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全固体電池の量産競争が加速 – 中国・日本・韓国勢の技術路線と搭載時期を整理するNEW

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全固体電池の量産競争が加速 – 中国・日本・韓国勢の技術路線と搭載時期を整理する

半固体電池の量産が始まった中国で、次の焦点は全固体電池へと移りつつある。中信建投(CITIC Securities)が2026年4月に公開したレポートによると、全固体電池のパイロットライン入札が間近に迫っており、リチウム電池設備セクターへの追い風が見込まれるという。

電池技術は現在、液系リチウムイオン(LFP・NMC)から半固体、そして全固体へと段階的に移行する過渡期にある。各社が描くロードマップには温度差があり、量産時期の見通しも1〜3年単位でばらつく。

液系から固体へ——移行の3ステップ

現行の主流であるLFP電池は、セル単価が約0.38元/Wh(2026年前半時点)まで下がった。ただし中信建投の試算では、2026年後半に炭酸リチウム価格が20万元/トン、銅価格が11万元/トンへ上昇した場合、LFPセルの総コストは0.42元/Whに跳ね上がる。原材料リスクが依然として大きい。

半固体電池はこの液系と全固体の中間に位置する。電解質の一部を固体化することで安全性とエネルギー密度を向上させつつ、既存の製造設備を流用できる利点がある。中国ではNIO傘下のWeLion(衛藍新能源)やGanfeng Lithium(贛鋒鋰業)が半固体セルの少量搭載を開始済みだ。

全固体電池は電解質をすべて固体に置き換える。理論上のエネルギー密度は400Wh/kg以上が視野に入り、熱暴走リスクも大幅に低減する。ただし現時点で最も深刻なのは製造歩留まりの低さだ。固体電解質と電極の界面で微細なクラックが発生しやすく、セルの不良率が液系の数倍に達するケースも報告されている。コスト面でも、硫化物系電解質の原料である硫化リチウムの精製コストが高く、量産価格はLFPの3〜5倍程度と試算される。

各社の技術路線と量産スケジュール

全固体電池の開発競争は中国勢・日本勢・韓国勢の三つ巴になっている。以下に主要企業のアプローチをまとめた。

企業 技術路線 現状フェーズ 量産目標時期
CATL(寧徳時代) 硫化物系全固体 パイロットライン構築中 2027〜2028年
BYD 硫化物系全固体 研究開発・特許出願段階 2028年以降
奇瑞(Chery) 半固体→全固体段階移行 半固体搭載車を試験投入 2027年(半固体量産)
WeLion(衛藍新能源) 酸化物系半固体 NIO ET7に少量搭載済み 半固体量産中/全固体は2028年目標
トヨタ 硫化物系全固体 パイロット生産ライン稼働 2027〜2028年
日産 硫化物系全固体 パイロット工場建設中 2028年量産開始目標
Samsung SDI 硫化物系全固体 試作ライン運用中 2027年試験搭載

2つの36Krソースは異なる角度からこの動きを報じている。一方は中信建投の設備投資見通しに焦点を当て、パイロットライン入札による設備メーカーへの恩恵を強調する。もう一方は全固体電池の産業化加速という大きな文脈で、機関投資家が注目する高成長銘柄を紹介している。投資サイドの期待と技術サイドの進捗には温度差がある点は押さえておきたい。

CATLは硫化物系に注力しており、中信建投のレポートが指摘するように、パイロットラインの入札が目前に迫っている。市場では設備投資の本格化が2026年後半から始まるとの見方が強い。

BYDは全固体に関する特許を積極的に出願しているものの、公式には量産時期を明言していない。現行のBlade Battery(LFP)の改良と、e-Platform 3.0の800Vアーキテクチャによる急速充電対応を優先する姿勢が見える。全固体への移行はCATLより慎重だ。

日本勢——トヨタと日産の具体的な動き

トヨタは全固体電池の特許出願数で世界トップクラスを維持しており、2027〜2028年のパイロット量産を公言してきた。搭載候補として報道されているのは次期LEXUSのEV専用モデルで、航続距離1,000km超を目標値に掲げる。ただしトヨタ自身も「量産段階ではまずハイブリッド車向けの小型セルから始める可能性がある」と示唆しており、フルEVへの本格搭載は2030年前後にずれ込む公算が大きい。

日産は横浜の全固体電池パイロット工場を2024年に稼働させ、現在は試作セルの評価フェーズにある。2028年の量産開始を掲げ、次世代EVへの搭載を計画している。日産の場合、充電時間を現行の約3分の1に短縮できる点を訴求ポイントにしており、「15分で80%充電」が実現すれば、日本の高速道路SAでの充電体験が大きく変わる。日本のEVユーザーにとっては、この充電時間の短縮こそが全固体電池の最も実感しやすいメリットになるだろう。

Samsung SDIは2027年の試験搭載を目指し、BMWとの協業で車載グレードの硫化物系セル開発を進めている。

ナトリウムイオン電池という「別ルート」

全固体だけが次世代電池ではない。同じ中信建投のレポートは、ナトリウムイオン電池が2027年に価格競争力を持つ「平価放量」の段階に入ると予測している。現在のトップメーカーのナトリウムイオンセルコストは約0.47元/Whだが、同レポートによると、2026年末にはLFPと同等コストに到達する見通しだ。

CATLの公式発表によると、同社の第2世代ナトリウムイオンセルはエネルギー密度200Wh/kgを達成している。低温環境での性能優位もあり、小型車や商用車、定置型蓄電システムから普及が進むとみられる。全固体が「高性能・長航続」の上位市場を狙うのに対し、ナトリウムイオンは「低コスト・資源リスク低減」の実用市場を担う構図だ。

日本勢ではパナソニックが全固体電池の研究と並行してナトリウムイオン電池の基礎研究を進めており、村田製作所も小型電池での酸化物系固体電解質の知見を蓄積している。ただし両社とも車載向け全固体電池の量産計画は公表しておらず、中国勢や韓国勢と比べるとスケール面で後れを取っている。

量産の壁——コストと歩留まり

全固体電池の最大の課題は製造コストだ。固体電解質の合成、電極との接合、ドライプロセスの確立など、量産技術の成熟にはまだ時間がかかる。パイロットラインで数百MWh規模の生産が可能になっても、GWh級の量産ラインへスケールアップするにはさらに2〜3年を要するのが業界の共通認識だ。中国勢はパイロットラインの立ち上げスピードで先行するものの、歩留まり改善とコスト削減の具体的な数値目標を公開している企業はまだない。

現時点でCATLのパイロットライン入札が最も具体的な動きであり、その結果が2026年後半に出揃えば、各社の量産スケジュールの現実味がより明確になる。中信建投はこの入札を「リチウム電池設備セクターの春季行情(春の相場)」と位置づけており、設備メーカー株への資金流入も始まっている。全固体電池が消費者の手に届くにはまだ数年かかるが、サプライチェーンの動きはすでに加速している。

出典

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BLADE NOTE編集部
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