EV市場

中国NEV販売3月は前年比21%減 – 春節シフトと市場回復の実態

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EV市場: 中国NEV販売3月は前年比21%減 – 春節シフトと市場回復の実態

78.4万台——。中国乗用車協会(CPCA)が発表した2026年3月の中国NEV(新エネルギー車)小売販売台数だ。前年同月比では21%の減少だが、2月比では69%の急増。この一見矛盾する数字の裏には、春節の暦ズレという構造的な要因が潜んでいる。

前年比マイナスの正体は「カレンダー効果」

2026年の春節は2月下旬にずれ込んだ。その結果、3月第1週はまだ連休明けの回復途上にあり、販売の立ち上がりが鈍かった。CPCAもこの暦のシフトが前年比減の主因だと説明している。

週次データを見ると、回復の軌跡がはっきりする。3月前半の日販平均は3万866台にとどまったが、月末には8万1,520台まで持ち直した。前年同月比の落ち込み幅も、第1週の-24%から第3週には-6%まで縮小している。

期間 日販平均(小売) 前年同期比 前月同期比
3月1〜8日 30,866台 -24% -25%
3月9〜15日 44,903台 -19% +42%
3月16〜22日 51,766台 -6% +64%
3月23〜31日 81,520台 +6%(卸売) +86%

第4週に前年比マイナス幅が小売ベースで再び13%に拡大した点は気になるが、これは2025年3月末に駆け込み需要があった反動とみるのが妥当だろう。卸売ベースでは同期間で前年比+6%とプラスに転じており、メーカーからディーラーへの出荷は堅調だった。

累計では24%減、だが卸売との乖離に注目

1〜3月の累計NEV小売販売は184.4万台で、前年同期比24%減。数字だけ見れば深刻に映る。しかし卸売累計は271.6万台で、こちらは5%減にとどまる。小売と卸売の差が大きいのは、ディーラー在庫が積み上がっているというよりも、春節前後の消費行動のタイムラグが影響している面が大きい。

NEVの小売浸透率は47.3%に達した。中国の乗用車市場全体が前年比15%減の165.7万台だったことを考えると、NEVの落ち込みは市場全体のトレンドに沿ったものであり、NEV固有の失速ではない。

原材料高と地政学リスクが影を落とす

CPCAは、原材料・半導体の価格上昇と、国際的な地政学リスクに伴う原油高がメーカーの経営環境を複雑にしていると指摘した。特に打撃を受けているのは従来型のICE(内燃機関)車市場だという。ディーラーは大きな圧力にさらされており、小売の取引価格は比較的安定しているものの、市場全体のセンチメントは回復途上にある。

CPCAは現在の中国NEV市場を「最も困難な時期」と表現した。新製品の投入と市場環境の明確化を待っている状態だという。率直な物言いだ。

浸透率47%が映す中国市場と日系メーカーの現在地

NEV浸透率47%という数字は、中国市場で販売される乗用車のほぼ半数がNEVになったことを意味する。イノベーション普及理論では一般に普及率16%超でアーリーアダプター層を超えたとされるが、47%はその段階をとうに過ぎ、主流消費者に完全に浸透した水準だ。

この環境下で、日系メーカーの中国事業は厳しい局面にある。トヨタ・ホンダ・日産はいずれも中国でのNEVラインナップ拡充を急いでいるが、BYDをはじめとする中国勢が価格・航続距離・ソフトウェアで先行する市場で巻き返すのは容易ではない。中国NEV市場の成長鈍化は、日系メーカーにとって参入の猶予が生まれるという見方もできるが、市場そのものがNEV前提で再編されている以上、対応の遅れはシェア喪失に直結する。

また、中国国内の競争激化は輸出拡大の圧力にもなる。BYDや奇瑞(Chery)は東南アジアや欧州への輸出を加速しており、日本市場でもBYDがATTO 3やDOLPHINなどで販売網を広げている。中国NEV市場の動向は、日本国内のEV競争環境にも波及する構図ができつつある。

2026年通年の見通し——4月以降の正常化が焦点

1〜3月の累計が前年比24%減という数字は、あくまで春節シフトによる歪みを含んでいる。4月以降に月販が80万〜90万台ペースに正常化すれば、通年では前年並みの水準に届く計算だ。

焦点は下半期に集中する。各社が投入を予定している新モデルが市場を活性化できるか。また、中国政府の補助金政策の動向も見逃せない。2025年は年末に向けた政策駆け込みが販売を押し上げた経緯がある。ただし、CPCAが「最も困難な時期」と認めている以上、楽観的な見通しには慎重であるべきだろう。4月のフルデータで、春節効果を差し引いた市場の実力値が見えてくる。

出典

BLADE NOTE編集部
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