ホンダ スーパーワン登場 – BYD DOLPHIN・ATTO 3の競合構図はどう変わるか
ホンダが小型EV「Super-ONE(スーパーワン)」を5月下旬に発売する。4月16日から先行予約を開始したAセグメントの新型BEVは、車両重量1090kg・WLTC航続274km・最大出力70kW(BOOSTモード)というスペックで、日常使いに高揚感を加えることを狙う。日本のコンパクトEV市場で先行してきたBYD DOLPHINやATTO 3にとって、無視できない国内勢の参入となる。
スーパーワンが置きにきたポジション
スーパーワンは軽量プラットフォームをベースに、薄型バッテリーを床下中央に配置して低重心化を図った設計だ。トレッドを拡幅したワイドスタンス、ブリスターフェンダー、専用エアロパーツで「走りの楽しさ」を前面に押し出している。通常モードの最大出力は47kWだが、専用ドライブモード「BOOSTモード」を選ぶと70kWまで引き上げられる。
EVでありながら仮想有段シフト制御とアクティブサウンドコントロールを組み合わせ、ステアリングのパドル操作による変速感とエンジン車を思わせるサウンドを再現する。BOSEと共同開発した8スピーカーのプレミアムサウンドシステムも標準装備し、13.1Lのサブウーファーまで備える。ホンダの小型モデルにBOSEが載るのは初めてだ。
つまりスーパーワンは「合理的な実用EV」ではなく、「運転して楽しいAセグメントEV」というキャラクター付けで市場に下りてくる。ここがDOLPHINやATTO 3との比較を一筋縄にいかなくしている。
BYD勢との直接比較 – 価格・航続・サイズ
BYDが日本市場で展開するコンパクトEV2車種と並べると、各車のキャラクターの違いが見えてくる。スーパーワンの正式価格はまだ発表されていないが、Aセグメントの先行予約モデルとしては200万円台後半から300万円前後が現実的なレンジとみられる。
| 項目 | ホンダ Super-ONE | BYD DOLPHIN | BYD ATTO 3 |
|---|---|---|---|
| セグメント | A(小型) | B(コンパクト) | C(コンパクトSUV) |
| 車両重量 | 1090kg | 約1500〜1680kg | 約1750kg |
| 航続(WLTC) | 274km | 400km | 470km |
| 最大出力 | 70kW(BOOST時) | 70〜150kW | 150kW |
| 価格帯(税込) | 未公表(推定200万円台後半〜) | 363〜407万円 | 440〜520万円 |
| 発売 | 2026年5月下旬 | 2023年9月 | 2023年1月 |
こうして並べると、スーパーワンとDOLPHIN・ATTO 3はそもそもサイズもバッテリー容量もかなり違う。航続274kmという数字は、400kmのDOLPHINや470kmのATTO 3と比べれば見劣りする。一方で1090kgという軽さはBYD2車種から500〜600kg軽い水準で、市街地での扱いやすさや電費の面で利点になりやすい。
食い合うのは「セカンドカーEV」需要
競合構図を考えるうえで重要なのは、コンパクトEV購入層が一枚岩ではないという点だ。日本のBEV販売は2024年で約9万台、2025年は12万台規模まで伸びる見込みで、そのうち約4割を日産サクラに代表される軽EVが占める。地方やセカンドカー需要が普及の牽引役という構造は2026年も続いている。
スーパーワンが狙うのはまさにこのレンジだ。航続274km・1090kgという仕様は、長距離移動より「日常の足プラスα」を前提にしている。価格次第ではサクラ・eKクロスEVのひとつ上、軽の枠を超えてもうワンサイズ上がほしい層を取り込む可能性が高い。CEV補助金(BEV最大85万円)と東京都の追加補助(最大45万円)を併用すれば、車両価格次第で実質負担を200万円前後に抑えられる計算になる。
一方、BYD DOLPHINは363万円から、ATTO 3は440万円からと、補助金後でも実質300万円前後がボリュームゾーン。バッテリー容量・航続・室内空間で勝負する「メインカーとしてのEV」だ。スーパーワンと真正面から食い合うわけではなく、購入検討層は部分的に重なるにとどまるとみるのが妥当だろう。
BYDジャパンの打ち手 – RACCOと販売網
BYDサイドも手をこまねいているわけではない。2025年秋に投入したRACCOは300万円台前半・航続400km前後の小型SUVで、まさに「日本のコンパクト需要」に合わせた1台だ。BYD Auto Japanは2026年時点で約100店舗の販売網を構築し、2025年の販売は約6,000台見込み(RACCOが牽引)と、立ち上がりから3年で台数ベースを倍以上に伸ばしている。
スーパーワン投入で最も影響を受けそうなのは、DOLPHINよりもむしろRACCOの方かもしれない。サイズ感とユースケースが近く、ホンダブランドの信頼感とディーラー網の広さは中国メーカーにとって厚い壁だ。BYDがどこで差別化するかを考えると、Blade BatteryのLFPセルによる安全性・寿命、800Vアーキテクチャ、CTB構造といった技術的な訴求と、輸入車らしい装備の手厚さに賭ける形になりそうだ。
2026年のコンパクトEV市場で見るべきポイント
スーパーワンの登場で日本のコンパクトEV市場は、軽EV、Aセグメント輸入・国産BEV、Bセグメント中国BEV、Cセグメントコンパクトクロスオーバーという4層構造がよりはっきりする。BYDの2車種はこのうちB・Cセグメントの上位レンジに位置取りしており、ホンダの新型と直接バッティングするのはサイズ・価格帯ともに限定的だ。
むしろ注視すべきは、ホンダがBOOSTモードや仮想シフトといった「運転の楽しさ」をEVの差別化軸として持ち込んだことだ。BYDがこれまで打ち出してきた航続・装備・コストパフォーマンスとは別の評価軸が立ち上がる。日本の購入層がスペック数値で選ぶのか、運転体験で選ぶのか – その答え次第で、コンパクトEVの勝ちパターンが変わってくる。
スーパーワンは2026年5月下旬発売、価格は正式発表待ち。
出典
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