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BYD第2世代ブレードバッテリー – 1,000km航続・5分充電の実力を初代と徹底比較NEW

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BYD第2世代ブレードバッテリー – 1,000km航続・5分充電の実力を初代と徹底比較

航続1,000km、5分で400km分を充電——。BYDが北京モーターショー2026で披露した第2世代ブレードバッテリー(Blade Battery 2.0)の数値は、初代の常識を大きく塗り替えるものだった。新型フラッグシップセダン「Seal 08」と大型SUV「大唐(Datang)」に搭載され、両車ともに予約が殺到している。

この記事では、第2世代ブレードバッテリーの技術的な進化ポイントを初代と比較しながら整理し、日本市場に投入された場合のインパクトを考える。

初代ブレードバッテリーの何が変わったのか

2020年に発表された初代ブレードバッテリーは、リン酸鉄リチウム(LFP)セルを刀のように薄く長い形状にし、CTP(Cell to Pack)構造でパック内の体積効率を高めた設計だった。釘刺し試験をクリアする安全性が最大の訴求点で、エネルギー密度は140〜160Wh/kg程度。急速充電性能は30分で30%から80%というレベルにとどまっていた。

第2世代では、BYDが「初代の約2倍の性能」と表現するほどの飛躍がある。Electrekの報道によれば、Seal 08はCLTC基準で1,000km超の航続距離を達成。最も衝撃的なのは充電速度で、メガワット級の超急速充電に対応し、5分間で400km分の電力を補充できる。10%から70%への充電もわずか5分。さらに-30℃の極寒環境でも20%から97%まで12分で完了するという。

項目 初代ブレードバッテリー 第2世代ブレードバッテリー
セル化学 LFP LFP(改良型)
航続距離(代表車種・CLTC) 約600km(Han EV) 1,000km超(Seal 08)
急速充電(10→70%) 約30分 約5分
低温充電(-30℃) 大幅に低下 20→97%で12分
プラットフォーム電圧 400V 800V

LFPは安全性とコストに優れる一方、低温環境での性能劣化が弱点とされてきた。第2世代が-30℃でも実用的な充電速度を維持できるなら、寒冷地ユーザーにとって大きな安心材料になる。北海道や東北の冬を考えると、日本での評価を左右するポイントだろう。

Seal 08と大唐——2台のフラッグシップに同時搭載

BYDは第2世代バッテリーの投入に合わせ、2台のフラッグシップを同時に発表した。

Seal 08は全長5,150mm、ホイールベース3,030mmのフルサイズセダン。デュアルモーターAWD仕様で合計510kW(684馬力)を発揮する。後輪操舵、デュアルチャンバーエアサスペンション「DiSus-A」、ルーフ搭載LiDARによる自動運転システム「God’s Eye B(DiPilot 300)」と、技術の全部載せといった構成だ。価格は30万〜35万人民元(約630万〜740万円)と見込まれている。

一方の大唐(Datang)は全長5.3m超の3列シートSUV。7人乗りで、ヒョンデIONIQ 9やキアEV9より一回り大きい。こちらもBlade Battery 2.0を搭載し、CLTC航続950km、5分フラッシュ充電に対応する。デュアルモーター仕様は585kW(784馬力)と、Seal 08をも上回る。予約価格25万〜32万人民元(約525万〜670万円)で、発売後24時間で3万台以上の受注を記録した。

注目すべき点は、PHEVモデルも用意されていること。大唐にはDM-i(1.5Tエンジン+300kWモーター)とDM-p(デュアルモーター400kW)の2種類のプラグインハイブリッドが設定されている。BEV一本ではなく、市場の需要に応じて柔軟にパワートレインを展開する戦略が見える。

メルセデスEQSとの比較で見える立ち位置

Seal 08の直接的な競合はメルセデス・ベンツEQSだ。EQS 450+はWLTP基準で航続926km(118kWhバッテリー)を誇るが、Seal 08はCLTC基準とはいえ1,000km超を主張する。CLTC値はWLTPより1〜2割高く出る傾向があるため、実質的には同等か若干上回る水準と見てよい。

パワートレインでは、Seal 08のAWD仕様684馬力がEQS 580 4Maticの536馬力を明確に上回る。価格差はさらに鮮明で、EQS 580が13万ドル(約2,000万円)以上であるのに対し、Seal 08は630万〜740万円程度。約3分の1の価格で同等以上のスペックを提示している計算になる。

もちろん、メルセデスのブランド力や内装の質感、ディーラーネットワークの差は大きい。だが純粋な技術指標で見れば、LFPバッテリーでこの航続距離と充電速度を実現したことは、コスト構造で根本的な優位性があることを意味する。

日本のBYDラインナップへの波及

現在、BYD Auto Japanが販売する5車種(ATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7、RACCO)はいずれも初代ブレードバッテリーを搭載している。航続距離は400〜555km(WLTC)で、国内の日常使いには十分だが、「充電に時間がかかる」という心理的ハードルは依然として残る。

第2世代バッテリーが日本投入車種に展開されれば、状況は一変する可能性がある。5分充電が実現すれば、ガソリン車の給油とほぼ同じ感覚でEVを運用できる。ただし、これにはチャデモ規格との互換性や、国内の充電インフラが800V・メガワット級出力に対応する必要がある。現状の日本の急速充電器は最大150kW程度が主流であり、バッテリー側の性能をフルに引き出すにはインフラ整備が不可欠だ。

Seal 08や大唐の日本導入は現時点で未発表。ただし、BYDは欧州市場への積極進出を続けており、日本でもSEALION 7に続く大型モデルの追加は自然な流れといえる。第2世代バッテリーの日本展開時期が、BYDの国内シェア拡大の次の転換点になるだろう。

なお、競合であるCATLも6分でフル充電可能なLFPバッテリーを発表しており、超急速充電は中国バッテリーメーカー間の新たな主戦場となっている。トヨタや日産が2027〜28年に全固体電池の実用化を目指す中、LFPの急速な進化がその計画にどう影響するかも注目点だ。

出典

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BLADE NOTE編集部
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