BYD Song Ultra EV – 約320万円で6万台超受注、中国EV SUV市場の価格破壊
約22,000ドル(約320万円)。中国で発売されたBYDの新型EV SUV「Song Ultra EV」の開始価格だ。事前予想の220,000元(約450万円)を大きく下回るこの価格設定は、発売1カ月で61,240台という受注台数が証明するように、市場の期待を完全に上回った。
予想を覆した価格設定と受注の勢い
BYDは3月6日にSong Ultra EVの先行予約を開始し、20日間で21,586件の予約を獲得。3月26日の正式発売時に提示された価格は151,900元(約320万円)から179,900元(約380万円)の4グレード構成だった。事前の予想価格220,000元からは約30%も安い。
発売初週で1万台超の受注を記録し、4月2日時点で37,216台。1カ月間の累計は61,240台に達した。第三者調査機関CarFansによれば「価格は顧客の期待に合致し、受注は安定的に伸び続けている」という。発売後72時間でBYD店舗の来店数は40%増加し、1店舗あたり平均15台のSong Ultra EVが売れた。
この価格を実現できた背景には、BYDの垂直統合型ビジネスモデルがある。バッテリーセルから半導体、車体組立までを自社グループ内で完結させることで、部品調達コストを大幅に圧縮している。ブレードバッテリーの内製化はその象徴で、外部サプライヤーへの依存を減らしながら性能向上とコスト削減を両立させてきた。
Blade Battery 2.0・5分充電と主要装備
全グレードにBYDの新世代「Blade Battery 2.0」を搭載する。電池容量は68.4kWhと82.7kWhの2種類で、CLTC航続距離はそれぞれ605kmと710km。Flash Charging技術により、10%から70%までわずか5分。97%到達でも9分、マイナス30度の極寒環境でも12分で充電が完了する。
購入者の70%が上位グレードの710km版を選択しており、長距離走行と急速充電への関心の高さがうかがえる。最上位グレードと最廉価グレードの価格差は28,000元(約59万円)だ。先行予約者には18カ月間のFlash Charging無料特典が付き、通常購入でも1年間無料となる。
パワートレインはリア単モーターで最高出力362馬力(270kW)。ボディサイズは全長4,850mm×全幅1,910mm×全高1,670mm、ホイールベース2,840mmで、PHEVのSong L DM-iよりやや大きい。インテリアは15.6インチの中央ディスプレイと10.25インチのドライバーディスプレイに加え、26インチのヘッドアップディスプレイを装備。BYDのインテリジェントボディ制御システム「DiSus-C」がダンピングをリアルタイム調整する。
上位3グレードではルーフマウントLiDARと27個のセンサーを備えたADASパッケージ「God’s Eye B」をオプション設定。高速道路・市街地でのレベル3自動運転と自動駐車に対応し、購入者の45%がこのオプションを選んだ。
日本のEV SUV市場と比べると
Song Ultra EVの価格帯を日本市場に当てはめると、価格差は大きい。日本で購入できるEV SUVは、BYDのATTO 3が440万円から、テスラModel Yが約564万円から。国産勢ではトヨタbZ4Xが約550万円、日産アリアが約539万円からとなる。
つまり、Song Ultra EVは日本市場のEV SUVの最安クラスよりさらに100万円以上安い価格で、710kmの航続距離と5分充電、LiDAR搭載ADASまで選べる。中国市場における競合はXpeng G6、Leapmotor C11、Deepal S7、テスラModel Yだが、購入者の比較対象として最も多かったのはBYD自社のSealion 06 EVだった。自社内でカニバリゼーションが起きるほどのラインナップの厚みがある。
| 項目 | Song Ultra EV(中国) | ATTO 3(日本) | テスラ Model Y(日本) |
|---|---|---|---|
| 開始価格 | 約320万円 | 440万円 | 約564万円 |
| 航続距離 | 605〜710km(CLTC) | 470km(WLTC) | 507km(WLTC) |
| 急速充電 | 5分で10→70% | 対応 | 対応 |
| 最高出力 | 362馬力 | 204馬力 | 299馬力 |
BYDは日本市場向けに2025年秋発売予定の小型SUV「RACCO」を300万円台前半で投入する計画だが、中国本土ではすでにそれを下回る価格帯でより大型・高性能なモデルが大量に売れている。中国と日本のEV価格差は、関税や認証コスト、販売網の規模だけでは説明しきれない構造的な開きになりつつある。Song Ultra EVの日本導入予定は現時点で発表されていない。
出典
- BYD launches the Song Ultra EV with Flash Charging(CnEVPost)
- BYD Song Ultra EV関連記事(Electrek)
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