三菱電機×フォックスコン提携 – 日本のEV部品産業に何をもたらすかNEW
三菱電機がフォックスコンと手を組む——。4月24日、三菱電機は台湾・鴻海精密工業(ホンハイ・テクノロジー・グループ)と、自動車機器事業の共同運営に向けた覚書(MoU)を締結したと発表した。電動化、自動運転、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の領域で協業を拡大し、三菱電機の自動車機器子会社「三菱電機モビリティ」への50%出資受け入れも検討に含まれる。
なぜ今、フォックスコンなのか
三菱電機は2024年4月に自動車機器事業を分社化し、三菱電機モビリティとして独立させた。モーター、インバーター、電動パワーステアリングなど、EVの心臓部にあたる部品を手がける同社だが、単独での事業拡大には限界がある。世界のEV市場は中国勢が圧倒的なスケールで量産コストを引き下げており、日本の部品メーカーは価格競争力の面で厳しい立場に置かれている。
一方のフォックスコンは、iPhoneの受託製造で知られるが、近年はEV事業への参入を加速させている。2020年に発表したEVプラットフォーム「MIH」を軸に、自社ブランド車ではなく「EVの受託製造」というビジネスモデルを推進中だ。すでに米Lordstownのエンデュランスや、台湾・裕隆汽車(Luxgen)のModel Cを量産した実績を持つ。Model Cは台湾で「n⁷」として2023年に納車を開始し、MIHプラットフォーム初の量産車となった。ただし販売台数は当初計画を下回っており、プラットフォームの汎用展開はまだ道半ばだ。
両社の思惑は明快だ。三菱電機は自社の電装技術をフォックスコンの量産ネットワークに乗せることで販路を一気に広げたい。フォックスコンは日本メーカーの高品質な自動車部品技術を取り込み、MIHプラットフォームの競争力を底上げしたい。
50%出資が意味するもの
今回の覚書で見逃せないのは、三菱電機モビリティへの「50%出資受け入れ」が検討項目に含まれている点だ。単なる技術提携ではない。経営権の半分を外部に委ねる可能性を示している。
日本の大手電機メーカーが、自動車部品事業の経営権をアジアのEMS企業と分け合う。数年前なら考えにくかった構図だろう。背景には、自動車産業の構造変化がある。SDV時代に求められるのは、ハードウェアとソフトウェアの高速な開発サイクルと、グローバルな量産体制だ。従来の日本式サプライチェーン——完成車メーカーとの長期的な系列関係——だけでは、変化のスピードに追いつけなくなりつつある。もっとも、MoUの段階で50%という具体的な数字が出てきたこと自体が、両社の本気度を裏付けている。
日本のEV部品産業への波及
三菱電機の動きは孤立した事例ではない。
日本電産(ニデック)はすでに中国・広州に駆動モーターの大規模工場を稼働させ、中国EVメーカーへの供給を拡大している。デンソーもトヨタグループ外への販売比率を高める方針を打ち出した。日本の自動車部品メーカーが、従来の系列を超えて生き残り策を模索する流れは確実に強まっている。フォックスコンという巨大EMSとの提携は、この流れをさらに一段押し進めるものだ。
三菱電機モビリティの技術が、フォックスコン経由で中国や東南アジアの新興EVメーカーに供給される可能性がある。日本の技術が「日本車に載る部品」から「世界のEVに載る汎用部品」へと性格を変えていく転換点になりうる。
もちろんリスクもある。技術流出の懸念は常につきまとうし、50%出資となれば意思決定のスピードや方向性で軋轢が生じる可能性もゼロではない。三菱電機がどこまでの技術を共有範囲に含めるのか、今後の交渉の焦点になる。現時点ではMoUの段階であり、正式な出資比率や事業運営の詳細は今後の協議に委ねられている。三菱電機は「検討開始」という慎重な表現を使っている。正式契約の時期、最終的な出資比率の確定、そして技術共有の範囲——この3点が、提携の実効性を測る試金石になる。
出典
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