Lynk & Co 10+が900V充電で10→97%を8分42秒 – BYD・NIOとの充電速度比較
10%から97%まで8分42秒——Geely傘下のLynk & Coが4月7日に発表した新型EV「Lynk & Co 10+」の充電性能は、中国EV市場の充電速度競争が新たな段階に入ったことを示している。
Lynk & Co 10+/10の概要
Lynk & Co 10+と10は、同ブランド初の中大型ピュアEVスポーツセダンだ。従来「Z10」の開発コードで知られていたモデルで、ボディサイズは全長5,050mm×全幅1,966mm×全高1,468mm、ホイールベース3,005mm。Lynk & Coの「The Next Day」デザイン言語を採用し、10+にはカーボンファイバー製可変リアウイング、21インチ鍛造ホイール、ブレンボ製ドリルドブレーキディスクを装備する。
パワートレインは、10+がデュアルモーターAWDで最高出力680kW(912hp)。0-100km/h加速3.2秒、80-120km/h加速2.1秒を実現した。駆動系には航空宇宙グレードのマグネシウム合金を採用し、重量わずか75kgでCLTC条件下の効率93.7%を達成している。アジアンリッジトラックでは1分40秒14のラップタイムを記録し、ポルシェ・タイカンGTの記録を上回った。
900Vアーキテクチャと5.5C充電の実力
Lynk & Co 10には「Energeeゴールデンブリックバッテリー」と名付けられた急速充電システムが搭載される。800V/77kWhと900V/95kWhの2種類のバッテリーが用意され、いずれも三元系リチウムイオン電池を採用している。
800V・77kWh仕様は5.5Cの充電レートに対応し、10→80%を10分30秒で充電できる。上位の900V・95kWh仕様はさらに速く、V4超急速充電器を使えば毎秒2kmの航続距離を回復。10→70%が4分22秒、10→97%が8分42秒という数値を記録した。CLTC航続距離は最大816km。
ガソリン車の給油時間に匹敵する充電速度を、97%というほぼ満充電の領域まで維持している点が従来の急速充電とは一線を画す。リチウムイオン電池は通常、80%を超えると充電速度が急激に低下するが、Lynk & Coはセル設計と電圧アーキテクチャの両面でこの課題に取り組んだ形だ。
従来のEVは400V系が主流だったが、2024年以降、中国メーカーを中心に800Vへの移行が進んだ。電圧を倍にすれば同じ電力でも電流を半分にでき、ケーブルの細径化や発熱抑制といった副次的メリットも生まれる。Lynk & Co 10+の900Vはさらにその先を行くが、電圧が高いほどバッテリーセルの直列数が増え、セル間のバラつき管理やBMS(バッテリーマネジメントシステム)の制御難度は上がる。Geelyグループ内でZeekrが800VプラットフォームSEA(Sustainable Experience Architecture)で蓄積してきた量産ノウハウが技術基盤になっているとみられる。実際、Zeekr 007も同じ5C充電対応の麒麟電池を搭載しており、グループ内でのバッテリー技術共有が進んでいることがうかがえる。
BYD・NIO・XPENGとの充電性能比較
中国EVメーカー各社はここ1〜2年で急速充電技術を急速に進化させてきた。主要モデルの充電スペックを並べてみる。
| モデル | 電圧 | 充電レート | 10→80% | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| Lynk & Co 10(800V) | 800V | 5.5C | 10分30秒 | 77kWh・三元系 |
| Lynk & Co 10(900V) | 900V | — | — | 10→97%が8分42秒・95kWh・三元系 |
| BYD(第2世代ブレードバッテリー) | 800V | 5C級 | 約10分 | 10→97%を9分・LFP(リン酸鉄) |
| Zeekr 007 | 800V | 5C | 約10分30秒 | 麒麟電池ベース・三元系 |
| XPENG G9 | 800V | 4C | 約15分 | S4超充ネットワーク展開中 |
| NIO ET7 | 400V | — | — | バッテリー交換(約3分) |
BYDは自社イベントで「10→97%を9分」という充電性能をアピールしており、Lynk & Co 10+の8分42秒はこれをわずかに上回る。ただし、テスト条件(気温・充電器出力・バッテリー容量)が統一されていないため、単純な数字の比較には注意が必要だ。技術的に興味深いのは、BYDがLFP(リン酸鉄リチウム)ベースの第2世代ブレードバッテリーで5C級の充電速度を実現しているのに対し、Lynk & Coは三元系リチウムイオンで900Vという高電圧アーキテクチャを組み合わせるアプローチを取っている点だ。LFPはコストと安全性で優位性があり、三元系はエネルギー密度で勝る。同じ「10分でほぼ満充電」でも、到達経路がまったく異なる。
NIOはバッテリー交換方式で約3分という「充電時間ゼロ」に近いアプローチを取っており、充電速度競争とは異なる土俵にいる。一方、XPENGは自社の超急速充電ネットワーク「S4」を拡充しながら4C充電対応モデルを展開中で、車両単体のスペックよりもインフラとセットでの体験を重視する戦略だ。
充電インフラと日本での現実
超急速充電の恩恵を受けるには充電インフラ側の対応が不可欠だ。V4クラスの超高出力充電器はまだ設置数が限られており、実際の利用シーンでカタログ値通りの充電速度を体験できるかは別問題となる。充電器の整備状況が、この技術競争のボトルネックになりつつある。
日本国内に目を向けると、現在主流のCHAdeMO規格は最大出力150kW程度が一般的で、900V・5C級の充電性能をフルに発揮できる環境にはない。仮にLynk & Coが日本市場に参入する場合、NACS(北米充電規格)やCCS2への対応状況も焦点になる。Geelyグループではボルボが日本で販売実績を持つが、Lynk & Co自体の日本展開は現時点で未発表だ。価格帯(約420万〜480万円)で見ると、日産アリア(約660万円〜)やテスラModel 3(約530万円〜)より大幅に安く、仮に日本導入が実現すれば価格面でのインパクトは大きい。ただし、中国からの輸入EVには追加関税のリスクもあり、最終的な価格は不透明だ。
価格とポジショニング
Lynk & Co 10の予約価格は20万〜23万元(約420万〜480万円)。直接の競合はXiaomi SU7とされる。912hpの10+は価格未公表だが、ポルシェ・タイカンGTのラップタイムを破ったトラック性能を考えると、中国市場のハイパフォーマンスEVセダンとして強い訴求力を持つ。
Geely傘下にはZeekrやPolestarなど複数のEVブランドが存在し、ブランド間のカニバリゼーション(共食い)をどう管理するかは今後の課題だ。Lynk & Coは「10+」という新たなパフォーマンスグレード体系を導入することで、よりスポーティな方向への差別化を図っている。
900V充電技術の量産車への投入は、充電速度競争が「10分で80%」から「10分でほぼ満充電」へと移行しつつあることを意味する。正式な発売時期と最終価格は未発表。