ボッシュ第3世代SiCチップ – EV航続距離と充電性能を変える半導体進化NEW
従来比20%の性能向上と大幅な小型化——ボッシュが第3世代SiC(炭化ケイ素)半導体の量産サンプル供給を開始した。電気自動車のパワーエレクトロニクスを根幹から支えるこの部品の世代交代は、航続距離や充電速度に直結する。
SiC半導体がEVの効率を左右する理由
EVのインバーターやオンボードチャージャーには、バッテリーの直流電力とモーターの交流電力を変換するパワー半導体が不可欠だ。従来のシリコン(Si)製IGBTに対し、SiCはバンドギャップが約3倍広く、高電圧・高温環境でのスイッチング損失が小さい。結果として電力変換時のエネルギーロスが減り、同じバッテリー容量でも航続距離を数%伸ばせる。
800Vアーキテクチャを採用する車両では、この恩恵がさらに顕著になる。高電圧プラットフォームではスイッチング周波数を上げやすく、SiCデバイスの低損失特性が充電速度の向上にも寄与する。BYDやXpeng、Zeekrなど中国メーカーが800V対応を積極的に進める背景には、SiCの普及がある。
ボッシュ第3世代で何が変わるのか
ボッシュによると、第3世代SiCチップは第2世代比で20%の性能向上を実現した。具体的にはオン抵抗の低減とスイッチング損失の削減が進み、インバーター全体の効率がさらに高まる。競合のインフィニオンは2024年にCoolSiC第2世代(MOSFET)を量産展開しており、STマイクロエレクトロニクスも第4世代SiC MOSFETを発表済みだ。各社が世代更新を急ぐなか、ボッシュは後発ながら自社ウエハ製造という垂直統合で差別化を図る。
もう一つのポイントは小型化だ。チップ面積の縮小により、200mmウエハ1枚あたりの取れ数が増える。SiCウエハは製造コストがSiの数倍にのぼるため、1チップあたりのコストを下げるにはダイサイズの縮小が最も効果的なアプローチとなる。ボッシュは独ロイトリンゲンの自社工場で200mmウエハラインを稼働させており、内製による安定供給とコスト管理を強みとしている。
中国EV勢の自社開発が加速する構図
パワー半導体の重要性が増すなか、中国メーカーは外部調達だけに頼らない動きを見せている。BYDは傘下のBYD Semiconductorを通じてSiC MOSFETの自社開発・量産を進めてきた。2023年には自社製SiCモジュールを「漢」や「海豹」など主力BEVのインバーターに搭載し、垂直統合の強みを発揮している。
NIOもSiCの内製化に注力する。2024年には自社設計のSiCパワーモジュールを発表し、ET9への搭載を予定。バッテリー交換方式と800V対応を組み合わせる同社にとって、パワーエレクトロニクスの効率は航続距離の公称値を左右する重要な要素だ。
Xpengも独自のSiCインバーターを開発しており、G9以降のモデルで800V×SiCの組み合わせを標準化しつつある。中国勢のSiC自社開発には、欧米サプライヤーへの依存度を下げる地政学的な意図も透ける。
サプライチェーンの中でのボッシュと日本勢
中国メーカーの内製化が進む一方で、全ての自動車メーカーが半導体の自社開発に踏み切れるわけではない。ボッシュ、インフィニオン、STマイクロエレクトロニクスといったTier1半導体サプライヤーの役割は依然として大きい。特にボッシュはSiCウエハからチップ、モジュールまでの一貫製造体制を持つ数少ない企業であり、第3世代の投入で技術的リードを維持する構えだ。
日本の自動車メーカーにとっても、SiCの世代進化は無関係ではない。トヨタはデンソーと共同でSiCインバーターの開発を進め、次世代BEVへの搭載を計画している。ホンダもSiC採用を公表済みだ。ボッシュの第3世代チップが市場に出回ることで、調達先の選択肢が広がり、コスト競争力のある800V対応車両の開発が加速する可能性がある。
ボッシュの第3世代SiCチップは2025年中にサンプル供給が本格化し、量産車への搭載は2026年以降になる見通しだ。200mmウエハでの量産によるコスト低減効果が実際にどの程度チップ単価に反映されるかが、今後の採用拡大を左右する。
出典
- ボッシュ、第3世代SiC半導体のサンプル供給を開始(Response)
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