バッテリー技術

国軒高科の第5世代LFP電池 – CATL・BYDブレードと何が違うのか

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バッテリー技術: 国軒高科の第5世代LFP電池 – CATL・BYDブレードと何が違うのか
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航続距離、コスト、安全性——リン酸鉄リチウム(LFP)電池の進化が、EV市場の勢力図を塗り替えつつある。中国の大手バッテリーメーカー国軒高科(Gotion High-Tech)が、2026年5月中旬に「第5世代LFP全場景電池」を発表する計画であることが明らかになった。36氪の報道によるもので、同社のLFP技術がどこまで到達したのかに注目が集まっている。

国軒高科・第5世代LFPの位置づけ

国軒高科は中国バッテリー市場でCATL、BYDに次ぐシェアを持つ。Volkswagen Groupが戦略出資しており、欧州向けの供給拡大を進めてきた。同社はこれまでLFPの弱点とされてきたエネルギー密度の向上に注力しており、第4世代ではセルレベルで200Wh/kg前後を達成したとされる。

第5世代で「全場景(全シナリオ)」を冠している。これは小型車から商用車、蓄電システムまで単一プラットフォームでカバーする構想を意味し、製造コストの圧縮に直結する戦略だ。具体的なスペックは5月中旬の発表を待つ必要があるが、業界ではセルレベル210〜230Wh/kgの到達が取り沙汰されている。

LFP三つ巴——CATL・BYDとの比較

LFP電池を語るうえで避けて通れないのが、CATLの神行(Shenxing)バッテリーとBYDのブレードバッテリーだ。それぞれのアプローチを整理する。

項目 BYD ブレードバッテリー CATL 神行 国軒高科 第5世代(推定)
構造 刀片型セル+CTP CTP 3.0 全場景統一プラットフォーム
セルエネルギー密度 約160〜180Wh/kg 約200Wh/kg 210〜230Wh/kg(推定)
急速充電 標準対応 4C充電対応(10分400km) 未公表
低温性能 標準 -10℃で90%以上維持 未公表
主な供給先 BYD自社EV 広範な外販 VW Group・中国OEM

BYDのブレードバッテリーは2020年の登場以来、釘刺し試験で燃えない安全性を前面に打ち出し、LFP復権の立役者となった。セルを薄い刀片状にしてパック内の空間効率を高めるCTP(Cell to Pack)設計が特徴で、コスト競争力と安全性のバランスに優れる。ただし、セル単体のエネルギー密度は160〜180Wh/kg帯にとどまっており、長航続モデルではパック搭載量で補っているのが実情だ。

CATLの神行バッテリーは2023年発表。LFPでありながら4C充電に対応し、10分で400km分の充電を可能にした。エネルギー密度も200Wh/kgに到達しており、LFPの「充電が遅い」「エネルギー密度が低い」という従来の弱点を正面から潰しにかかっている。

国軒高科の第5世代が仮に220Wh/kg超を実現すれば、LFPとしては最高水準の部類に入る。NMC三元系の250〜300Wh/kgにはまだ届かないが、LFPのコスト優位性——原材料費がNMCの6〜7割程度——を維持したまま密度を上げられるなら、NMC採用モデルの一部を置き換える可能性が出てくる。具体的には、航続距離400〜500km帯のCセグメント〜Dセグメント車だ。このクラスではNMCで60〜75kWhのパックを搭載するのが一般的だが、LFPが220Wh/kgに達すれば同等の航続距離をパック重量15〜20%増で実現できる。車両価格を50〜80万円押し下げられる計算になり、300万〜450万円帯のボリュームゾーンでLFPへの切り替えが経済合理性を持ち始める。

「全場景」がEV価格に与えるインパクト

バッテリーコストはEVの車両価格の30〜40%を占める。ここを圧縮できれば、車両価格に直接跳ね返る。

国軒高科が「全場景」を掲げる背景には、セルの規格統一による量産効果の最大化がある。用途ごとに異なるセルを設計・製造すると、金型や生産ラインの切り替えコストがかさむ。1種類のセルで乗用車から商用車、定置型蓄電池までカバーできれば、工場の稼働率が上がり、kWhあたりのコストを大幅に下げられる。

Volkswagen Groupとの資本関係も重要な要素になる。VWは2026年以降、欧州で2万ユーロ台のエントリーEV「ID.2」シリーズの投入を計画しており、そのバッテリー調達先として国軒高科の名前が繰り返し挙がっている。VWは日本市場でもID.4の販売を続けており、今後ID.2クラスの小型EVを日本に導入する場合、国軒高科製のLFPセルが搭載される可能性がある。現在の日本市場ではVW ID.4が500万円台後半からという価格設定だが、第5世代LFPによるコスト削減が実現すれば、300万円台のVW製EVが日本のディーラーに並ぶシナリオも現実味を帯びてくる。

LFP進化の先にあるもの

LFP電池のエネルギー密度は、数年前まで「160Wh/kgが限界」とされていた。それが各社の技術競争で200Wh/kgを超え、国軒高科の第5世代ではさらにその先を狙う段階に入った。材料面ではリン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)への移行も並行して進んでおり、LFP系全体のエネルギー密度は今後数年で230〜250Wh/kgに達する可能性がある。

こうした動きは、全固体電池の実用化を待たずとも、EVの価格がガソリン車と同等になる時期を早める要因になる。BYDが中国市場で8万元台(約170万円)のEVを販売できている背景にはブレードバッテリーのコスト競争力があり、CATLや国軒高科が同等以上の性能を外販向けに供給すれば、BYD以外のメーカーにも低価格化の道が開ける。

国軒高科の第5世代LFPは、5月中旬の正式発表でスペックの全容が判明する。充電速度、サイクル寿命、パックレベルの密度——どこまで数字を積み上げてくるかが焦点になる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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