CATL、ナトリウムイオン電池60GWh受注 – 蓄電からEVへ広がる脱リチウム戦略NEW
60GWh——この数字が持つ意味は大きい。CATLが中国の蓄電システム大手HyperStrong(海辰儲能)と締結したナトリウムイオン電池の供給契約は、単なる大型受注にとどまらない。リチウムに依存しない電池技術が、実証段階を超えて産業規模に到達したことを示す分水嶺だ。
60GWhはどれほどの規模か
2026年4月27日、CATLの本社がある福建省寧徳市で発表されたこの契約は、3年間で60GWhのナトリウムイオン電池をエネルギー貯蔵向けに供給する内容。ナトリウムイオン電池の単一契約としては世界最大となる。
60GWhという数字を既存のリチウムイオン蓄電案件と比較すると、その規模感が見えてくる。世界最大級のリチウムイオン蓄電プロジェクトとして知られるオーストラリアのVictoria Big Batteryが約0.45GWh、米国テキサス州で稼働するMoss Landing蓄電施設が約1.6GWh。つまり今回の契約量は、大型蓄電プロジェクト数十基分に相当する。
CATLの2025年実績で見ても、エネルギー貯蔵用電池の年間出荷量は121GWh。今回の60GWhはその約半分に匹敵し、ナトリウムイオン電池が一気に主力製品の一角を占めうる量だ。
量産の壁をどう越えたか
CATLがナトリウムイオン電池の研究開発に投じた資金は、2016年以降で約100億元(約1,470億円)にのぼる。CarNewsChinaの報道によれば、量産化にあたっては負極材であるハードカーボン製造ラインの発泡問題や水分管理など、リチウムイオン電池とは異なる製造上の課題を一つずつ潰してきた。オングストロームレベルの細孔径制御や表面分子の水分封止、適応型動的化成プロセスといったコア技術で、量産品質の均一性を確保したという。
CATLはナトリウムイオン電池のセル寸法をリチウムイオン電池と同一のプラットフォーム設計とした。これにより既存のサプライチェーンや蓄電システムの筐体をそのまま流用でき、導入コストを大幅に抑えられる。蓄電事業者にとっては「電池の中身だけ入れ替える」感覚で移行できるため、既存設備を持つ事業者ほど切り替えの初期投資が小さくなる。
こうした互換設計は、日本の蓄電市場にとっても意味がある。北海道や九州では再生可能エネルギーの出力制御が常態化し、大型蓄電設備の導入が急務となっている。CATLのナトリウムイオン電池が既存のリチウムイオン蓄電システムと互換性を持つなら、日本の蓄電事業者にとっても導入の選択肢が広がる。一方、日本電気硝子が全固体ナトリウムイオン電池の試作に取り組み、トヨタも次世代電池の研究でナトリウム系を視野に入れるなど、国内でも脱リチウムの動きは始まっている。ただし量産規模ではCATLが大きく先行しているのが現状だ。
蓄電からEVへ——ナトリウムイオンのロードマップ
CATLのロビン・ゼン会長は、長期的にはナトリウムイオン電池が既存市場シェアの30〜40%を置き換えると見通しを示している。その道筋は「蓄電→小型EV→量販EV」という段階的な拡大だ。
第一段階が今回の蓄電分野。定置型蓄電はセルのエネルギー密度よりもコストとサイクル寿命、安全性が重視される。ナトリウムイオン電池は極端な高温・低温環境下での性能が安定し、動作中の発熱も少ない。長時間蓄電ではシステム構成を簡素化でき、補機の消費電力削減にもつながる。蓄電用途はナトリウムイオン電池の長所が最も活きるフィールドであり、ここで量産実績とコスト低減を積み上げる。
今回の契約には伏線がある。HyperStrongは2025年11月、CATLとの間で2026〜2028年に累計200GWh以上の電池セルを調達する包括的フレームワーク契約を締結していた。60GWhのナトリウムイオン電池契約は、この大枠の一部だ。上海証券取引所に上場するHyperStrong(688411.SH)はグローバル累計設置容量40GWh超の蓄電システム企業であり、CATLにとっては蓄電分野で安定した出口を確保しつつ、ナトリウムイオン電池の量産ノウハウを蓄積するパートナーとなる。
第二段階がEV搭載だ。CATLは2026年2月、長安汽車と共同でナトリウムイオン電池を搭載した世界初の量産乗用車を発表した。搭載されるのはCATLの「Naxtra」バッテリーで、極寒条件下での放電出力が同容量のLFP電池の約3倍に達する。2026年半ばの市販が見込まれている。
ナトリウムイオン電池に取り組むのはCATLだけではない。BYDの電池部門FinDreamsもナトリウムイオン電池の量産ラインを整備中とされ、CALBやHiNaなど中国の電池メーカーが相次いで参入している。ただし単一契約で60GWhという規模は他社を大きく引き離しており、CATLが量産フェーズで先頭に立ったことを裏付ける。
現在開発中の第6世代ナトリウム電池は、より多様なアプリケーションへの対応を目指す。蓄電で量を確保しつつ、EV向けにエネルギー密度を引き上げていく二正面作戦だ。2026年半ばに予定される長安汽車のEV市販と、第6世代電池の技術仕様の公開が、次の焦点になる。
出典
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