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BYDのモノレールがサンパウロで開業——SkyRail技術で都市交通に参入NEW

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幅わずか800mmのコンクリートビームの上を、無人の列車が滑るように走る。2025年3月31日、ブラジル・サンパウロでモノレール17号線(ゴールドライン)が開業した。採用されたのはBYDのSkyRail技術。EVメーカーとして知られるBYDだが、この路線は同社の事業領域がクルマの枠をとうに超えていることを示している。

10年越しの開業——SkyRailの構造と特性

17号線は当初2021年の開業を予定していたが、土木工事の遅延により約10年遅れでの運行開始となった。サンパウロ州政府は「ブラジル第2の空港を結び、観光と日常の移動を改善する近代的な交通手段だ」と開業の意義を強調している。

SkyRailは「中容量交通システム」に分類される。狭いコンクリート製ガイドビームの上を車両が走行するため、トンネル掘削も広い軌道用地も必要ない。最小曲線半径は約45m、最大勾配は約10%に対応し、既存の密集市街地に沿った柔軟な路線設計が可能になる。この特性が、従来の鉄道では困難だったコンゴニャス空港と既存路線網の接続を実現した。

BYDはすでに中国国内でSkyRailの運用実績を積んでいる。深圳や重慶など複数都市で商業運行中の路線があり、サンパウロは海外での本格展開の第一歩という位置づけだ。中国国内で走行データと保守ノウハウを蓄積した上での海外案件という点で、車両を納入して終わりではない長期的な関与が前提の事業モデルといえる。

EV技術の転用——LFP電池・回生ブレーキ・完全無人運転

SkyRailの動力系統には、BYDがEVで培った技術が直接応用されている。5両編成の各列車はガイドウェイ内蔵のレールから750V直流電力を受電して走行する。加えて、BYD SealやBYD Sharkに搭載されるものと同じLFP(リン酸鉄リチウムイオン)化学組成の電池を車載している。

ただし、この電池は通常走行の推進用ではない。停電時に数km走行して次の駅まで到達するための非常用電源だ。乗客が高架上で立ち往生するリスクを排除する設計で、公共交通としての信頼性を担保する。回生ブレーキも装備しており、年間数万トンのCO₂削減効果が見込まれている。

運行はGoA4——完全無人自動運転で行われる。運転士も車掌も乗車しない。列車制御には通信ベースの移動閉塞方式(CBTC)を採用し、需要に応じた柔軟な増便・減便を人員配置に縛られず実現できる。牽引装置、電池状態、タイヤの状況はソフトウェアで常時監視される。

日本にも無人運転の新交通システムは多い。ゆりかもめや日暮里・舎人ライナーはAGT(自動案内軌条式旅客輸送システム)方式で、ゴムタイヤとコンクリート軌道を使う点ではSkyRailと共通する部分がある。ただしSkyRailはガイドビーム上面を走行する跨座式に近い構造で、支柱の設置面積をさらに小さくできるとBYDは主張している。用地制約の厳しい新興国都市部では、この差が受注競争の決め手になりうる。

インフラ輸出の新たな競争軸

BYDはEV販売台数で世界トップクラスの実績を持つが、事業ポートフォリオはクルマだけにとどまらない。電気バスでは世界70カ国以上に納入実績があり、SkyRailで都市鉄道の領域にも本格参入した。電池製造から車両設計、制御ソフトウェアまでを垂直統合で手がける体制が、この多角化を支えている。

都市鉄道の海外展開では、中国のCRRC(中国中車)がすでに世界最大の鉄道車両メーカーとして各国で存在感を示している。BYDはCRRCとは異なり、重量鉄道ではなく中容量システムに特化する戦略をとっている。競合するのはむしろ、東南アジアや中東で新交通システムの受注を狙う日立レールや三菱重工といった日本勢だ。価格競争力に加え、電池と制御系を自社で完結できるBYDの垂直統合モデルは、これらの企業にとって無視できない存在になりつつある。

BYDアメリカズCEOのステラ・リ氏は開業に際し、地元大学との研究開発センター設立や公共交通の電動化推進を表明した。単なる車両納入ではなく、現地での技術基盤構築まで視野に入れた動きだ。

17号線は大量輸送を担う地下鉄の代替ではない。重量鉄道が非現実的でバス路線では輸送力が不足する、高密度既成市街地向けの交通インフラだ。長年停滞していたプロジェクトを稼働させた実行力は証明された。バイーア州やブラジル国内の他都市でも導入の議論が進んでおり、この方式がどこまで広がるかが、SkyRailの長期的な評価を決めることになる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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