BYD、先進運転支援システムを20%超値上げ – ストレージ価格高騰の波紋NEW
9,900元から12,000元へ——BYDが自社の先進運転支援システム「天神之眼(God’s Eye)B」のオプション価格を5月1日から引き上げる。値上げ幅は20%超。背景にあるのは、グローバルなストレージハードウェアコストの急騰だ。
値上げの対象と内容
BYDが4月28日に発表した声明によると、対象となるのはDynasty(王朝)シリーズ、Ocean(海洋)シリーズ、さらにサブブランドの方程豹(Fang Cheng Bao)の一部モデルだ。これらのモデルでLiDAR搭載の「God’s Eye B」を選択装備する場合、価格が9,900元(約1,448ドル)から12,000元に改定される。4月30日までに注文・手付金を支払った顧客は旧価格が適用される。
God’s Eye Bは「DiPilot 300」とも呼ばれ、1基ないし2基のLiDARを搭載するプレミアム向けADAS(先進運転支援システム)だ。BYDの自社開発プラットフォームには3段階のグレードがあり、エントリーのGod’s Eye C(DiPilot 100)、中位のGod’s Eye B(DiPilot 300)、最上位のGod’s Eye A(DiPilot 600)という構成になっている。
なぜ今、値上げなのか
直接的な要因は、BYD自身が明言しているとおり「グローバルなストレージハードウェアコストの大幅な上昇」だ。LiDARやADAS用の高性能プロセッサには大容量のストレージとメモリが不可欠で、2025年後半から続く半導体・NAND型フラッシュメモリの価格上昇がここにきて製品価格に転嫁された形になる。
EVの先進運転支援システムは、車載カメラやLiDARが生成する膨大なデータをリアルタイムで処理する必要がある。高精細な点群データを扱うLiDAR方式では、ストレージの読み書き速度と容量が性能を左右する。部品単価が上がれば、オプション価格への影響は避けられない。
興味深いのは、この値上げが2025年2月にBYDが打ち出した「スマートドライビングの大衆化」路線と真逆のベクトルに見える点だ。BYDは当時、21車種に一斉にスマートドライビング機能のアップデートを配信し、高度な運転支援を標準装備化していく方針を示していた。今回の値上げ対象はプレミアム向けのGod’s Eye Bに限定されており、エントリーのGod’s Eye Cには及んでいない。大衆化路線を維持しつつ、上位システムのコスト増だけを価格に反映させるという判断だろう。
285万台のスケールメリット
BYDの声明によれば、2026年3月末時点でADAS搭載車の累計台数は285万台を超えた。1日あたり1億8,000万kmを超える走行データが蓄積されている計算になる。
この規模は、ソフトウェアのアルゴリズム改善において圧倒的なアドバンテージだ。テスラがカメラベースのFSD(Full Self-Driving)で走行データの量を武器にしてきたのと同様に、BYDもLiDAR+カメラの融合方式でデータ駆動型の開発を加速させている。ハードウェアコストが上がっても、スケールで吸収できる部分は大きい。ただし、今回の値上げが示すように、吸収しきれない領域も出てきた。
日本仕様への波及はあるか
現時点でBYD Auto Japanが販売する車種——ATTO 3、DOLPHIN、SEAL、SEALION 7——にはDiPilotが搭載されているが、日本仕様はGod’s Eye Cクラスの機能にとどまる。God’s Eye BやAを日本市場に展開するかどうかはまだ公式に発表されていない。
とはいえ、部品調達はグローバルなサプライチェーンを通じて行われるため、ストレージ価格の高騰が中国国内モデルだけに影響するとは考えにくい。2025年秋に日本発売予定のRACCOをはじめ、今後の新型車の価格設定にじわじわ効いてくる可能性はある。日本仕様のADASがアップグレードされるタイミングがあれば、そのとき同様のコスト転嫁が起きてもおかしくない。
BYDに限った話ではない。ストレージ・半導体のコスト上昇はEV業界全体の課題であり、ADASの高機能化を進めるメーカーほど影響を受ける構造になっている。5月1日からの新価格が市場にどう受け止められるか、BYDの次の一手が注目される。
出典
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