充電インフラ

マンションでもEV充電を – 日産×ユアスタンドが集合住宅向け新施策

4分で読める
充電インフラ: マンションでもEV充電を – 日産×ユアスタンドが集合住宅向け新施策

集合住宅に住んでいるからEVは無理——そう諦めた経験のある人は少なくないだろう。日産自動車が2025年に実施したアンケートでは、EV購入を検討した30〜50代の集合住宅居住者のうち、52%が「自宅に充電環境がない」ことを理由に購入を断念したと回答している。半数以上が充電インフラの壁に阻まれている現実は、日本のEV普及における構造的な課題を示している。

日産とユアスタンドが全国規模で提携

日産自動車とEV充電サービスを手がけるユアスタンドは4月8日、集合住宅へのEV充電器設置を推進するパートナーシップを締結した。4月16日から全国で取り組みを開始する。

具体的には、ユアスタンドのウェブサイト上に日産専用の相談窓口を新設。日産の公式サイトからもユアスタンドを案内する導線を整備し、集合住宅に住むEV検討者が充電器設置の相談をしやすい環境を構築する。自動車メーカーと充電インフラ事業者が直接タッグを組む形だ。

管理組合との交渉から運用まで一気通貫

集合住宅でEV充電器を設置するハードルは、機器の選定や工事だけではない。むしろ厄介なのは、管理組合の合意形成や補助金申請といったソフト面の手続きだ。「総会で議題に上げたいが、どう説明すればいいかわからない」「補助金の申請書類が煩雑」——こうした声は多い。

ユアスタンドはこの点を強みとしている。管理組合への説明・合意形成の支援から、補助金申請の代行、現地調査、設置工事、さらに運用後の充電アプリ提供までをワンストップで担う。住民側の負担を最小限に抑える設計だ。

充電器設置後の運用面でも特典がある。日産EVを所有する顧客がユアスタンドの専用アプリで充電する場合、通常月額825円(税込)のアプリ定額利用料が無料になる。金額としては小さいが、「日産車を選ぶメリット」を日常的に感じられる仕掛けとして機能するだろう。

集合住宅向けのEV充電サービスには、テラモーターズの「テラチャージ」やWeChargeなど競合も存在する。テラチャージは初期費用・月額費用ゼロを前面に打ち出し、WeChargeは大手デベロッパーとの連携で新築物件への導入を進めている。これらに対しユアスタンドの差別化ポイントは、自動車メーカーとの直接提携による送客力だ。日産の販売網から充電器設置の相談につなげる導線は、既存の充電サービス事業者にはない強みといえる。

集合住宅の充電問題とメーカーの踏み込み

日本の住宅事情を考えれば、この問題の根深さは明らかだ。総務省の統計によると、日本の住宅の約4割が共同住宅。都市部ではその比率はさらに高い。戸建て住宅なら200Vコンセントの増設で済む充電環境の整備も、集合住宅では共用部の電気容量、駐車場の区画割り、費用負担の公平性など、クリアすべき論点が一気に増える。

国のCEV補助金は車両購入だけでなく充電インフラの設置にも適用されるが、申請のノウハウがなければ活用は難しい。自治体独自の補助制度も地域によってまちまちで、情報収集だけでも手間がかかる。結果として「面倒だからやめておこう」となりがちだ。

今回の提携では、自動車メーカーが「クルマを売る」だけでなく「充電できる環境をつくる」ところまで踏み込んだ。EVの販売台数を伸ばすには、車両の魅力向上だけでは限界がある。「買っても充電できない」という根本的な障壁を取り除かなければ、検討段階で離脱する顧客は減らない。

日産はすでに軽EVのサクラで累計販売10万台超の実績を持つ。サクラの購入層には地方のセカンドカー需要だけでなく、都市部のマンション居住者も含まれる。そうした顧客基盤を拡大するうえで、集合住宅の充電問題が最大の障壁だった。

BYDをはじめとする海外メーカーも日本市場でのEV販売を拡大しており、充電環境の整備は業界全体の課題でもある。日産とユアスタンドの取り組みは4月16日に始動する。まずは年内にどれだけの集合住宅に充電器が設置されるか、その導入件数が試金石になる。

出典

BLADE NOTE編集部
BLADE NOTE編集部

BYD・中国EVの最新ニュースを日本語で配信。海外の1次ソースをもとに、日本の読者に向けた独自記事を毎日更新しています。