ラッコの充電器は200VとCHAdeMO、V2Lも標準装備NEW
ラッコの充電口はフロント右側にType1とCHAdeMOが1カ所ずつ並び、普通充電は200Vで最速約6時間、急速充電はCHAdeMOで最大49.7kWまで出力が伸びる。
2026年7月28日に発売されたBYDの軽BEV「ラッコ」は、グレードによって電池容量と車載充電器(OBC)の出力が異なり、自宅充電・公共急速充電・V2L給電のどれを軸に使うかで実用性の印象が変わる。本稿では2026年10月27日時点で確認できる一次情報と、価格.comに投稿されたユーザー実測値をもとに、充電方式ごとの出力と時間、そして気になる充電器の価格を整理する。
ラッコ充電方式の全体像
まず結論を一覧表にまとめる。ラッコは全グレード共通でLFP(リン酸鉄リチウム)の「ブレードバッテリー」を搭載し、普通充電はType1のAC、急速充電はCHAdeMOという日本のEVで標準的な組み合わせだ。グレードが上がるとOBC出力と電池容量が増え、急速充電の受入上限も上がる。
| グレード | 電池容量 | 普通充電OBC出力 | CHAdeMO受入上限 | 0→100%参考値 | 20→80%参考値 |
|---|---|---|---|---|---|
| RACCO 200 | 22.4kWh | 3kW | 約35.8kW | 約7.5時間 | 約4.5時間 |
| RACCO 300 Plus | 35.84kWh | 6kW | 約49.7kW | 約6時間 | 約3.6時間 |
| RACCO 300 Premium | 35.84kWh | 6kW | 約49.7kW | 約6時間 | 約3.6時間 |
※0→100%・20→80%の時間は、電池容量をOBC出力で単純に割った参考計算値であり、BYDが公式に発表した充電時間ではない。実際の充電では交流から直流に変換する際のロスや、満充電に近づくほど出力が絞られる現象(テーパリング)があるため、この表より長くなるのが通常だ。それでも、グレード間の相対的な差を把握する目安としては十分に使える。
位置とコネクタ規格
充電ポートはフロント右側のクォーターパネルに集約され、Type1(SAE J1772)のAC充電ポートとCHAdeMOのDC急速充電ポートが隣り合って並ぶ(ENECHANGE、electrive.com)。日本の軽・コンパクトEVで広く採用される「Type1+CHAdeMO」の2口構成で、欧州式のCCSコネクタは備えていない。普通充電用と急速充電用のケーブルは差し替えが必要だが、どちらも同じ場所にまとまっているため、運転席側・助手席側を乗り換えて回り込む手間はない。

自宅200V普通充電の時間

自宅の200Vコンセントで満充電にかかる時間は、エントリーグレードのRACCO 200が約7.5時間、上位のRACCO 300 Plus・Premiumが約6時間という計算になる。差が生まれる理由は電池容量の違いではなくOBC(車載充電器、交流を直流に変換する装置)の出力差で、RACCO 200は3kW、300系は6kWとおよそ2倍の差がある(electrive.com、DIME)。
OBC出力の差がもたらす実用上の違い
毎日の通勤・買い物程度の使い方なら、夜間に差し込んで翌朝まで約8時間あれば300系でも余裕を持って満充電にできる。日中にしか充電機会がない人や、20%前後まで減った状態から短時間で60%分だけ補いたい場面では、3kWのRACCO 200は約4.5時間、6kWの300系は約3.6時間とおよそ1時間の差が効いてくる。普通充電を主軸に使うなら、価格差があっても300系のOBC出力は無視できない要素だ。
一部のメディアはRACCO 200のOBC出力についても6kWとして紹介しているが、electrive.comやDIMEなど複数の一次情報は200が3kW、300系が6kWという非対称な構成で一致しており、本稿はこちらの値を採用する。グレード間でOBC出力そのものを変えてコストを抑える手法は、海外メーカーの軽量EVでも珍しくない。
CHAdeMO急速充電の実力
CHAdeMOの急速充電では、車両側が受け入れられる上限がRACCO 200で約35.8kW(記事によっては37kW)、RACCO 300系で約49.7kW(記事によっては49kW)とされる(ENECHANGE、DIME)。日本の公共急速充電器は50kW級が主流であるため、300系はこのクラスの充電器をほぼ使い切れる設計だ。90kWや150kWといった高出力の充電器を使っても、車両側の上限で49〜50kW程度に頭打ちになる。
