Pony.aiが欧州初の商用ロボタクシーをクロアチアで開始 – 中国勢の海外展開が加速
クロアチアの首都ザグレブで、欧州初となる商用ロボタクシーサービスが始まった。仕掛けたのは中国の自動運転スタートアップPony.ai(小馬智行)。CnEVPostの報道によると、Uber、現地フリート事業者Verneとの3社提携により、一般利用者が予約・決済できる有料サービスとして本格稼働した。
ザグレブ市内90km²をカバー、空港もエリア内
サービスの初期カバーエリアは、ザグレブ中心部を含む約90平方キロメートル。市内の主要地区に加え、ザグレブ空港も運行範囲に含まれる。営業時間は毎日午前7時から午後9時まで。利用者はまずVerneアプリから配車可能で、近日中にUberアプリからの予約にも対応する予定だ。
車両にはBAIC(北京汽車)のArcfox Alpha T5を採用している。Arcfoxブランドは欧州市場向けのEVラインナップを持ち、EU圏での型式認証取得が比較的容易だったことが車両選定の背景にあるとみられる。搭載するPony.aiの第7世代自動運転システムは、中国国内のティア1都市2カ所で1台あたりの損益分岐点を達成済みだ。量産によるセンサーコストの低減が、海外市場でも採算の取れる運行を実現しつつある。
2週間で商用化、現地パートナーに運営を委ねるモデル
Pony.ai、Verne、Uberの3社が欧州パートナーシップを正式発表したのは約2週間前。そこから商用サービス開始まで極めて短期間だが、水面下での準備は相当期間にわたっていたとみられる。
3社の役割分担は明確に設計されている。
Verneがフリートオーナーとして車両を保有し、現地オペレーション、市場対応、規制対応の第一線を担う。Pony.aiは自動運転プラットフォームと運用ノウハウを提供。Uberは配車プラットフォームとして需要を接続する。自動運転企業が単独で海外市場に乗り込むのではなく、現地パートナーに運営を委ねることで、規制対応や住民感情といった障壁を乗り越える設計だ。クロアチアはEU加盟国のため、ここでの運行実績はEU域内の他都市へ展開する際、規制協議のベースラインとして機能する。
百度・Waymo・Cruiseとの立ち位置の違い
中国発ロボタクシーの海外進出といえば、百度(Baidu)のApollo Goも積極的に動いてきた。ただし百度は武漢をはじめとする中国都市部での大規模展開を優先し、海外市場には慎重な姿勢を続けている。
米国勢では、WaymoがGoogle系列の資金力を背景にサンフランシスコやフェニックスで着実に営業エリアを拡大中。一方、GM傘下のCruiseは2023年のサンフランシスコでの事故を受けて全米で運行を停止し、事業再建の途上にある。
Pony.aiは2024年末にNASDAQへ上場し、IPO時の調達額は約2.6億ドル。2025年第3四半期時点の手元現金は約5.5億ドルで、この資金を海外展開に投じている。CEOのJames Peng氏は「ザグレブでの展開は、第7世代ロボタクシー技術の新市場での有効性を実証するもの」とコメントした。
国内で収益基盤を固めつつ、海外では現地合弁モデルで市場を開拓する二正面戦略がPony.aiの特徴だ。欧州上陸の前日には、シンガポール当局から招待制の自動運転配車サービスの認可も取得しており、アジアと欧州を同時並行で攻めている。3社は今後、欧州域内で商用フリートを数千台規模に拡大し、他の欧州都市や国際市場への展開を計画中。Pony.aiとしては、この合弁モデルを通じて年内に全世界で3,000台のフリート体制を目指す。
日本は規制構造が異なり、EU型の横展開モデルが通用しない
日本国内では、ホンダがGM Cruise由来の技術で2026年中に東京都心でのロボタクシー商用化を目指しているほか、ティアフォーが自動運転バスの実証を各地で進めている。ただし日本の道路運送車両法では、レベル4自動運転車両の公道走行に国土交通大臣による個別の車両認定(保安基準第56条の特例)が必要で、さらに道路交通法上の特定自動運行の許可を都道府県公安委員会から取得しなければならない。EU域内のように1カ国での認可実績を他国に援用する仕組みがなく、Pony.aiの合弁モデルをそのまま持ち込むことは難しい。
Pony.aiは現時点で日本市場への参入を表明していない。ただし、Uberが日本国内でタクシー配車事業を拡大し、複数のタクシー事業者と提携を進めていることから、将来的にPony.aiの日本参入ルートになり得る。
中国の自動運転技術が欧州の公道で商用サービスとして走り始めた。Pony.aiが掲げる年内3,000台の目標と、ザグレブに続く次の展開都市の発表が控えている。