BYD日本撤退説を検証 ディーラー閉店の真相NEW
「BYD AUTO 横浜中央」の閉店は事実だ。だが、これはBYDが日本市場から撤退する話ではない。実態は、双日グループが運営していた旗艦直営店を畳み、輸入車販売最大手ヤナセが新設した会社へバトンを渡す、販売網の入れ替えである。
横浜中央の閉店が報じられた直後から、価格.comの掲示板やSNSでは「BYDは日本から撤退するのではないか」「買った後の修理は大丈夫か」という声が広がった。中国メーカーへの漠然とした不信感も相まって、噂は独り歩きしやすい。この記事では、確認できた事実と、まだ確認できていない噂を切り分けたうえで、既存オーナーが気になるアフターサービスの扱いまで具体的に整理する。
何が起きたのか 横浜中央店閉店の中身
「BYD AUTO 横浜中央」は2023年4月22日に開業した、BYD Auto Japanにとって象徴的な直営旗艦店だった。運営していたのは双日の完全子会社である双日オートグループジャパン株式会社。それが2025年12月14日をもって営業を終了した。
店舗公式の告知ページには「営業終了のお知らせ」として掲載されており、経営破綻や訴訟といった強制的な閉鎖を示す文言はない。自動車業界メディアMerkmalの報道によれば、月間販売台数はおおむね10台前後にとどまっていたとされ、収益性を理由にした資源の再配分だったと位置づけられている。
時系列で見る一連の流れ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2023年4月22日 | 「BYD AUTO 横浜中央」開業(運営:双日オートグループジャパン) |
| 2025年11月27日 | BYD Auto Japanとヤナセ新設の「ヤナセEVスクエア株式会社」が正規ディーラー基本契約を締結 |
| 2025年12月14日 | 「BYD AUTO 横浜中央」営業終了 |
| 2026年4月1日 | D&Dホールディングスグループが「D&D Import Japan」を設立 |
| 2026年7月1日 | D&D Import Japanが沖縄・北海道の既存BYD店舗3拠点の運営を本格始動 |
| 2026年7月7日 | 2026年上半期国内登録2,334台・前年同期比+42.7%を発表 |
| 2026年7月28日 | 軽EV「RACCO」発売 |
閉店から新体制の店舗開業までは半年以上の空白があり、これが「撤退」の印象を強めた面はある。ただし年表を並べると、閉店と入れ替わるようにヤナセという大手が参入し、その後も新型車投入と販売増が続いていることが分かる。
正規ディーラー契約という仕組み なぜ閉店イコール撤退ではないのか

ここで押さえておきたいのが、「メーカー」と「正規ディーラー」は別会社だという点だ。BYD Auto Japanはメーカー側の日本法人であり、車両の保証やソフトウェアアップデートの責任を負う主体になる。一方、横浜中央を運営していた双日オートグループジャパンは、メーカーと契約を結んで販売・整備を代行する個社にすぎない。
正規ディーラー契約は、フランチャイズに近い仕組みだ。ディーラー側が店舗投資と人員を持ち、メーカー側が車両供給とブランド使用権を与える。契約期間や採算が合わなければ、ディーラー個社の判断で契約終了や事業撤退が起こり得る。これはBYDに限らずどの自動車ブランドでも起こることで、トヨタやホンダの正規ディーラーが看板を下ろすケースと構造は同じだ。
つまり「横浜中央が閉店した」という事実と、「BYDというメーカーが日本事業を縮小する」という話は、本来レイヤーが異なる。今回はたまたま同じタイミングでヤナセという業界最大手の新規参入が重なったため、縮小ではなく入れ替えだと判断できる材料が揃っている。
数字で見る 販売実績と拠点数の推移
感情論を排して数字を見る。BYD Auto Japanは2026年7月7日、2026年上半期(1〜6月)の国内登録台数が2,334台、前年同期比+42.7%(143%)だったと発表した。3年連続のプラス成長で、新型PHEV「SEALION 6」が1,254台と全体の半分以上を牽引している。事業を畳む会社が、主力車種を前年から4割以上伸ばすというのは整合性が取りにくい。
拠点数については、単純な右肩上がりではない。2025年6月時点で63拠点(うち正規ディーラー42店)、2025年末には約80拠点まで増えた一方、2026年4月末時点では約70拠点、38都道府県のカバーに落ち着いている。この増減については、小型店舗中心の「ミニディーラー戦略」への転換に伴う集計基準の見直しである可能性があり、単純な閉店ラッシュと同一視すべきではない。純減か基準変更かは一次資料での確認が取れておらず、断定は避ける。詳しい拠点数の内訳は既存記事「BYD日本のディーラー数・店舗数2026」で継続的に更新している。
| 指標 | 2026年上半期 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 国内登録台数 | 2,334台 | 約1,635台(逆算) |
| 前年同期比 | +42.7%(143%) | — |
| SEALION 6の構成比 | 約54%(1,254台) | — |
| ディーラー拠点数 | 約70拠点(2026年4月末) | 約80拠点(2025年末) |
登録台数はBYD Auto Japanの発表値であり、第三者機関による独立検証は確認できない。とはいえ、日本自動車販売協会連合会など公的統計と照合しても大きな乖離は報告されておらず、発表値の信頼性を疑う材料は今のところない。
背景 なぜこのタイミングでヤナセが動いたのか
