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LFPで15C充電 – サンウォダ新型バッテリーが示す超急速充電の現在地NEW

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バッテリー技術: LFPで15C充電 – サンウォダ新型バッテリーが示す超急速充電の現在地
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5分半でSOC 5%から75%——。中国バッテリーメーカーのサンウォダ(欣旺達)が4月16日に発表した「星馳スーパーチャージバッテリー2.0」の数字は、EV充電の常識を塗り替えうるものだ。LFP(リン酸鉄リチウム)セルで最大充電レート15Cを実現し、満充電近く(SOC 95%)までも9分で到達する。

現在、急速充電の「速い」基準はおおむね4C〜6Cだ。CATLの神行バッテリーが4C、BYDの第2世代ブレードバッテリーが6C対応をうたう。サンウォダは2019年に急速充電技術の開発を始め、2022年の4C、2024年の6Cを経て、今回一気に15Cへ到達した。しかもこれがNMC(三元系)ではなく、安全性とコストに優れるLFPで達成された点が重要だ。

メーカー バッテリー名 化学系 C-rate SOC 5%→75%
サンウォダ 星馳2.0 LFP 15C 約5.5分
BYD 第2世代ブレード LFP 6C
CATL 神行バッテリー LFP 4C

844.8Vアーキテクチャの意味

星馳2.0のパック仕様を見ると、264個の角形セルで構成され、容量98.8kWh超、電圧844.8V、最大電流1,800Aとなっている。電圧×電流で計算すると、理論上の最大充電電力は約1,520kW。現行の急速充電器で最も高出力な部類であるテスラのスーパーチャージャーV4が最大350kW程度であることを考えると、インフラ側が完全に追いついていない。

日本で主流のCHAdeMO規格は、最新のCHAdeMO 3.0(ChaoJiとの共同規格)で最大900kW対応を仕様上うたうが、実際に設置されている充電器の大半は50〜90kW、多くても150kW止まりだ。仮にサンウォダの15Cバッテリーを搭載したEVが日本市場に投入されても、その性能を引き出せる充電環境は当面存在しない。

「充電時間=給油時間」は本当に近いのか

ガソリン車の給油時間は、セルフスタンドでおおむね3〜5分。サンウォダが示した「SOC 5%→75%で5.5分」は、実用的な充電範囲ではほぼガソリン給油と同等の時間感覚に入る。ただし前提条件がある。充電器側が1,500kW級の出力を安定供給できること、受電側の冷却システムが1,800Aの大電流に耐えること、そしてこれらを量産車のコストで実装できること。どれも簡単ではない。

サンウォダはサイクル寿命1,500回超、保証期間中の超急速充電使用制限なしを明言している。加えて、初年度劣化ゼロ・10年で10%劣化という長寿命版も発表した。急速充電はバッテリー劣化を早めるという従来の懸念に対し、正面から回答した格好だ。

商用車とハイブリッドへの展開

乗用車だけでなく、サンウォダは商用車向けに最大充電出力1.44MWのデュアルガン充電システムも発表した。大型トラックや路線バスは停車時間が限られるため、メガワット級充電への需要は高い。欧州ではMCS(Megawatt Charging System)の標準化が進んでおり、中国メーカーが先行して対応製品を投入し始めている。

ハイブリッド車向けには46mm大型円筒セルを採用した3〜7kWhのバッテリーパックを展示。5kWhパックで出力150kW、EV走行距離15km超を実現するという。10%→80%を10分で充電できるため、PHEVの日常的なEV走行比率を高める狙いがある。

ナトリウムイオンとAI、広がる開発の幅

技術発表会ではナトリウムイオン電池の進捗も示された。室温で2万回超、高温で1万回超のサイクル寿命は、リチウムイオンを大幅に上回る耐久性だ。ただしエネルギー密度の低さから、サンウォダ自身も高級EVには不向きとし、低電圧車両やエントリーモデル向けと明確に位置づけている。用途を絞る判断は現実的だろう。

「AI+バッテリー」戦略も打ち出した。研究開発から製造、ライフサイクル管理までデータ駆動型のAI統合を進める方針だ。セルの品質管理や劣化予測にAIを活用する動きはCATLやLGエナジーソリューションでも同様に実装段階に入っており、サンウォダもこの流れに乗った形だ。

サンウォダは東風汽車や吉利汽車など中国主要OEMにバッテリーを供給しており、2026年3月時点のEVバッテリー搭載量は1.4GWh、市場シェア2.5%。CATLやBYDには遠く及ばないが、15CのLFPという尖った技術で存在感を示した。充電インフラ側では、CHAdeMO 3.0やMCSなどメガワット級規格の整備が2027〜2028年にかけて本格化する見通しで、バッテリー技術が先行しインフラが後を追う構図が当面続くことになる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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