価格.comの掲示板に投稿されたユーザーの実測値(個人の手動計測であり、BYDやCHAdeMO協議会による公式検証値ではない)によると、CHAdeMO急速充電時の出力はSOC(充電率)が下がるほど高く、残量が増えるにつれて絞られていく傾向が確認できる(価格.com掲示板)。
| SOC(充電率) | 電圧 | 電流 | 出力 |
|---|---|---|---|
| 10% | 362V | 124A | 44.9kW |
| 30% | 367V | 111A | 40.7kW |
| 50% | 373V | 93A | 34.6kW |
| 70% | 389V | 67A | 26.0kW |
この投稿者によれば、70%までの充電に約85分かかり、その後は出力が40kW付近まで下がっていくという。90kW以上の高出力充電器をつないでも49〜50kWで制限されるとの報告も複数あり、ラッコにおいては充電器のスペックよりも車両側の受入上限がボトルネックになる場面が多いとみてよい。
日産サクラ・ホンダN-ONE e:との比較
軽BEVの急速充電性能を横並びで見ると、ラッコ300系の49.7kWという受入上限は競合の中で頭一つ抜けている。
| 車種 | CHAdeMO受入上限 | 普通充電出力 | 備考 |
|---|---|---|---|
| RACCO 300系 | 約49.7kW | 6kW | 50kW級充電器をほぼ使い切れる |
| RACCO 200 | 約35.8kW | 3kW | 50kW級充電器でも頭打ち |
| 日産サクラ | 30kW超 | 6kW | 300系より低め |
| ホンダN-ONE e: | RACCO 200とほぼ同等 | 非公表 | 低出力帯の充電レート |
日産サクラの急速充電は30kW超、ホンダN-ONE e:はラッコ200とほぼ同等のレートと紹介されている(CarNewsChina)。軽BEVというカテゴリー全体がもともと50kW級充電器をフルに使い切れる設計になっていないケースが多いなかで、ラッコ300系はそこに踏み込んだ数少ない存在だ。日本の充電インフラの現状を踏まえると、この差は長距離移動や多頻度利用のユーザーほど実感しやすい。
第三者のEVデータベースevkx.netも0→100%・10→80%の充電時間を独自に算出しており、35.84kWh版で0→100%が1時間14分(平均28.1kW)、10→80%が32分11秒(平均45.5kW)という推定を示している。ただし2026年8月発売の新型車で実測データの蓄積がまだ薄い時期の推定であるため、価格.comの実測値と比べると参考程度に留めておきたい。
V2LとV2Hの給電性能
全グレードにV2L(Vehicle to Load、車から家電へ給電する機能)とV2H(Vehicle to Home、家庭へ給電する機能)を標準装備する(CarNewsChina、ENECHANGE)。V2Lの出力は最大1500Wで、日本の家庭用コンセントの標準(AC100V・15A)に合わせた値だ(DIME)。電子レンジや炊飯器、キャンプ用の電気ケトルなど、一般的な家電をひとまとめに動かせる出力帯といえる。
停電時の家庭給電はV2H機器が別途必要
停電時に車の電池から住宅へ電力を供給する機能についてBYDは「車載電池の電力を住宅や家電へ供給できる」と説明しているが(SBBIT)、家庭全体へ給電するにはV2H専用のパワーコンディショナー(パワコン)を別途設置する必要がある。シャープが公開しているV2H連携機器「JH-WE2301」の対応車種一覧(2026年5月7日時点)には、ATTO 3・DOLPHIN・SEALION 7・SEALが並ぶ一方、ラッコは掲載されていない(シャープ)。同社は対応車種を順次追加するとしているが、2026年10月時点ではラッコ向けのV2H機器対応は確認できない。普段使いのV2Lコンセント給電は全グレードで使えるが、停電時に家全体を支えるV2H運用はまだ環境が整っていないと考えておくのが実情に近い。
純正ケーブルと充電器の価格

BYD Auto Japanは2026年9月下旬から、家電量販店のコジマと提携し、充電設備の現地調査から施工、引き渡しまでを一括で担う「ワンストップサービス」を正規ディーラー網で始める計画を示した(response.jp)。対象はラッコを含むBYD取扱車種全モデルだ。
