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CATLナトリウムイオン電池、量産開始へ — 日本のEV価格と蓄電池市場への影響を読むNEW

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バッテリー技術: CATLナトリウムイオン電池、量産開始へ — 日本のEV価格と蓄電池市場への影響を読む
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マイナス40℃で容量の90%を維持する。CATLが2025年4月のテックデーで披露したナトリウムイオン電池の数値だ。あれから1年、同電池を搭載した長安汽車の市販車が2026年半ばに投入される見通しとなり、リチウムを使わない次世代電池はいよいよ量産フェーズに入る。EV業界の原価構造そのものが変わる局面が近づいている。

CATLナトリウムイオン電池の技術と量産ロードマップ

CATLは2025年4月21日のテックデーで、ナトリウムイオン電池、凝縮系(コンデンスド)バッテリー、急速充電技術のアップグレードを発表した。同社が「創業以来最も技術密度の高いイベント」と位置づけた場だ。

CnEVPostの報道によると、CATLはテックデーに先立つWeibo投稿で過去の技術的マイルストーンを振り返っている。航続1,000km超を実現した麒麟バッテリー、10分の充電で400km分を追加できる神行バッテリーなどだ。いずれもセル・トゥ・パック(CTP)構造の進化を軸に、パック全体のエネルギー密度を引き上げてきた技術系譜にある。

ナトリウムイオン電池の量産に向けた動きはすでに具体化している。CATLは2025年2月、長安汽車と共同でナトリウムイオン電池搭載車をフルンボイル市ヤケシで公開した。気温マイナス40℃という極寒環境での実走デモで、同電池が容量の90%を保持することを実証済みだ。CnEVPostによれば、この車両は2026年半ばの市場投入が見込まれている。

ナトリウムイオン電池の最大の利点はコストだ。正極材にリチウムを使わず、地殻に豊富に存在するナトリウムを用いる。中国のバッテリー業界メディアやアナリストレポートでは、ナトリウムイオンセルの原材料コストはLFP比で20〜30%低いとする試算が複数出ている。以下に主要バッテリー技術の比較をまとめる。

項目 ナトリウムイオン(CATL第2世代) LFP(リン酸鉄リチウム) NMC三元系
エネルギー密度 200Wh/kg(CATLテックデー発表値) 160〜180Wh/kg 250〜300Wh/kg
低温性能(−40℃) 容量90%維持 容量60〜70%程度 容量70〜80%程度
原材料コスト(LFP比) 20〜30%低 基準 30〜50%高
主な課題 サイクル寿命 エネルギー密度の上限 コスト・資源リスク

エネルギー密度ではNMC三元系に届かないため、当面は小型車や商用車、定置型蓄電システムから採用が広がる。ただし、コスト優位が明確なセグメントでは急速に普及する。

BYDとの技術競争が加速

CATLのテックデーは、ライバルBYDの動きへの回答でもあった。

BYDは2025年3月に第2世代ブレードバッテリーとフラッシュチャージ技術を発表し、10%から90%までわずか9分で充電できる性能を示した。すでにBYDの10車種以上に搭載が始まっている。中国バッテリー市場で、CATLは搭載量シェア45.54%、BYDは17.83%(2025年3月時点)。CATLが首位を守る構図だが、BYDは自社EVへの垂直統合で着実にシェアを伸ばしている。CATLはナトリウムイオンや凝縮系バッテリーといった「次の柱」を早期に市場投入し、技術リーダーシップを固める必要がある。

CATLの2025年第1四半期の純利益は207.4億元(約3,010億円)で、前年同期比48.52%増。この利益水準が続けば、ナトリウムイオン電池の量産ライン増設に必要な設備投資を自己資金で賄える計算になる。

BYD車はさらに安くなるか — 価格と蓄電池への波及

ナトリウムイオン電池の量産が本格化すれば、日本市場にも価格面で直接波及する。現在、日本で販売されるBYD車はLFP系のブレードバッテリーを搭載しているが、エントリーモデルにナトリウムイオン電池が採用されれば、さらなる価格引き下げにつながる。

バッテリーはEVの製造原価の一般に30〜40%を占めるとされる(BloombergNEF等の業界レポートによる推計)。仮にナトリウムイオン電池でセルコストがLFP比25%下がるとすると、車両価格ベースでおよそ8〜10%の引き下げに相当する。BYD DOLPHIN(現行価格363万円〜)で試算すれば、330万円前後が視野に入る。日産サクラの補助金適用後価格と直接比較できる水準だ。

もう一つの経路は、CATLからバッテリーを調達する日本メーカーへの影響だ。CATLが外販価格を下げれば、日本メーカーのEV原価にも反映される。リチウム資源の地政学リスクを回避できる点も、調達先の多様化という観点で無視できない。

日本の蓄電池メーカーにとっても無縁ではない。パナソニックエナジーは車載向けではNMC系に注力する一方、定置型蓄電池向けにナトリウムイオン技術の研究を進めている。日本電気硝子は全固体ナトリウムイオン電池の試作品を公開済みだ。ただし、いずれも量産時期は未定であり、CATLが2026年半ばに市販車搭載を実現すれば、量産化で中国勢が先行する。この差が埋まらなければ、定置型蓄電池市場でも中国製セルが主流となり、日本メーカーはシステムインテグレーションでの差別化を迫られる。日本政府のCEV補助金は現状、搭載電池の種類を問わず航続距離ベースで支給額が決まるため、ナトリウムイオン電池搭載車も対象に含まれる可能性が高いが、制度設計の詳細は今後の議論次第だ。

ナトリウムイオン電池のkWh単価がLFPの半額に迫ったとき、国内メーカーの価格戦略は根本から組み直しになる。CATLの量産車が市場に出る2026年後半が、その試金石になる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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