北京モーターショー2026 注目コンセプト5選 — 全固体電池・L4自動運転・空間価値の3軸で読む
北京モーターショー2026の会場を歩くと、コンセプトカーが示す方向性は3つの軸に収斂していた。電池・充電技術の世代交代、L4自動運転の事業化、そして性能数値から空間・体験への価値転換だ。出展5台を、この3軸に沿って見ていく。
軸1:電池と充電の次世代化 — 奇瑞 iCar RoBox
奇瑞(Chery)が発表したiCar RoBoxは、「ROBOT」と「BOX」を掛け合わせた車名のとおり、ロボティクスと実用性の融合を狙ったコンセプトだ。技術の核はi-Swiftプラットフォーム3.0。高電圧アーキテクチャ上でリチウムイオン電池と全固体電池の両方に対応し、メガワット級の充電能力を備える。
駆動系にはアキシャルフラックスモーターを採用し、ベクトルトルク配分による四輪制御を実現。L3〜L4レベルの自動運転も視野に入れる。全固体電池の量産時期は明示されていないが、プラットフォーム段階で対応を織り込んでいる点は、2028年前後の実用化を見据えた設計判断だろう。CATLが2027年の全固体電池量産を公言し、トヨタも2027〜2028年の搭載開始を目指すなか、奇瑞はプラットフォーム側の受け入れ準備を先に整えた格好だ。日本勢との全固体電池競争は、セル開発だけでなく車両側の対応速度も焦点になる。
軸2:L4自動運転の事業化 — 吉利ロボタクシー&アバター Vision Xpectra
吉利(Geely)が公開した中国初のネイティブロボタクシー試作車は、ステアリングホイールもペダルも持たない。既存車両の改造ではなく、L4レベルの自動運転を前提にゼロから設計された専用プラットフォームを採用している。
搭載するWorld Action Modelは、知覚と経路計画を統合処理するAIモデルだ。ライドシェア子会社の曹操出行(Caocao Mobility)での商用展開を想定し、量産版は2027年を予定する。自動運転タクシーでは百度(Baidu)のApollo Goが武漢・北京など十数都市で先行し、Pony.aiも広州でサービスを拡大中だが、吉利は車両製造から運行プラットフォームまで自社グループ内で完結させる垂直統合型のアプローチを取る。
同時に出展された第2世代Galaxy Lightコンセプトも、この文脈で見るべきモデルだ。2160ラインのデジタルLiDARと3000TOPS超の演算プラットフォームを積み、高精度地図なしで都市内のナビゲーションを行う。ロボタクシーで培った自動運転技術を量販車に降ろす道筋を、具体的なハードウェア構成で示した。
ファーウェイとCHANGAN(長安汽車)の合弁ブランド、アバター(Avatr)のVision Xpectraは全長約5.8mの大型セダン。ピラーレスコーチドアにフルレングスガラスルーフという外装だが、技術面の本丸はパワートレインとセンシングにある。効率最大99.1%という炭化ケイ素(SiC)モーターを搭載し、フロントバンパーにはLiDARセンサーを統合。L4レベルのハードウェアを備える。SiCインバーターはテスラModel 3が先鞭をつけ、現在はヒョンデやBMWなど高級EV全般に広がりつつあるが、モーター効率99%超を謳うのは現時点で突出した数値だ。量産時にどこまで維持できるかは未知数だが、パワーエレクトロニクスの到達点を示すスペックではあった。
軸3:性能競争から体験価値へ — BYD Ocean-V&シャオミ Vision GT
BYDがOceanシリーズの延長線上で公開したOcean-Vコンセプトは、パワートレインのスペックよりも室内空間レイアウトを前面に押し出した。多目的車両としての使い勝手を重視し、乗員の居住性と荷室の柔軟性を両立させる設計思想が読み取れる。
BYDは近年、ブレードバッテリーやe-Platform 3.0といったハードウェア面での訴求を続けてきた。日本でもATTO 3、ドルフィン、シールと展開し、価格と航続距離で勝負してきたが、Ocean-Vでは「車内でどう過ごすか」というソフト面に軸足を移した。航続距離や加速性能だけでは訴求力が持たない段階に入ったということだ。日本市場でBYDが次にどんなモデルを投入するかを占ううえで、この方向転換は見逃せない。
シャオミ(Xiaomi)のVision GTコンセプトは、空気抵抗係数Cd値0.29、ダウンフォース約1.2トンという数値を掲げた。量産予定はないショーモデルだが、SU7で自動車事業に参入したシャオミが空力設計の知見をどこまで蓄積しているかを測る指標になる。ダウンフォース1.2トンはスーパーカー領域の数値だ。量産車への直接転用は難しいにせよ、シャオミが「家電メーカーの片手間」ではなく本格的な車両開発体制を構築しつつあることは確かだろう。
3つの軸が交差する先
| 潮流 | 該当モデル | キーワード |
|---|---|---|
| 電池・充電の次世代化 | iCar RoBox | 全固体電池、メガワット充電 |
| 自動運転のL4実装 | 吉利ロボタクシー、Vision Xpectra | 専用PF、LiDAR統合、SiC |
| 空間・体験価値の追求 | Ocean-V、Vision GT | 室内設計、空力性能 |
3つの軸は独立しているようで、実際には交差している。全固体電池が実用化されればバッテリーの小型化が進み、室内空間の自由度が上がる。L4自動運転が普及すれば、移動中の車内体験そのものが商品価値になる。つまり電池技術と自動運転の進化は、最終的に「空間・体験価値」という第3の軸に合流する構図だ。
会場には合弁ブランド勢のコンセプトも並んだ。東風プジョーのステアバイワイヤ搭載Polygonコンセプトや、ビュイックのElectra自律走行コンセプトがそれだ。ただ、技術の具体性と量産への距離感では、中国地場メーカーが一歩先を行っていた。北京モーターショー2026が見せたのは、中国EVメーカーが「作れる」段階を過ぎ、「どう使わせるか」の競争に入ったという現実だ。
出典
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