ただし、充電器本体の型番や出力、価格、標準工事費については、2026年8月7日配信のプレスリリース時点では公式発表なしで、「詳細は実施前にあらためて案内する」とされていた。2026年10月27日時点でも、後続の価格発表は確認できていない。ラッコ専用の純正充電ケーブル単体の価格を明記した情報も見つからない。
一般的な目安として、EV用の200Vコンセント自体は数千円程度で購入でき、すでに200V配線がある住宅なら工事費は数千円から数万円で済むことが多い。100Vのみの戸建てで200V化が必要な場合は、電気工事の目安として10万円前後かかるケースが紹介されている。これはラッコに固有の数字ではなく一般的なEV充電環境整備の相場であり、実際の費用は住宅の分電盤の空き状況や配線距離で変わる点に注意したい。
表の読み方と前提条件
本稿の充電時間は3種類の性質が異なる数値を使い分けている。1つ目は電池容量をOBC出力で割った単純計算の「参考値」、2つ目は価格.comユーザーによる実測値、3つ目はevkx.netのような第三者データベースの推定値だ。メーカー自己申告の充電時間発表は確認できておらず、表中の時間はいずれもBYDの公式発表値ではない。
基準日は2026年10月27日時点。ラッコは2026年7月28日発売の新型車で、販売現場や充電インフラ側の運用情報もまだ更新が続いている段階にある。BYD全車種の価格・スペック比較と合わせて確認すると、ラッコの充電性能が同社のラインナップの中でどの位置にあるかが見えやすい。CHAdeMOの受入上限についても「35.8kW」と「37kW」、「49.7kW」と「49kW」のように記事によって細かい表記の差があるが、これは測定条件や四捨五入の違いによるとみられ、本稿ではより詳細な数値を優先して採用している。
BLADE NOTEの見立て
ラッコの充電性能で最も合理的だと感じるのは、OBC出力と電池容量をグレードで連動させて落とし込んだ設計だ。RACCO 200は近距離利用を想定した3kW・22.4kWhの組み合わせで、価格を抑えつつ普通充電で困らない範囲に収めている。300系は6kW・35.84kWhとOBC出力も電池容量も一段上げ、CHAdeMOの受入上限も49.7kWまで引き上げた。価格差(約25万円)に見合う充電体験の差を、きちんと作り込んでいる印象だ。
一方で気になるのはV2Hの対応状況だ。BYDは「停電時に住宅へ給電できる」という打ち出し方をしているが、実際にシャープのV2H機器対応リストにラッコが入っていない以上、この訴求は半分だけ実現している状態に見える。日産サクラがV2H連携をオプションとして明確に整備してきた流れと比べると、ラッコはV2Lコンセント止まりの印象を与えやすく、防災訴求で先行する競合に対して説明力が弱い。BYDが今後V2H機器メーカー各社との連携を広げられるかどうかは、軽BEVという防災意識の高い層にも刺さりやすいカテゴリーだけに、販売面での差につながりうる論点だと考える。
もう一つ、充電器の価格が発売から2カ月以上たっても公開されていない点は率直に言って遅い。コジマとの提携自体は合理的な選択だが、価格が見えない状態では「補助金を引いた実質199万5,000円」という訴求の裏側で、充電環境を整えるコストが見積もれないという片手落ちが残る。受注が発売2週間で1,000台を超えたと報じられるほど需要があるなら、価格の透明性を急いだほうが購入検討者の不安は小さくなるはずだ。
出典
- BYD Auto Japan、軽EV「BYD RACCO」発売 コジマとの充電ワンストップサービスも発表(response.jp / PR TIMES)
- BYD RACCO received over 1,000 orders two weeks after the launch(CarNewsChina)
- BYDの軽EV「RACCO」価格・補助金比較記事(Business Journal)
- BYD RACCO brings 320 km electric range mini car to Japan(CarNewsChina)
- BYD Racco(Wikipedia)
- BYD RACCOの充電性能まとめ(ENECHANGE)
- BYD commences sales of Racco electric kei car in Japan(electrive.com)
- BYD RACCOの充電・給電スペック解説(DIME)
- RACCOの急速充電性能 ZE1リーフより良好かも(価格.com掲示板)
- V2H連携機器の対応車種一覧(シャープ)
- BYD RACCOのV2H機能に関する記事(SBBIT)




