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I-PACEリコールが示す – NMC火災リスクとブレードバッテリーNEW

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I-PACEリコールが示す – NMC火災リスクとブレードバッテリー

303台——。ジャガー・ランドローバー・ジャパンが4月28日、電動クロスオーバーSUV『I-PACE』のリコールを国土交通省に届け出た。バッテリーパック内のリチウムイオン電池から火災が発生するおそれがあるとして、満充電容量を約90%に制限する予防措置だ。事故も不具合発生も0件の段階での届け出だが、過去のプログラム書き換え後に車両火災が起きた事例があるという。

I-PACEリコールの概要

対象は2018年4月23日から2020年7月15日までに製造された型式ZAA-DH1AAおよびZAA-DH1CAの計303台。不具合の部位は電動機内のバッテリーエネルギーコントロールモジュール(BECM)で、全車両に対し制御プログラムを書き換える。

過去のリコール対応で書き換えた電源装置から車両火災が発生した事例があり、原因は現時点で特定されていない。同社は原因判明後に恒久対策を実施するとしているが、それまでは満充電の上限を90%に抑える運用となる。

I-PACEは2018年に欧州で発売されたジャガー初のフル電動SUVで、テスラ・モデルX対抗の存在として注目を集めた。搭載バッテリーは韓国LGエナジーソリューション(旧LG化学)製の約90kWhパックで、ニッケル・マンガン・コバルト(NMC)系セルを採用している。

NMC系バッテリーの構造的火災リスク

EVバッテリーの火災リスクは、正極材の化学組成に大きく依存する。I-PACEが採用するNMC系はエネルギー密度が250〜300Wh/kgと高く、長い航続距離を稼げる一方、熱暴走の温度閾値が低いという弱点を抱える。

NMCセルは過充電や内部短絡で発熱すると、おおむね150〜200℃で正極材から酸素を放出し、自己持続的な熱暴走に進展する。一度発火すると消火が困難で、鎮火後の再発火リスクも高い。欧米プレミアムEVが長く採用してきた化学系の宿命とも言える特性だ。

LG製NMCバッテリーは過去にもシボレー・ボルトEVで14万台規模のリコールを引き起こし、ヒョンデ・コナEVも同様の問題で全数リコールに至った経緯がある。BECMの制御ロジックや製造工程での微小な異物混入が引き金になるケースが報告されており、今回のI-PACEもこの系譜上にある可能性がある。

BYDブレードバッテリーが選んだ別の解

対照的に、中国勢が主軸に据えるLFP(リン酸鉄リチウム)は熱安定性で大きく優位に立つ。正極材のLiFePO4は約270℃まで酸素を放出せず、熱暴走の連鎖反応が起きにくい。BYDのブレードバッテリーはこのLFPを刀片状の薄いセル形状に成形し、CTP(Cell to Pack)構造でパック内に直接配置することで、エネルギー密度の弱点を体積効率で補っている。

BYDは2020年にブレードバッテリーの「釘刺し試験」動画を公開した。釘を貫通させても発煙・発火せず、表面温度も30〜60℃にとどまる映像で、同じ条件のNMCセルが500℃超で激しく燃焼するのと対比して安全性を訴求している。日本市場で販売されるATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7、RACCOには全車このブレードバッテリーが搭載される。

項目 NMC(ニッケル系) LFP(リン酸鉄系)
エネルギー密度 250〜300Wh/kg 160〜180Wh/kg
熱暴走温度 約150〜200℃ 約270℃
サイクル寿命 1,000〜2,000回 3,000回以上
コバルト使用 あり なし
主な搭載車 I-PACE、ボルトEV、コナEV BYD全車、テスラMY中国製

リコール傾向に表れる安全設計の差

米NHTSA(道路交通安全局)の公開データを追うと、2020年以降のEV関連リコールでバッテリー起因のものは大半がNMC系で発生している。テスラ・モデルS/Xの旧型、シボレー・ボルトEV、ヒョンデ・コナEV、フォードF-150ライトニングなどが該当し、いずれも数万台〜十数万台規模の対応となった。LFP搭載モデルで火災を理由にした大規模リコールは、現時点でほぼ報告されていない。

LFPが万能というわけではない。低温時の出力低下、急速充電時の発熱管理、サイクル末期の挙動など課題は残る。ただ「燃えにくさ」という一点に限れば、化学的な優位は試験データで裏付けられている。

日本の輸入EV市場ではNMC搭載車の比率が依然高い。BYDの日本ラインナップが全車LFPで揃うのに対し、欧州勢のプレミアムBEVは長航続を優先してNMCを継続採用するモデルが多い。今回のI-PACEリコールは、EV黎明期に性能を優先した化学選択が、販売開始から5〜7年経って安全コストとして顕在化した一例。同種の予防的リコールは今後も散発する可能性がある。

出典

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BLADE NOTE編集部
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