米国Z世代が中国EVに好意的 – 日本の若者との温度差はどこにあるかNEW
中国製EVに対する視線が、世代によってまるで違う。EVsmartブログが紹介したCleanTechnicaの記事によると、アメリカのZ世代(おおむね1997〜2012年生まれ)は中国EVブランドに対して上の世代より明らかに好意的な態度を示しているという。既存のディーラー網や業界関係者が警戒感をあらわにする一方、若年層は「どこの国で作られたか」より「性能と価格が見合うか」で判断する傾向が強い。
米国Z世代が中国EVに抵抗感を持たない理由
米国の若年層がBYDをはじめとする中国EVブランドに関心を寄せる背景には、いくつかの要因がある。まず、Z世代はスマートフォンや家電を通じて「中国製=低品質」というかつてのイメージをすでに過去のものとして認識している。TikTokやSHEINなど中国発のサービスを日常的に使い、ブランドの国籍に対する心理的ハードルがそもそも低い。
気候変動への意識も大きい。Pew Research Centerが2021年に発表した調査「Gen Z, Millennials Stand Out for Climate Change Activism, Social Media Engagement With Issue」では、Z世代の約7割が気候変動を「最優先課題」と回答している。EV普及そのものを肯定的にとらえる土壌があり、選択肢が増えること自体を歓迎する。BYDのATTO 3やDOLPHINのようなモデルが300万円台で手に届くなら、テスラ一択だった構図が崩れると考えている。
一方、米国の既存ディーラーや自動車業界の一部は警戒を隠さない。関税政策や安全保障上の懸念と絡めた「中国製は買うべきではない」という論調は根強く、世代間の断層が鮮明になっている。
米国では中国EVが正規販売されていないにもかかわらず、Z世代の関心が高まっている点も見逃せない。実車に触れる前から好意的な印象が形成されるのは、SNSやレビュー動画で製品情報を収集するデジタルネイティブ世代の購買行動そのものだ。彼らにとって「買いたい」という意思は、街で見かけるかどうかとは無関係に生まれる。
日本のZ世代はどう見ているか
翻って日本。若年層の中国EVに対する認知そのものがまだ薄い。
BYDは2023年にATTO 3で日本市場に参入し、その後DOLPHIN、SEAL、SEALIONと展開を広げ、2025年にはRACCOを投入して現在8車種体制を敷いている。しかし街中で見かける頻度は限られ、「BYDって何?」という反応も珍しくない。BYDジャパンの販売実績は2025年通年で約2,000台、月平均にして170台前後だった。全国に展開中のディーラー数は約100拠点に達しつつあるが、トヨタの約5,000拠点と比べれば文字通り桁が違う。
日本の20代にとって、クルマ選びの前提条件が異なる。都市部ではカーシェアやサブスクが浸透し、「所有」へのこだわりが薄れている。地方では日産サクラのような軽EVがセカンドカーとして普及しつつあるが、これは「中国EV」という文脈とは別の需要だ。
つまり日本の若年層は、中国ブランドを避けているのではなく、そもそもEVを自分で買うという選択肢自体が視野に入りにくい環境にいる。ただし、SNS経由で海外情報に触れる層は確実に増えている。YouTubeやXで中国EVの試乗レビューを見て「コスパがいい」と認識する若者も出てきた。ブランドの出自に対する抵抗感が薄い世代であることは、米国と共通している。
「EV所有のリアリティ」が生む温度差と、BYDが越えるべき壁
日米の温度差の核心は、中国ブランドへの好悪ではない。EVを自分の金で買うというリアリティの有無だ。米国のZ世代は免許取得率が高く、クルマは生活必需品に近い。だからEVの価格破壊に敏感に反応する。日本の同世代は、都市部を中心に公共交通とカーシェアで事足りる生活を送っており、「次に買うクルマ」を真剣に検討する機会自体が少ない。
BYDが日本で地道にディーラー網を拡大し、実車に触れる機会を増やすことは重要だが、それだけでは足りない。価格面の訴求が鍵になる。DOLPHINを例にとると、補助金適用後の負担額は以下のようになる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| DOLPHIN車両本体価格 | 約363万円 |
| CEV補助金(BEV上限) | −85万円 |
| 東京都独自補助(例) | −45万円 |
| 実質負担額 | 約233万円 |
この価格帯なら、免許を持つ地方の若年層がファーストカーとして検討する余地が出てくる。
ブランド浸透には時間がかかる。韓国のヒュンダイは1990年代に低品質イメージで米国市場から一度撤退しかけたが、2000年代に業界初の10年・10万マイル保証を導入し、品質への自信を行動で示した。そこから約15年かけて米国販売トップ5の常連に定着している。BYDが同じ道を歩むかは分からないが、日本で最初に反応するのは、クルマを買う必要がある環境にいて、かつスペックシートとレビュー動画で冷静に比較できる若者層になる。
出典
- アメリカのZ世代は中国製EVブランドに好意的(EVsmartブログ / CleanTechnica翻訳記事)
- Gen Z, Millennials Stand Out for Climate Change Activism(Pew Research Center, 2021年5月)
- BYD Auto Japan 公式サイト(車種・価格・販売拠点情報)
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