ヤナセは1915年創業、メルセデス・ベンツをはじめ輸入車販売で長年の実績を持つ最大手だ。その子会社として新設された「ヤナセEVスクエア株式会社」(資本金1000万円、東京・港)が、2025年11月27日にBYD Auto Japanと正規ディーラーの基本契約を締結した。横浜の新店舗は2026年夏の開業を予定しているが、執筆時点で具体的な開業日は公表されていない。社名の「EVスクエア」は、単一ブランドの看板店ではなく、複数EVブランドの整備拠点となる複合サービス拠点を想定した名称とみられる。
輸入車販売網を持つ大手が、撤退局面にあるブランドにあえて参入するインセンティブは薄い。逆に言えば、BYD側からすれば「収益性の低い直営店を自前で維持するより、整備網とブランド力を持つ大手に任せたほうが長期的に強い」という判断があったと読むのが自然だ。これは新興ブランドが立ち上げ期の直営中心から、成熟期の代理店中心へ移行する際によくあるパターンで、EV専業ブランドに限った話でもない。
もう一つ、沖縄・北海道の3店舗を引き継いだ「D&D Import Japan」の動きは、横浜・ヤナセの件とは別系統だ。移管元は同じD&Dグループ内の「D&Dマネージメント」であり、双日とは資本関係がない。地理的にも資本関係的にも独立した二つの再編を、「同時多発的な撤退の兆候」として一括りにする根拠はない(D&Dホールディングス公式サイト参照)。
既存オーナーのアフターサービスはどうなるか

ここが読者にとって一番の実利部分だろう。結論から言うと、保証を付与しているのはディーラーではなくメーカーであるBYD Auto Japanなので、個別ディーラーの閉店で保証そのものが消えることはない。一般保証は4年・10万km、バッテリーやモーターなど高電圧部品は8年・15万km、バッテリー残存容量(SoH)保証は標準で8年・16万km(初期容量の70%未満で交換対象)。SoHは「State of Health」の略で、新品時の電池容量に対して今どれだけ容量が残っているかを示す指標だ。有償の延長プランを使えば10年・30万kmまで伸ばせる。
問題は窓口の空白期間だ。横浜中央の閉店(2025年12月14日)から、ヤナセEVスクエアの新店舗開業(2026年夏予定)までは半年以上のブランクがある。この間、横浜エリアのオーナーがどこに車両を持ち込めばよいのか、近隣ディーラーへの案内が具体的にどう機能するのかは、公式に詳細が示されていない。ここは「大丈夫」と楽観的に書くのではなく、空白がある事実として認識しておくべきだ。個別の問い合わせはBYD Auto Japanお客様センター(0120-807-551)が公式の窓口になっている。
部品供給についても、閉店したのは販売・整備のフロント拠点であり、部品ロジスティクスはメーカー側のネットワークで管理されている。ディーラーが1店舗減ったからといって、部品供給網そのものが縮小するわけではない点は区別して理解しておきたい。
新型車投入という判断材料 RACCOはなぜ重要か
2026年7月28日、BYDは軽EV「RACCO」を日本市場に投入した。価格は200グレードが214万5000円、300Plusが239万8000円、300Premiumが249万7000円。CEV補助金15万円を適用すれば実質200万円を切る訴求も可能になる。
RACCOのポイントは、海外メーカーとして初めて日本の軽自動車規格に完全準拠した専用設計車だという点だ。軽自動車規格は全長3.4m以下・全幅1.48m以下・排気量や出力に細かな制約があり、海外メーカーが片手間で作れるカテゴリーではない。開発には日本市場専用のエンジニアリングリソースが必要で、投資回収には複数年の販売継続が前提になる。撤退を検討している企業が、このタイミングでわざわざ日本専用車を出す合理性は乏しい。BYDの車種展開全体は「BYD全車種比較」で随時更新しているので、RACCOを含めたラインナップの位置づけを確認したい方はあわせて参照してほしい。
BLADE NOTEの見立て
今回の一連の動きを、単発のニュースではなく「立ち上げ期から成熟期への移行」として見ると筋が通る。2023年の日本再上陸時、BYDは知名度ゼロからのスタートで、直営旗艦店を都心の一等地に置いてブランドの存在感を示す必要があった。横浜中央はまさにその役割を担った店舗だ。だが3年が経ち、SEALION 6のヒットや軽EV市場への参入で認知は一定水準まで進んだ。ここから先に必要なのは、話題性より整備網の密度と信頼性だ。その役割は、EV専業の新興企業より、100年超の実績を持つヤナセのような大手のほうが適している。
気になるのは、拠点数が2025年末の約80から2026年4月には約70へ減っている点だ。ミニディーラー戦略への転換という説明は一応筋が通るが、集計基準の変更なのか実質的な純減なのか、一次資料で確認できていない以上、この数字だけは今後も注視する必要がある。仮に純減であれば、それは「都心直営から地方・大手代理店への重心移動」という今回の構図と矛盾しないが、単純な縮小である可能性も排除はできない。
もう一つの論点は、閉店から新店舗開業までの空白期間の設計だ。ヤナセ側の準備期間として半年は不自然な長さではないが、その間のオーナー対応をもっと積極的に告知すべきだったのではないか。撤退説が広がった一因は、事実の悪さそのものより、空白期間の情報発信不足にあるとBLADE NOTEは見ている。
出典
- 「BYD AUTO 横浜中央」営業終了のお知らせ(BYD Auto Japan公式)
- BYD横浜中央店の閉店に関する報道(Merkmal)
- 2026年上半期国内登録実績に関するリリース(PR TIMES)
- BYD、2026年上半期販売実績の報道(Response)
- 軽EV「RACCO」発売に関するリリース(PR TIMES)
- D&Dホールディングス公式サイト
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