バッテリー技術

BYD「9分フラッシュチャージ」の実力──次世代Blade Batteryは充電体験を塗り替えるか

4分で読める
バッテリー技術: BYD「9分フラッシュチャージ」の実力──次世代Blade Batteryは充電体験を塗り替えるか

BYDが10〜80%をわずか9分で充電する次世代Blade Batteryを発表した。EVsmartブログが報じたこの「9分フラッシュチャージ」技術は、バッテリーから車両制御まで自社で手がける同社の垂直統合モデルだからこそ到達できた領域だ。

9分充電の技術とCATL神行バッテリーとの位置関係

次世代Blade BatteryはLFP(リン酸鉄リチウム)ベースの構造を踏襲しつつ、セル内部の電極設計を刷新した。従来のBlade Batteryは安全性と長寿命で定評があったが、充電速度ではNMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系に後れを取っていた。次世代版ではリチウムイオンの移動経路を短縮し、LFPの充電速度を大幅に引き上げている。10〜80%を9分で完了するには、800Vアーキテクチャと500kW級の充電出力が前提となる。BYDはすでに自社の「e Platform 3.0 Evo」で800Vプラットフォームを採用しており、この数値は同プラットフォームの仕様から導かれる推定だ。

超急速充電の分野では、CATLが2023年に発表した「神行(Shenxing)超快充バッテリー」が先行する。神行バッテリーもLFPベースで、10分で400km分の航続距離を充電できるとCATLは公表している。充電速度のスペック上、両者は同等クラスに位置する。

ただし競争軸は充電速度だけではない。CATLはバッテリーサプライヤーとして複数メーカーに供給する一方、車両側の充電制御には直接関与しない。BYDはバッテリーセルの製造から充電制御ソフトウェアまで一貫して自社開発するため、実際の充電体験──温度管理やプレコンディショニングの精度──でアドバンテージを持ちうる。テスラがSupercharger網と車両を一体設計して安定した充電体験を実現しているのと同じ構造だ。ここにBYD独自の強みがある。サプライヤーから電池を買って組み込むメーカーには、セルの劣化特性に応じて充電カーブをリアルタイム調整するような制御は難しい。

CHAdeMO 150kWの壁とChaoJi規格の行方

日本国内でBYDはATTO 3、DOLPHIN、SEALなどを販売しているが、9分充電の恩恵をフルに受けるには充電インフラの刷新が不可欠だ。現在、日本のCHAdeMO急速充電器は最大出力150kW程度が主流で、90kW以下の旧型も数多く稼働している。150kW充電器では、車両側が9分充電に対応していても物理的にその速度は出ない。

ここで注目されるのがCHAdeMO協議会と中国電力企業聯合会が共同開発する次世代規格「ChaoJi(超級)」だ。ChaoJiは最大900kWの充電出力に対応する設計で、日中両国の充電インフラを共通規格で結ぶ構想を持つ。BYDが中国市場で超急速充電対応車を展開し、同時にChaoJi規格が日本で普及すれば、日本のBYDユーザーが9分充電の恩恵を受ける道筋が見えてくる。

一方、北米ではテスラのNACS規格が事実上の標準となりつつあり、250kW超のSuperchargerが広く展開されている。欧州もCCS規格で350kW級充電器の設置が加速中だ。BYDが海外販売150万台を掲げる中で、超急速充電技術は北米・欧州市場での商品力に直結する。日本市場では、BYD正規ディーラーに設置される充電器の出力仕様と、ChaoJi対応充電器の商用展開時期が、この技術の実用的価値を左右する具体的な条件となる。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

BYD・中国EVの最新ニュースを日本語で配信。海外の1次ソースをもとに、日本の読者に向けた独自記事を毎日更新しています。