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CATL、香港市場で約7500億円調達——資金の行き先が示す次の主戦場NEW

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CATL、香港市場で約7500億円調達——資金の行き先が示す次の主戦場

約7500億円——。世界最大のEVバッテリーメーカーCATL(寧徳時代)が香港市場で調達した資金の規模だ。2026年の香港市場で最大の株式公募となったこの動きは、単なる資金繰りではない。調達資金の使途を読み解くと、CATLが次に仕掛ける「主戦場」の輪郭が浮かんでくる。

香港公募の全容——628.20香港ドル×6238万株

CATLは4月28日、香港証券取引所への届出を通じ、6238万5000株のH株新株を1株あたり628.20香港ドルで発行したと報じられた。調達額は約392億香港ドル(約50億米ドル、1ドル≒150円換算で約7500億円)。発行価格は前日終値675.50香港ドルに対して約7%のディスカウントとなった。

需要の強さも際立つ。Bloombergの報道によれば、募集開始からわずか1時間で全株式に注文が入った。ヘッジファンド、政府系ファンド、既存株主を含む150以上の機関投資家が参加している。7%の割引価格でも投資家が殺到したという事実は、CATLの成長シナリオに対する機関投資家の確信度の高さを示す。

資金使途に見える3つの柱

CATLが開示した資金使途は大きく3つに分かれる。

使途 内容
グローバル生産能力の拡大 海外工場の新設・増強
ゼロカーボン事業 新エネルギー鉱業分野への進出
先端技術のR&D 次世代電池の研究開発

1つ目の「グローバル生産能力の拡大」は、すでにハンガリー工場の建設を進めるCATLにとって既定路線だが、7500億円規模の追加資金はさらなる拠点開設を見据えている可能性が高い。米国市場ではフォードとのライセンス契約方式で間接的に進出しているが、東南アジアやモロッコなど新たな生産拠点候補の報道も絶えない。

2つ目の「ゼロカーボン事業」は、今回の公募と前後して取締役会が承認した登録資本金300億元(約6300億円)の新子会社と直結する。この子会社は新エネルギー鉱業分野の管理・運営プラットフォームとなる。リチウムやニッケルなど原材料の上流を押さえることで、電池セル製造からサプライチェーン全体の垂直統合を進める狙いだ。

3つ目の「先端技術R&D」には、ナトリウムイオン電池の量産技術や全固体電池の開発が含まれると見られる。CATLは公式発表で第2世代ナトリウムイオン電池のエネルギー密度200Wh/kg達成を公表済み。コスト面でLFPをさらに下回るナトリウムイオン電池が実用化されれば、小型車や定置型蓄電池の市場構造が一変する。

好決算が裏付ける投資余力

今回の大型調達を可能にした背景には、CATLの堅調な業績がある。2026年第1四半期の純利益は207.4億元(約30.4億米ドル)で、前年同期比48.52%の増益。世界のEV販売台数が伸び続けるなかで、シェア首位のCATLは規模の経済を最大限に活かしている。

ただし株価は公募発表当日、約7%下落して628.5香港ドルとなった。希薄化を嫌気した短期的な売りだが、発行価格とほぼ同水準で下げ止まった点は、市場が中長期的な成長投資として評価していることの裏返しでもある。

日本のバッテリー産業への圧力

CATLの積極投資は、日本のバッテリーメーカーにとって無視できない。パナソニックやトヨタ系のプライムプラネットエナジー&ソリューションズが全固体電池の2027〜28年実用化を目指すなか、CATLはLFP・ナトリウムイオン・全固体と全方位で研究開発を加速させている。資金力の差は研究開発スピードの差に直結する。

加えて、CATLのグローバル生産拠点が増えるほど、日本の自動車メーカーにとってCATL製電池の調達コストは下がる。現にトヨタはCATLからの調達を拡大してきた経緯がある。日本勢が「自前主義」で戦える時間は、CATLが7500億円を投じるたびに短くなっている。

今回の調達が示す「次の主戦場」は、電池セルの性能競争だけではない。原材料の上流から海外生産拠点まで、サプライチェーン全体を押さえにかかるCATLの動きは、電池産業の競争軸そのものを変えつつある。新子会社の具体的な投資先と欧州ハンガリー工場の稼働開始時期——2026年後半に予想される続報が、その全貌を明らかにするだろう。

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BLADE NOTE編集部
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