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XPENG「AI全振り」vs NIO「3ブランド戦略」── 北京モーターショーで鮮明になった成長路線の違いNEW

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XPENG「AI全振り」vs NIO「3ブランド戦略」── 北京モーターショーで鮮明になった成長路線の違い

北京国際モーターショー(Auto China 2026)が、中国EV新興勢力の戦略的分岐点を映し出している。XPENGはPhysical AIエコシステムを前面に押し出し、NIOは3ブランド11モデルの物量で圧倒する。同じ「中国EVスタートアップ第二世代」でありながら、両社が選んだ道はまるで違う。

XPENGが賭ける「Physical AI」という世界観

XPENGのブースで主役を張ったのは、クルマだけではなかった。次世代ヒューマノイドロボット「IRON」、空飛ぶクルマ「Land Aircraft Carrier」、そして自社開発のTuring AIチップ。CEO何小鵬氏は「スマートEVからRobotaxi、ヒューマノイドロボットまで、Physical AIでビジョンを現実にしている」と語った

戦略の中核にあるのが、2026年3月に正式展開されたVLA 2.0自動運転システムだ。XPENGのインテリジェントドライビングレポートによれば、VLA 2.0搭載Ultraシリーズは受注が前月比118%増。店頭デモには約10万人が参加し満足度98%、試乗から注文までの平均時間は44.7%短縮された。所有初週のユーザーの98.52%が毎日自動運転機能を起動している。「あれば便利」ではなく「なければ選ばない」——そのフェーズに入りつつある。

展示された新型GXは、L4自動運転時代を見据えた量産Robotaxiプロトタイプだ。最大4基のTuringチップで3,000TOPSの演算能力を確保する。中国初の完全自社開発・工場統合型。XPENGがAI技術の垂直統合にどれだけ本気かが伝わる展示だった。なお同社は2025年に日本市場への参入を表明しており、VLA 2.0の右ハンドル対応が実現すれば、トヨタやホンダがまだ量産展開できていないL2+以上の高度運転支援を武器に日本市場へ切り込む可能性がある。

NIO——「広大な新境地」を3ブランドで切り拓く

一方のNIOは、「A Vast New Realm(広大な新境地)」をテーマに掲げた。NIO・ONVO・fireflyの3ブランドが初めてAuto Chinaに勢揃いし、計11モデルと12のフルスタック技術を展示。約500名の記者がブースに詰めかけた。

フラッグシップSUV「NIO ES9」がオートショー初公開。40以上の業界初技術を搭載し、5月下旬に発売・納車を開始する。先代にあたる新型ES8は納車開始からわずか215日で累計10万台突破、40万元以上の価格帯で4ヶ月連続販売首位。プレミアム路線が数字で裏づけられた。

大衆向けのONVOは大型5人乗りフラッグシップSUV「L80」の先行予約を4月28日に開始すると発表。2026年型L90はすでに発売済みで、70以上の改良が施された。小型車ブランドfirefly はリフレッシュモデルに加え、ミラノデザインウィーク発の特別版「glow rod」を中国初公開した。プレミアムから大衆、小型車まで——価格帯の空白を埋める布陣が揃いつつある。

技術投資の方向性を比較する

項目 XPENG NIO
展示の軸 Physical AIエコシステム 3ブランド×11モデル
自動運転 VLA 2.0(L4対応Robotaxi含む) NWM(ワールドモデル)+ NX9031チップ
独自チップ Turingチップ(最大3,000TOPS) NX9031(5nm車載チップ)
差別化技術 空飛ぶクルマ・ヒューマノイドロボット バッテリースワップ(3分交換)
ブランド数 1(XPENG) 3(NIO・ONVO・firefly)
2025年BEV海外販売 4.5万台超(前年比96%増) 非公開

両社とも独自チップの内製化に踏み込んでいる点は共通する。ただしXPENGがチップをRobotaxiや空飛ぶクルマといった「クルマの外」に展開しようとしているのに対し、NIOはNX9031チップをONVOブランドへの技術移転に活用し、「クルマの中」で規模を広げる構えだ。

バッテリースワップ vs AI——インフラ戦略の対照

NIOはモーターショー会場で3分間のバッテリースワップ実演を行い、「シルクロード・パワースワップルート計画」を発表した。5月に西安〜敦煌間1,739kmに20基のステーションを整備し、9月末までに全長3,448kmを30基以上で接続する。物理的なインフラを敷設して囲い込む、ハードウェア志向の成長戦略だ。日本ではCHAdeMOからNACSへの規格移行が議論されるなか急速充電インフラの整備が課題となっているが、NIOのスワップ方式はそもそも充電規格に依存しないという点で、仮に日本参入があれば独自のポジションを取り得る。

XPENGはインフラではなくソフトウェアで勝負する。VLA 2.0の次のステップとして、キャンパス内走行や地下駐車場ナビなど複雑環境への対応を予告。海外では2025年の純電動車(BEV)販売で中国NEVスタートアップ首位を獲得しており、AI技術の優位性をそのまま海外展開の推進力にしている。

どちらが正解かは簡単に断じられないが、短期的にはXPENGに分があると見る。理由は明快で、Volkswagenとの技術提携による欧州チャネルの確保と、BEV海外販売で前年比96%増という実績だ。NIOのバッテリースワップは物理的な参入障壁になり得る一方、1基あたり数千万円規模の設備投資が海外展開のスピードを制約する。ただし2026年後半、NIOが3ブランド体制で中国国内販売をどこまで伸ばすかによって、この見立ては覆り得る。北京モーターショーは、中国EVスタートアップがもはや一括りにできない存在になったことを改めて突きつけた。XPENGはAIカンパニーとしてのアイデンティティを鮮明にし、NIOはマルチブランドの総合自動車メーカーへ脱皮しようとしている。NIO ES9の発売は5月下旬、XPENGはVLA 2.0の機能拡張を順次進める。両社の分岐がどんな結果をもたらすか、年後半の販売データが最初の答え合わせになる。

出典

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BLADE NOTE編集部
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