方程豹がEVセダン・スーパーカー公開 – BYDプレミアム戦略の次の一手
中国のプレミアムEV市場でBYD系列の動きが慌ただしい。最高峰の仰望(Yangwang)が百万元級で頂点を作り、騰勢(Denza)がDセグメントを固めるなか、5番目のサブブランド「方程豹(Fang Cheng Bao)」が2026年北京モーターショーで初の電動セダン「Formula S」シリーズとスーパーカー「Formula X」を公開した。オフロードSUV専業と見られていたブランドが、いきなりサルーンと2シーターに踏み込んだ意味は小さくない。
Formula SとFormula Xの中身
方程豹が初公開した「Formula S」は、3つのボディタイプを束ねる派生型シリーズだ。3ボックスセダンの「Formula S」、シューティングブレーク風の「Formula S GT」、より大柄な3ボックス「Formula SL」の3バリエーションを揃える。いずれも全長5m超・全幅2m超・ホイールベース3mというフルサイズで、BYDは自ら「ゴールデンレシオボディ」と呼んでいる。
外装は「ハンティングレオパード(狩りをするヒョウ)」をモチーフにした低く構えたスタンスで、スリット型「チーターアイズ」ヘッドライトとリアの「インフィニティリング」テールがランボルギーニやマクラーレンを連想させる。流出した内装画像(ThinkerCar経由)には、大型フローティングセンターディスプレイ、3スポークステアリング、ワイヤレス充電器を備えた赤基調のキャビンが確認できる。物理ボタンも一部残されているのが特徴的だ。
もう1台の「Formula X」は2シーターのスーパーカーで、ブランドの最上位に位置するフラッグシップ。BYDは「市販車と80%同一」と説明しており、コンセプト止まりではなく量産前提のショーカーであることを強調した。Formula SとFormula S GTは2026年9月16日に中国で発売され、価格は18万9,900〜23万9,900元。Formula Xは2027年の発売予定とされる。
方程豹はなぜここまで振り幅を広げたか
方程豹は2023年に立ち上げられたBYDの第5サブブランドで、王朝(Dynasty)・海洋(Ocean)・騰勢・仰望に続く系列にあたる。当初のラインナップはプラグインハイブリッド/EVのオフロードSUV「Bao 5」と「Bao 8」のみで、水上を浮かべるデモ動画やスポーツカー並みの加速で話題を集めた、いわゆる”パーソナライズ志向”のブランドだった。
2025年にはより家族向けに振った「Tai 3」「Tai 7」を投入し、ラインナップを4車種に拡大。今回のFormula S/Xは、ハードコアSUV路線から一気にセダン・スーパーカーへと領域を広げる転換点となる。総支配人のXiong Tianbo氏は、Formula Sのキャビンを「全く新しいスポーティな知能化空間」と説明している。
仰望・騰勢との棲み分け
BYDのプレミアム3兄弟は、価格帯と用途で明確にレイヤーが切られている。整理すると次のようになる。
| ブランド | 中国での価格レンジ | 主力車種 | キャラクター |
|---|---|---|---|
| 仰望(Yangwang) | 62.8万元〜(U7、約1,480万円〜、1元=約23.5円、2026年10月時点) | U8 SUV / U7セダン / U9スーパーカー | 易四方プラットフォームを核とした技術ショーケース |
| 騰勢(Denza) | 30万〜60万元(約705万〜1,410万円) | D9 MPV / N7 SUV / Z9・Z9 GT | メルセデス合弁由来の高級ファミリー&ビジネス |
| 方程豹(Fang Cheng Bao) | Formula Sは18.99万元〜(Formula SL・Xは価格未発表) | Bao 5・Bao 8、Tai 3・Tai 7、新Formula S/X | パーソナライズ/パフォーマンス志向 |
仰望が「価格を問わない技術の頂点」を担う一方、騰勢は「装備と価格のバランスがとれた上級ファミリー」を狙うレンジだ。方程豹はこれら2ブランドの間と外側を同時に攻める格好になる。Bao 5やTai 7は騰勢の上限と仰望の入口の中間を埋め、Formula SLとFormula Xは仰望U7・U9と直接競合し得る価格帯に届く可能性がある。
その後、Formula SとFormula S GTは18万9,900〜23万9,900元で発売され、予約段階の23万〜28万元から引き下げられた。Formula SLとFormula Xの価格は2026年10月時点で未発表だが、少なくともFormula Sは騰勢や仰望と競合する価格帯ではなく、量販に近いレンジに置かれた。
BYDが描く4階層のプレミアム戦略
仰望・騰勢・方程豹の3つが揃うことで、BYDのプレミアム階層はテスラや蔚来(NIO)、小鵬(XPENG)といった単一ブランド勢とは異なる構造になる。社内で価格と性能のピラミッドを4層に分け、それぞれが異なる人格を担う形だ。仰望が技術の旗艦、騰勢が高級ファミリー、方程豹がパーソナライズとパフォーマンス、そしてBYDブランド本体が量販を担当する。
日本市場で方程豹がいつ展開されるかは現時点で不透明だ。BYD Auto JapanはATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7、SEALION 6、RACCOの6車種を展開し、販売拠点は公式ディーラーマップで77拠点(2026年9月7日時点、営業中59)という段階で、当面は量販ブランドの定着が優先される。欧州では2025年から騰勢の投入が始まっており、方程豹が後を追う可能性は高い。日本に来るとすれば、まずはBao 8のようなオフロードSUV枠でのテストマーケティングがあり得るシナリオだろう。
Formula Sは2026年9月16日に発売された。サブブランド5つを束ねたBYDプレミアム陣営が、いよいよ完成形に近づく。
出典
- BYD's luxury off-road brand unveils first electric sedan and a low-slung sports car [Images](Electrek)
2026年10月24日: 人民元の円換算レートを1元=約23.5円(2026年10月時点)に統一し、換算額を更新しました。




