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BYD新サブブランド「Linghui」- e9セダンで法人向けEV市場に本格参入

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BYD新サブブランド「Linghui」- e9セダンで法人向けEV市場に本格参入

9分でほぼ満充電——BYDが法人モビリティ専用に立ち上げた新ブランド「Linghui(領慧)」が、フラッグシップセダン「e9」の投入を予告した。CnEVPostが報じたもので、先行発売されたe7に続く第2弾モデルとなる。ライドシェアやビジネス送迎といった商用ユースに特化した1台だ。

Linghuiブランドの狙い——なぜBYDは「分離」を選んだのか

Linghuiは、BYDがモビリティ市場(ライドシェア・法人送迎など)向けに新設した独立サブブランドだ。背景には明確な課題がある。BYDが仰望(Yangwang)や方程豹(Fang Cheng Bao)で高級車市場へ攻勢をかけるなか、同じ「BYD」ロゴを掲げた車両がライドシェアに大量投入されれば、プレミアムモデルの購入層が離れかねない。プレミアム路線と商用路線を分離し、ブランドイメージの混在を防ぐ措置だ。

BYDのマルチブランド体制は以下のように整理できる。

ブランド 価格帯 ポジショニング
仰望(Yangwang) 100万元超 超高級EV
方程豹(Fang Cheng Bao) 30〜60万元 オフロード・個性派SUV
BYD本体 10〜25万元 量販乗用車
Linghui(領慧) 未公表 法人モビリティ(B2B)

価格帯も顧客層も重ならない設計だ。

Linghuiはe9のほかにも、先行発売済みのe7、セダンのe5、MPVのM9の型式認証を取得済みで、セダン3車種+MPV1車種という布陣で法人送迎からライドシェア、空港送迎まで幅広い商用シーンをカバーする。

中国のライドシェア市場では、DiDi(滴滴出行)をはじめとするプラットフォームで走るEVの多くがBYD製だ。しかし、これまでは一般消費者向けと同じ「BYD」ブランドで供給されていた。Linghuiへの移行が進めば、街中のライドシェア車両とショールームに並ぶ乗用車のブランドが分かれることになる。

こうした法人向け専用ブランドの設立はBYDだけの動きではない。Geely傘下の曹操出行(CaoCao)は2024年に専用EV「曹操60」を投入し、自社プラットフォームでの運行を本格化させている。GAC(広汽集団)もライドシェア向けモデルの開発を進めている。ただし、既存の量販ブランドとは別に独立サブブランドを立ち上げたのはBYDが初めてで、ブランド保護と商用展開を同時に進める手法として他社とは一線を画す。

e9のスペック——Han EVベースに商用最適化

Linghui e9は「フラッシュチャージ対応ビジネスCセダン」を標榜する。プラットフォームはBYDの既存モデル「Han」がベースで、商用運行に適した外装の微調整が施されている。

主要スペックは以下の通り。

項目 Linghui e9
全長 約5,000mm
ホイールベース 2,920mm
モーター出力 135kW / 150kW(シングルモーター2仕様)
航続距離 535km / 605km
バッテリー 第2世代Blade Battery
急速充電 約9分でほぼ満充電

約9分でほぼ満充電という数値は、第2世代Blade Batteryの採用によるところが大きい。第2世代ではセル構造の改良と電極材料の最適化により充放電時の内部抵抗が低減され、高電圧・大電流での受け入れ性能が初代比で大幅に向上している。商用車両は1日の走行距離が長く、充電のために車両が止まる時間はそのまま売上の損失になる。9分充電は、ドライバーの休憩時間内に充電を終えられる現実的なラインだ。

法人向けライドシェアEVとの比較では、広汽Aion Sが航続510km・急速充電30分(30%→80%)、東風Voyah Dreamが605km・急速充電約18分(10%→80%)とされる。e9の9分充電が公称通りであれば、充電時間で頭ひとつ抜けることになる。

参考として、4月28日に発売されたHan EVのフラッシュチャージ版は17万9,800元(約360万円、1元=約20円換算)からという価格設定だ。

日本市場でのブランド分離は未定——まずはRACCO次第

BYD Auto Japanは現在、ATTO 3・DOLPHIN・SEALの3車種を個人・法人向けに展開している。法人分野では、すでにレンタカー大手のオリックス自動車やタイムズモビリティがBYD車両をカーシェア・レンタカーに採用しており、法人リースの取り扱いも広がりつつある。こうした法人利用の拡大に伴い、乗用モデルのブランドイメージをどう維持するかは今後の課題になりうる。

Linghuiのような別ブランドでの法人展開が日本にも波及するかは現時点で未定だ。BYD Auto Japanは2025年秋にコンパクトSUV「RACCO」を投入予定で、まずは量販モデルの拡充が優先事項となっている。マルチブランド体制の日本展開は、RACCOの販売実績と日本での法人需要の規模が判断材料になる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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