XPENGがメキシコ市場に参入 – G6とG9で中南米攻略へ
XPENG、メキシコで正式販売を開始
中国の新興EVメーカーXPENG(小鵬汽車)が、メキシコ市場への正式参入を発表した。投入するのはミドルサイズSUV「G6」とラージSUV「G9」の2車種。G6の価格は819,900メキシコペソ(約45,000米ドル=1ドル約151円換算で約680万円)からで、テスラModel Yの799,000ペソとほぼ同価格帯だ。
G6はModel Yと車体サイズやスペックが近いが、標準装備の充実度で差別化を図る。充電速度でもテスラを上回り、単純な価格勝負ではなく「同じ値段でより多くを得られる」という訴求だ。上位モデルのG9は1,099,900ペソ(約61,000米ドル)で、より広い室内空間と快適性を重視した仕上がりになっている。
なぜメキシコなのか——米中関税の文脈
メキシコ参入の背景には、米中貿易摩擦の激化がある。米国は2024年以降、中国製EVに対する関税を100%に引き上げた。中国メーカーにとって米国市場への直接輸出は事実上不可能になっている。一方、メキシコは米国・カナダとUSMCA(旧NAFTA)で結ばれており、将来的に現地生産が実現すれば北米市場へのアクセスが開ける可能性がある。もちろん、米国側もこの「裏口」を警戒しており、メキシコ経由の中国製EVに対する規制強化の議論はすでに始まっている。それでもXPENGがメキシコを選んだのは、1億3,000万人の国内市場そのものに加え、中南米全域へのハブとしての地理的優位性を評価したためだろう。
3年計画で中南米のAIモビリティをリード
XPENGの副会長兼社長であるブライアン・グー博士は「メキシコ参入はグローバル展開における重要な一歩であり、中南米でAIモビリティを3年以内にリードするという計画の出発点だ」と語った。
車両販売だけではない。販売開始前から1,000㎡のパーツ倉庫を設置し、全国規模のアフターサービス体制を整備済み。売りっぱなしにしないという姿勢を明確にした格好だ。何小鵬CEOも「2026年に主要市場への参入を果たし、2028年までにAIモビリティのリーダーシップを確立する」とロードマップを示している。メキシコを皮切りに、ウルグアイ、グアテマラ、コロンビアなど中南米諸国への展開も進む見込みだ。
AI技術が競争力の核心に
メキシコ投入モデルにはNVIDIA Orin-Xチップを搭載した「X-Pilot」ADASが搭載される。高速道路での自動巡航、自動駐車、音声操作に対応しており、テスラがサブスクリプション課金で提供する機能と比べても遜色ない水準だ。ただし、これはXPENGの最新技術ではない。
現在XPENGが中国国内で展開している次世代ADAS「XNGP」は、自社開発の「Turingチップ」とVLA(Vision-Language-Action)2.0モデルを基盤としており、X-Pilotとは世代が異なる。X-Pilotが高速道路と駐車場に限定されるのに対し、XNGPは市街地の一般道でも自動運転に対応する。信号認識、歩行者の予測行動、無秩序な車線変更への対処など、中国の複雑な交通環境で日々学習を重ねたシステムだ。北米や中南米の比較的整った交通環境であれば、さらに高い精度を発揮する余地がある。メキシコではまずX-Pilotで市場を開拓し、規制認可が整い次第XNGPを投入する——という段階的な戦略が見える。
社名変更が示すXPENGの野望
XPENGは最近、社名を「XPENG Auto」から「XPENG Group」に変更した。EVメーカーからの脱皮を象徴する動きだ。何小鵬CEOは「スマートEVから始まった12年間の旅は、空飛ぶクルマ、Turing AIチップ、VLA自動運転モデル、人型ロボット『IRON』、ロボタクシーへと広がった」と述べている。フィジカルAI——つまり現実世界で動くAI技術の総合企業へ。それがXPENGの描く次の姿であり、メキシコ参入はそのグローバル戦略における具体的な一手だ。
日本市場への示唆
XPENGは現時点で日本市場への参入を正式発表していない。しかし、中南米への積極展開は、同社のグローバル戦略が加速していることを示す。BYDがすでに日本でATTO 3やDOLPHINを販売し、SEALIONやRACCOの投入も控えるなか、中国EV(関連: BYDの海外販売150万台計画)メーカー同士の海外市場争奪戦は激しさを増している。
G6の約680万円という価格は、日本のSUV市場で見るとトヨタ・ハリアーPHEV(約620万円〜)やレクサスNX(約530万円〜)と競合する価格帯にあたる。BYD SEALの528万円〜と比べるとやや高いが、ADAS機能を標準搭載する点で訴求力はある。BYDが「手頃な価格のEV」というポジションで日本市場を開拓したのに対し、XPENGが仮に参入するなら「AI技術で選ばせる」という異なる切り口になる可能性が高い。2026年後半に予定されるアジア市場の展開発表が、次の焦点になるだろう。
出典
- Mexico Entry Expands XPENG Group’s Global Presence(CleanTechnica)