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中国メーカーがHEVに本腰 – BEV大国のハイブリッド回帰が意味するものNEW

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中国メーカーがHEVに本腰 – BEV大国のハイブリッド回帰が意味するもの

BEV(バッテリー電気自動車)大国と呼ばれてきた中国で、HEV(ハイブリッド電気自動車)の存在感が急速に増している。吉利汽車(Geely)がi-HEVシステムの量産を開始し、長城汽車(GWM)はEV専用だったOra 5にHEVとICEトリムを追加した。BYDの販売構成もBEV一辺倒から変化しつつある。なぜ今、中国勢はハイブリッドに舵を切るのか。

吉利i-HEV——熱効率48.4%とAI制御の融合

吉利汽車が2026年4月に量産体制へ移行したi-HEVシステムは、帝豪(Emgrand)、博瑞(Preface)、星越L(Monjaro)、博越L(Boyue L)といった主力モデルに展開される。注目は熱効率48.4%のエンジンだ。燃費は4L/100km以下、テスト条件下ではギネス認定の約2.22L/100kmを叩き出した。

技術面で従来のHEVと一線を画すのは、機械式パワースプリットからAI制御によるエネルギー管理への転換だ。リアルタイムの走行状況に応じてエンジンとモーターの出力配分を動的に最適化する。トヨタのTHS(Toyota Hybrid System)が遊星歯車機構で機械的にエネルギーを分配するのとは対照的なアプローチで、ソフトウェアの進化がそのままパワートレインの性能向上に直結する構造になっている。

GWM・Ora 5の全方位展開——EV専用車にICEとHEVを追加

長城汽車の動きは象徴的だ。2026年北京モーターショーで、EV専用クロスオーバーだったOra 5にHEVとICE(1.5Lターボ)トリムを追加した。価格は6万9800〜8万9800元(約10,200〜13,100ドル)。BEV版が8万9800〜12万3800元であることを考えると、HEV・ICEの追加で価格帯を大幅に下げた格好になる。

項目 Ora 5 ICE Ora 5 HEV
パワートレイン 1.5Lターボ + 7速DCT 1.5Lターボ + 140kWモーター
最高出力 135kW(181hp) 166kW(223hp)
0-100km/h 8.9秒 7.7秒
WLTC燃費 6.4L/100km 4.5L/100km
価格帯 6万9800〜8万9800元 6万9800〜8万9800元

HEVトリムのバッテリーはGWM傘下のSvolt製NMCリチウムで、容量は低単位kWh台。大容量バッテリーを積まない分コストを抑えつつ、0-100km/h加速7.7秒とBEV版に迫る動力性能を確保した。先進運転支援「Coffee Pilot 3 OS」も初搭載され、LiDAR搭載車としては中国市場最安価格帯になるとGWMは主張する

Oraブランド自体は2026年3月の国内販売が1785台と苦戦中だが、英国や香港など右ハンドル市場でFunky Catが一定の実績を上げており、ブランド廃止の可能性は低い。むしろHEV追加で国内テコ入れを図る狙いが透ける。

BYDの販売構成が語る「BEV一辺倒」の終焉

CarNewsChinaの報道によると、BYDの2026年1月のパワートレイン別販売比率はBEV40.5%・PHEV59.5%だったが、3月にはBEV49.9%・PHEV50.1%とほぼ拮抗した。PHEVが過半を占めていた構造からBEVが盛り返した形だが、裏を返せばBYDほどの企業でもBEV単独では市場を取りきれない現実がある。

政策環境の変化も大きい。2026年の税制改正でBEV・PHEVの購入税免除が全額免除から50%減税(上限1万5000元=約2070ドル)に縮小された。BEVの価格優位性が薄れる中、充電不要で導入ハードルが低いHEVの競争力が相対的に高まっている。

中国HEV攻勢が突きつける問い

吉利やGWMだけではない。長安汽車や奇瑞汽車(Chery)もシリーズパラレル方式のHEVを展開し、奇瑞はHEVのバッテリー容量を従来の1〜2kWhから約5kWhへ拡大する戦略を取る。広汽集団(GAC)はHEV・PHEV・レンジエクステンダーを統合したプラットフォーム「Adimotion」を推進中だ。各社が一斉にHEVへ参入する背景には、充電インフラが未整備な東南アジアや南米への輸出戦略もある。

日本メーカーにとって、この動きは無視できない。トヨタやホンダが数十年かけて磨いてきたHEV技術は、日本の自動車産業における数少ない「聖域」だった。中国勢がAI制御や高効率エンジンで急速にキャッチアップし、しかも圧倒的な価格競争力を武器に東南アジア市場へ攻め込むとなれば、日本車のHEV優位はグローバルで揺らぐ。トヨタのハイブリッドが東南アジアで強いのは技術だけでなく販売網やブランド信頼の蓄積があるからだが、価格差が2倍近く開けばその壁も万全とは言い切れない。

2026年3月に中国のNEV(新エネルギー車)普及率は52%を超えた。だがその中身はBEV一色ではなく、BEV・PHEV・HEVが用途・価格帯・地域に応じて棲み分けるマルチパスウェイ構造へと移行している。中国が「脱エンジン」から「エンジン活用」へ回帰したのではない。電動化の選択肢を広げ、あらゆる市場条件に対応できる体制を整えつつある——というのが実態に近い。

出典

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BLADE NOTE編集部
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