な引き金となった。

2025年の中国NEV市場において、外資(関連: Leapmotor×Stellantisのカナダ進出)系メーカーの合計シェアは10%を下回る水準まで縮小した。BYDが年間約425万台のNEVを販売し、直営・準直営を含む数千カ所の販売網を全国に展開する一方、VWの中国におけるBEV販売は年間20万台前後にとどまる。トヨタも一汽トヨタと広汽トヨタの二系統を維持しているが、両社間の販売網統合には踏み込んでいない。日産は東風日産を通じた一本化体制だが、NEV販売では存在感を失いつつある。VWの判断は、従来の枠組みでは中国EV市場(関連: BYDの海外販売150万台計画)で戦えないという現実を受けたものだ。

第1弾はXpengと共同開発の「ID. UNYX 08」

この提携で最初に投入されたのが、VWとXpeng(小鵬汽車)の技術協業から生まれた中大型電動SUV「ID. UNYX 08」だ。2025年3月にプレセール(予約販売)が始まり、価格は23万9,900元(約490万円)から設定された。

核心はXpeng由来の技術にある。Xpengが供給する「Turing」スマートドライビングチップを2基搭載し、同社の先進運転支援ソリューション「VLA 2.0」を採用した。VWとXpengが技術提携契約を締結してからわずか24カ月で量産にこぎ着けている。外資メーカーが中国ローカルのスマートEV技術をここまで全面的に取り込んだ例はほとんどない。

BYDの販売網戦略との対比

VWが合弁横断という変則的な手段でチャネル拡大を図る一方、BYDは自前の販売網構築で市場を押さえてきた。BYDは「王朝」「海洋」「方程豹」「仰望」とブランドごとに販売チャネルを分け、それぞれ独立した店舗網を運営している。直営とディーラー併用のハイブリッド方式で、2025年時点の総店舗数は4,000カ所を超えるとされる。

各社の販売網規模を整理すると、その差は歴然だ。

メーカー / ブランド 販売拠点数 備考
BYD(全ブランド計) 4,000超 直営+ディーラー併用
一汽VW 約1,000 ICE中心の成熟ネットワーク
VWアンホイ 約140→200(年末目標) NEV専業、店中店で補完

VWが一汽VWの既存店舗に「間借り」する方式は、初期コストを抑えてスピード展開できる利点がある反面、店舗スタッフのブランド教育や顧客体験の統一という課題が残る。BYDやNIOのように専用空間で世界観を作り込むアプローチとは対照的だ。

SAIC VW側がこの枠組みにどう関与するかも明らかになっていない。

ID.4の次——日本にXpeng技術は来るか

VWは日本でもID.4を販売しているが、日本での登録台数は2024年に約1,800台にとどまり、BEV市場全体の中でも限定的な存在だ。価格帯は514万円〜655万円で、補助金適用後でも400万円台後半からとなる。日本向けモデルは欧州開発プラットフォーム(MEB)ベースのままで、中国ではXpengの運転支援技術やローカル向けソフトウェアを全面採用したID. UNYXシリーズとは仕様が異なる。

VWグループは2026年以降の次世代EV群にXpengのプラットフォーム技術を段階的に拡大採用する方針を示しており、中国で実績を積んだ運転支援技術がコスト面の優位性を武器に欧州や日本向けモデルに載る余地はある。ただし、VWジャパンはID. UNYXの日本導入について現時点で何も発表しておらず、日本のBEV補助金制度(2025年度上限85万円)の対象要件との整合性も未確認だ。仮に実現すれば、日本の消費者がVWのEVを買う際、中核技術が中国メーカー製という構図になる。外資メーカーの「中国依存」は、生産拠点だけでなくソフトウェアや知能化技術にまで広がり始めている。

VWは2025年中にID. UNYXブランドで計3モデルの投入を予定している。一汽VWの販売網を活用した合弁横断戦略が機能するかどうかは、まず月間販売台数で見えてくる。VWアンホイ全体の2025年通年目標は15万台。2024年の約5万台から3倍の伸びを達成できるかが、この新しい枠組みの成否を左右する。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

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