BYD仰望U8L 4人乗り仕様が北京モーターショーで初公開 – マイバッハGLS対抗の超高級SUV
130万元(約1,900万円)からの6人乗り仕様を超える価格帯——BYDの超高級ブランド「仰望(Yangwang)」が、フラッグシップSUV「U8L」の4人乗りバージョンを2026年北京モーターショーで世界初公開する。
仰望ブランド最上位モデルの全容
仰望の販売部門トップである胡暁清(フー・シャオチン)氏が4月8日、中国SNS「Weibo」で明らかにした。4月24日に開幕する北京モーターショーのメディアデーで披露される。
胡氏によれば、4人乗り仕様はキャビン体験の大幅なアップグレードと、パーソナライズオプションの拡充が特徴になるという。価格は未公表だが、既存の6人乗り仕様(130万元〜)との間に「明確な価格差」があると示唆しており、CarNewsChinaの報道ではメルセデス・マイバッハGLS 600を競合として名指ししている。
中国の超高級車市場(100万元超)は乗用車販売全体の1%未満というニッチな領域だ。しかし2025年の販売ランキングでは、仰望U8Lが1,538台で15位、標準版U8が1,112台で16位にランクイン。トップ20にポルシェやランドローバー、メルセデス・ベンツが並ぶ中、中国ブランドとして唯一食い込んだ。4人乗り仕様の投入は、この実績を踏まえたさらなる上方展開といえる。
第2世代ブレードバッテリーと「5分で70%」の急速充電
2026年モデルのU8Lには、BYDの第2世代ブレードバッテリーと最新の急速充電技術が搭載される。充電性能は5分で70%、約9分で97%まで回復する。マイナス30℃の極寒環境でも充電時間の増加は約3分にとどまるとBYDは説明している。
CLTC基準のEV走行距離は230km、エンジン併用の総合航続距離は1,205km。レンジエクステンダー式の高級SUVとしては中国市場トップクラスの数値だ。
ボディオンフレーム+4モーターが支える特異な走行性能
U8Lはラダーフレーム構造を採用し、一体鋳造アルミフレームで剛性と安全性を高めている。全長5,400mm、ホイールベース3,250mmという堂々たる体躯に、23インチ鍛造ホイールを装着。室内容積は約5.3立方メートルに達し、4人乗り仕様ではリアシートのエグゼクティブ仕様がさらに強化される見込みだ。
4輪独立モーターと油圧ボディ制御システム「DiSus-P Plus」の組み合わせにより、緊急時の水上浮遊やタイヤバースト時の車両安定制御といった、通常のSUVでは考えられない機能を備える。2026年モデルでは新たに3つの安全機能が追加された。
- 自動起動する緊急浮遊機能
- NOA連携によるタイヤバースト時の安定制御・自動停車
- 全シーンプライバシー保護システム
BYDはこれらの機能の一部を、OTAアップデートで既存モデルにも展開するとしている。
マイバッハGLS 600との比較
| 項目 | 仰望U8L(4人乗り) | マイバッハGLS 600 |
|---|---|---|
| 価格帯 | 130万元〜(約1,900万円〜) | 約180万元〜(約2,600万円〜) |
| パワートレイン | PHEV(レンジエクステンダー+4モーター) | 4.0L V8ツインターボ+48Vマイルドハイブリッド |
| 全長 | 5,400mm | 5,210mm |
| ホイールベース | 3,250mm | 3,135mm |
| EV航続距離 | 230km(CLTC) | — |
| 総合航続距離 | 1,205km | 約750km |
| 急速充電 | 5分で70% | — |
ボディサイズではU8Lがマイバッハを上回り、電動化による航続距離と充電性能でも明確な差がある。一方、マイバッハGLS 600はブランドの歴史と世界的な認知度、リセールバリューの安定性で優位に立つ。仰望が実用スペックで差をつけられるかが、超高級市場での評価を左右する。
BYDの垂直統合が超高級車で効く理由
仰望の戦略は、単に高価格帯の車を売ることが目的ではない。BYDにとって仰望は、ブレードバッテリーや4モーター制御、油圧サスペンションといったコア技術を集約し、ブランドの技術力を対外的に証明するショーケースだ。テスラがRoadsterでブランドイメージを構築したように、仰望はBYDグループ全体の格を引き上げる役割を担っている。
BYDがこの市場で持つ構造的な強みは、バッテリーセルから半導体(IGBT/SiC)、電動パワートレインまでを自社グループ内で完結させる垂直統合モデルだ。外部サプライヤーへの依存度が低いため、同等の技術仕様を欧州勢より低いコストで実現できる。130万元という価格設定でマイバッハに挑めるのは、このコスト構造があるからこそだ。
中国の超高級EV市場では、NIOがフラッグシップセダン「ET9」(約80万元)で独自のスカイライドサスペンションを武器に参入し、Zeekrも009グランドで高級MPV市場を攻めている。ただし、仰望のように100万元超の価格帯に正面から踏み込んだ中国ブランドは他にない。4人乗りU8Lの投入は、この無競争地帯をさらに固める動きだ。
日本の読者にとっての位置づけ
BYDジャパンは現在、ATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALIONなど量販価格帯のEVを展開しているが、仰望ブランドの日本導入については現時点で公式な発表はない。右ハンドル仕様の有無も不明だ。
ただし、日本で販売されている同価格帯の超高級SUV——レクサスLX(約1,300万円〜)、BMW X7(約1,200万円〜)、メルセデス・マイバッハGLS(約2,800万円〜)——と比較すると、U8Lの技術的な差別化ポイントは明確だ。4輪独立モーター、水上浮遊機能、5分で70%の急速充電といったスペックは、既存の内燃機関ベースの超高級SUVにはない。仮に日本市場に投入された場合、価格よりも技術面でのインパクトが大きいだろう。
北京モーターショーでは4人乗りU8Lに加え、スーパーカー「U9」やセダン「U7」も展示される予定。4月24〜25日がメディアデー、一般公開は4月28日〜5月3日。