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NIO ES9が52.8万元で予約開始 – BaaS戦略でレクサスRX・BMW X5と価格勝負

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中国EV: NIO ES9が52.8万元で予約開始 – BaaS戦略でレクサスRX・BMW X5と価格勝負
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36氪の報道によると、NIO(蔚来汽車)の新型フラッグシップSUV「ES9」の整車価格は52.8万元(約1,100万円)。中国の大型プレミアムSUV市場に投入されるこのモデルは、単体の価格だけを見ればレクサスRXやBMW X5と真正面からぶつかる価格帯に位置する。しかしNIOには、競合にはない武器がある。BaaS(Battery as a Service)、つまり電池サブスクリプションモデルだ。

ES9の価格構成とBaaSの損得勘定

NIOのBaaSモデルでは、ユーザーは車両購入時にバッテリーを「買わない」選択ができる。バッテリー分の費用を月額サブスクリプションに切り替えることで、車両本体の購入価格を大幅に引き下げる。NIOの既存モデルでは、BaaS適用時に車両価格が10万元(約210万円)以上安くなるケースがある。

NIOの既存モデルの実績から推定すると、ES9にも同水準の割引が適用されれば、BaaS価格は42万元台(約880万円)まで下がる計算になる。ただしES9のBaaS価格は正式発表されておらず、あくまで既存モデルからの推定値だ。たとえばET7(整車価格44.8万元)はBaaS適用で37.8万元となり、7万元の差額が生じている(NIO公式サイトの車種別価格表より)。この価格帯は、中国市場におけるレクサスRX 450h+やBMW X5 xDrive30Lの実売価格と直接競合する水準にあたる。

では月額費用を含めたトータルコストはどうか。NIOの現行プランでは、75kWhバッテリーで月額728元、100kWhで月額1,128元が目安とされている。仮に月額1,000元で5年間利用すれば、総額は6万元。整車購入との差額10万元を考慮すると、5年間で約4万元(約84万円)浮く。7年を超えると逆転する可能性があるが、バッテリー劣化リスクをNIO側が負う点、途中でバッテリー容量をアップグレードできる柔軟性を考えれば、単純な損得だけでは判断しにくい。

NIOが中国全土で展開するバッテリー交換ステーションは2,600カ所以上。約3分でフル充電のバッテリーに交換できるインフラが、BaaSの実用性を下支えしている。

レクサスRX・BMW X5との価格帯比較

モデル 中国市場価格帯 日本市場参考価格 パワートレイン
NIO ES9(整車) 52.8万元〜 未発売 BEV
NIO ES9(BaaS推定) 42万元台〜 未発売 BEV
レクサス RX 450h+ 46〜56万元 約786〜866万円 PHEV
BMW X5 xDrive30L 60〜70万元 約998万円〜 ICE/MHEV

BaaS推定価格のES9はレクサスRXの下限を下回り、BMW X5とは20万元近い開きがある。20万元といえば約420万円——オプション装備をフル搭載してもお釣りが来る金額差だ。日本ではレクサスRXが約786万円から、BMW X5が約998万円からという価格設定であり、仮にES9が日本市場に投入されれば、BaaS適用後の880万円前後という水準はレクサスRXと互角の勝負になる。

プレミアムSUV市場の構図変化

中国のプレミアムSUV市場では、BBA(ベンツ・BMW・アウディ)の値引き合戦が続いている。BMW X5は2024年後半から大幅値引きに踏み切り、実売60万元を切るケースも出てきた。それでもNIO ES9のBaaS推定価格には届かない。BMWの中国販売台数は2024年に前年比約13%減と落ち込んでおり、値引きでも販売減を食い止められていない状況だ。

レクサスRXはPHEVモデルで電動化に対応しているものの、BEV専用プラットフォームによる室内空間の広さやOTA(無線アップデート)による機能追加では、NIOに分がある。NIOのNT2.0プラットフォームはADAS(先進運転支援システム)のハードウェアを標準搭載しており、ソフトウェア更新で継続的に機能が向上する設計だ。

一方でNIOの2025年の年間販売台数は約22万台。2023年の約16万台からは成長しているものの、BMWやレクサスと比べればブランド認知度や販売網で差がある。NIOの2024年度決算資料(Annual Report)によれば、BaaS契約率は新車購入者の約6割にのぼる。このモデルが中国市場で受け入れられている裏付けだが、BaaS車両は中古市場でバッテリーの所有権が購入者に帰属しないため、リセールバリューの算定が従来車と異なる点は買い手にとって引っかかるポイントだ。

BaaS方式は日本で通用するか——用地確保という壁

NIOは現時点で日本市場への参入を正式発表していない。ただし2025年にはヨーロッパ展開を拡大しており、右ハンドル市場への対応も進めている。中国メーカーの日本進出ではBYDが先行しているが、プレミアムセグメントに中国ブランドはまだ存在しない。

日本ではEVの車両価格の高さが普及の障壁とされてきた。BaaSのように初期費用を抑える仕組みは、トヨタのKINTOや日産の残価設定型リースと同じ「所有しない」方向の延長線上にある。ただしBaaSにはバッテリー交換ステーションが不可欠で、ここが最大のハードルになる。中国では郊外のガソリンスタンド併設型が多いが、日本の都市部では1区画あたりの地価と建築規制が桁違いだ。東京23区内にコンテナサイズの交換ステーションを設置しようとすれば、用途地域の制限や近隣住民との調整が必要になり、中国のようなペースでの展開は現実的ではない。

ES9の正式スペックや発売時期は近日中に公開される見込みだ。NIOは2025年のオランダ・デンマーク進出でBaaSのステーション展開を欧州でも始めており、右ハンドル圏への布石を着々と打っている。日本上陸の前に、まずは欧州でBaaSが現地の消費者にどう評価されるか——その結果が、アジア太平洋市場への次の一手を左右するだろう。

出典

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BLADE NOTE編集部
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