人民元高が直撃 – BYD・吉利ほか中国EV大手のQ1決算を読む
2025年第1四半期、中国の主要自動車メーカーの決算が出揃った。数字だけ見れば軒並み減益。だが、その内実を掘ると「本業は好調、通貨が足を引っ張った」という共通パターンが浮かび上がる。
為替差損が利益を吹き飛ばした構図
CnEVPostの報道によると、吉利汽車(Geely)の第1四半期の株主帰属利益は41.7億元(約610億円)で、前年同期比27%減。最大の原因は約5億元の為替差損だ。前年同期には30億元超の為替差益を計上していたため、振れ幅は35億元にも及ぶ。為替など非中核項目を除いたコア利益は実は31%増。本業の勢いは衰えていない。
BYDも同様の打撃を受けた。第1四半期の財務費用は前年同期比210%増の21億元に膨らみ、その主因は為替差損。純利益は40.9億元と55%の急落だった。年初の販売閑散期や支援策の終了も重なったとはいえ、為替の影響が際立つ。
長安汽車、広汽集団(GAC)、長城汽車(GWM)も同じ傾向を示した。いずれも海外販売は前年比30%以上伸ばしながら、為替差損益が軒並みマイナスに転じている。2024年通期では各社とも為替差益が利益を押し上げていただけに、その反動が一気に表面化した格好だ。
振り返れば、2022年後半に人民元が対ドルで急落した局面では、逆に海外売上の元換算額が膨らんで追い風となった。為替は両刃の剣であり、海外売上比率が年々拡大する中国メーカーにとって、もはや業績を左右する構造的な変数になっている。
各社の減益幅を比較する
| メーカー | Q1純利益 | 前年同期比 | 主な為替要因 |
|---|---|---|---|
| BYD | 40.9億元 | ▲55% | 財務費用210%増(為替差損) |
| 吉利汽車 | 41.7億元 | ▲27% | 為替差損約5億元(前年は差益30億元超) |
| 長城汽車 | 9.45億元 | ▲46% | 前年の為替差益が剥落 |
| 長安汽車 | 3.51億元 | ▲74% | 財務費用129%増 |
| 広汽集団 | 非経常除き▲55% | ▲55% | 前年の差益→当期の差損に反転 |
長安汽車の減益幅74%が突出するが、もともと利益水準が他社より小さく、為替の振れが損益を大きく左右しやすい構造にある。
なぜ人民元高が痛手になるのか
第1四半期、人民元はオンショアで対米ドル1.2%上昇した。中国メーカーが海外で稼いだドルやユーロ建ての売上・資産を期末に元換算すると、元高の分だけ帳簿上の価値が目減りする。海外売上比率が急拡大しているからこそ、この影響が無視できなくなった。
中国乗用車協会の崔東樹事務局長は、短期的には為替ヘッジ比率を50〜60%に引き上げ、先物やオプションで受注時の収益を確定させるべきだと指摘する。中長期では為替リスク管理体制の構築と早期警戒メカニズムの整備が不可欠だという。
実際、先行組は動き出している。BYDは2025年度の為替デリバティブ取引枠として、従来の50億ドルから100億ドルへの倍増を承認した。吉利もヘッジなどの金融手段で為替エクスポージャーを管理していると明かしている。
人民元高は日本での中国EV価格に波及するか
人民元と日本円の関係も無視できない。対ドルでは元高が進んだ一方、円も2025年に入って対ドルでやや持ち直す局面があった。元円の動き次第では、中国メーカーにとって日本向け輸出の採算が変わる。
元高・円安が進めば、中国から日本への輸出コストは相対的に上がる。BYDのATTO 3やDOLPHINといった日本販売モデルの価格据え置きが難しくなる局面も出てくる。逆に円高方向に振れれば、現行価格を維持したまま利幅を確保しやすい。
BYDは日本市場で2025年にRACCOを投入し、ラインナップを拡充している最中だ。価格競争力は中国EVの最大の武器であり、為替がその前提を揺さぶるなら、ヘッジ戦略の巧拙が日本市場での価格政策に直結する。100億ドル規模のデリバティブ枠を確保したBYDの判断は、日本を含むグローバル展開を見据えたものだろう。
第2四半期以降、米中関係や関税政策の動向次第で人民元のボラティリティはさらに高まる見通しだ。各社のQ2決算は7〜8月に出揃う。ヘッジ拡充の効果が数字に表れるか、そこが次の焦点になる。
出典
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