充電インフラ

EV急速充電器を災害時に無料開放 – テンフィールズが北海道・岩手5拠点で実施

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EV急速充電器を災害時に無料開放 – テンフィールズが北海道・岩手5拠点で実施

地震が起きたとき、EVのバッテリーに残った電力が生活を支える——そんな場面が現実になりつつある。4月20日に発生した三陸沖地震を受け、EV急速充電器「FLASH」を展開するテンフィールズファクトリーが、北海道と岩手県の計5拠点で充電料金の無料化に踏み切った

OTA遠隔制御で即日無料化を実現

今回の対応の特徴は、そのスピードにある。地震発生当日の4月20日に無料開放を開始している。これを可能にしたのが、FLASHに搭載されたOTA(Over The Air)による遠隔制御機能だ。現地にスタッフを派遣することなく、充電料金の設定を0円/kWhに切り替えられる。終了時期はEVアプリ内で案内するとしており、被災状況に応じて柔軟に対応する構えだ。

被害に遭った方の利用を最優先とし、被災地域でのEVユーザーの移動手段確保と、車両を非常用電源として活用する際の電力補給を支援する。

無料開放の対象5拠点

対象となるのは以下の5拠点。いずれもCHAdeMOとNACSの両規格に対応しており、テスラ車を含む幅広いEVが利用できる。

拠点名 所在地 最大出力
ゲオ苫小牧新生台店 北海道苫小牧市双葉町1丁目9-8 180kW
S-WASH 札幌西野店 北海道札幌市西区西野9条5丁目6-10 240kW
サンライフ 岩手県奥州市水沢田小路16番地4 180kW
新車市場 一関室根店 岩手県一関市室根町折壁字月山下6-5 240kW
ENEOS江刺ふるさと市場前SS 岩手県奥州市江刺愛宕字金谷72-4 240kW

最大出力240kWは国内最大級の水準で、対応車種であれば短時間で相当量の電力を充電できる。停電が続く地域では、EVのバッテリーに蓄えた電力を自宅や避難所で使うV2H・V2L活用の前段階として、まず車両側の電力を確保することが重要になる。高出力充電器の存在は、その点で大きな意味を持つ。

「EVは走る蓄電池」——充電インフラの有事対応力が問われる

テンフィールズファクトリーは、停電や燃料供給の制約が生じた際にEVが蓄電池として非常用電源になり得ると説明している。実際、2019年の台風15号では千葉県で大規模停電が長期化し、日産がリーフを被災地に派遣して電力供給を行った実績がある。ガソリンスタンドが停電で稼働できないケースは過去の災害でも繰り返し報告されており、EVであれば充電さえできれば移動も給電もこなせる。

ただし、これは充電インフラが生きていることが前提だ。今回のFLASHのように自立した通信・制御機能を持つ充電器が被災地にあったからこそ、迅速な無料開放が成立した。逆に言えば、充電器自体が被災して使えなくなるリスクは残る。

日本国内の急速充電器は約1万基。設置場所の偏在も指摘されており、都市部に集中する傾向がある。災害時のレジリエンスという観点では、地方部への充電インフラ分散配置が今後の課題になる。北海道や東北にFLASHの拠点があったこと自体が、今回の支援を可能にした要因の一つだろう。

これまでEV充電器の評価は、出力・対応規格・設置数といったスペック面が中心だった。しかし今回の事例は、OTAによる遠隔制御という「ソフトウェア的な柔軟性」が災害対応に直結することを示した。料金変更、稼働状況の把握、ソフトウェアアップデート——平時には運用効率化の手段にすぎない機能が、有事には即応力に変わる。

CHAdeMOとNACSの両規格対応も、防災の観点では重要だ。規格の違いで充電できないという事態は、日常なら多少の不便で済むが、災害時には致命的になりかねない。現在、V2H対応のEVは国内で20車種以上に拡大しており、マルチ規格対応の充電器が増えることは車両側の防災活用の幅を広げることにもつながる。

EVの防災活用は、まだ実証段階にある部分が多い。それでも、充電インフラ側からの災害対応が実例として積み上がることで、「EVは災害に弱い」という漠然とした不安に対する具体的な反証が生まれつつある。次に問われるのは、こうした対応を個別企業の判断に頼らず、制度やインフラ設計の中に組み込めるかどうかだろう。

出典

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BLADE NOTE編集部
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